久しぶりの外出
王都の繁華街を歩くのはかなり久しぶりだね。
「リディアだけがテリアを独占しているようね。アルカに申し訳ないよ」
「独占じゃないんじゃない?」
リディアの言葉に苦笑いした。リディアが私の腕に自分の腕を組んではいるけど、後ろにはロベルとシドもあるから。
けれど、リディアはニコニコ笑って首を振った。
「あいつらは無視していいよ」
「ひどいんじゃないかよ?」
「ふん」
リディアはシドを見向きもしなかった。シドは苦笑いしながら隣にいたロベルに話しかけた。
「おい、お前はあんなこと言われて平気なんだ?」
「構いません。僕は本質的に使用人ですから」
「……味方がいないな」
構成だけ見ればダブルデートみたいだね。
今度の外出の目的は次の計画のために必要な物を買うこと。しかし、外出のついでにゆったりと時間を過ごしたいという気持ちもあった。私があまり休憩なしに暮らせばみんなが心配するからね。
もちろん、それとは別にダブルデートのような格好になったのは不本意である。ただそれぞれ事情や用事で欠席した結果に過ぎない。まぁ、実際にはリディアが私にだけくっついているからダブルデートと言うのは難しいけれども。
「テリア、今日は何をするの?」
「魔道具の材料を買うわ。製作は父上にお願いするけど、そっちには多分今必要な材料はないと思うわよ」
「オステノヴァ公爵家にない材料をここで?」
シドが言った。我が家をどう思っているのかとてもよく分かるわね。まぁそういう反応も理解できるけど。
「あまり複雑な魔道具じゃないけど、とりあえず開発したことがあってこそ必要な材料も揃えておくものだから。今度作る魔道具は『バルセイ』に出たオリジナル魔道具なのよ」
正確には既存の魔道具を改造したものだけど。機能自体は複雑じゃないけれど、開発する理由も方法もなかった物なので今この世界にはまだ存在しない。その改造パーツに必要な材料を買いに来たのだ。必要な材料といっても特別なものはないけど。
その時、リディアは目を輝かせた。
「ねえ、あのねあのね。じゃあ、今日はそれだけ買えば用事は終わり?」
「ええ、それが何?」
「じゃあ、残りの時間は自由だね?」
リディアは近くのアクセサリー店を指差した。
「行ってみよう! 買ってあげる!」
苦笑いが出てしまった。
でもまぁ、断る理由はない。そもそもこれを断って目的だけに集中するなら、あえて私が出る必要もなかったから。ロベルを通じて家の人にお使いをさせればいいことだから。私もこうやって横道にそれることを願ったから出てきたの。
一方ではリディアがこのように明るく笑って積極的に自己主張をするのが嬉しかった。リディアの性格が変わって久しいけど、『バルセイ』の記憶のためかしら。私の目にはまだ絶望して悲しんでいたリディアの姿がちらっと見えた。
……それがゲームの記憶のせいかと、内面の私が余計な喧嘩をしていたけれど。
私たちは店に入った。扱う物がとても多くて多様だった。カテゴリーはあくまでアクセサリーだったけど、種類から価格帯まである程度はこの店で解決できそうだった。
しかもリディアがこの店を選んだのには別の理由があった。
「おじさん! 前に言ったことをお願いします!」
「おお、アルケンノヴァ公爵令嬢ですか。ご無沙汰しております」
店主の中年男性が微笑んでリディアを迎えた。リディアは太陽のように明るく笑いながら彼に近づき、ポケットから赤い宝石を取り出した。店主がそれを受け取り、奥の部屋に入った。
「リディア? 何してるの?」
「この店では材料を持ってくれば好きなようにアクセサリーを作ってくれるよ! 前から貴方に一つプレゼントしたかったの」
材料の提供を受けるオーダーメイドか。貴族にはかなり欲がわく商品だ。宝石であれ他の貴金属であれ、ある程度財力のある貴族なら欲しい材料を手に入れることくらいはそれほど難しくないから。むしろ材料需給と製作の両方を店に預けるよりも、欲しい材料を直接手に入れてあげる方がユニークな物が作れるかも。
……ただし、リディアが店主に与えた宝石はきっと……。
「できました」
さっき店主が入ったところは作業室だろう。再び出てきた彼の手には一対のイヤリングが持っていた。かすかに魔力が感じられるのを見ると、魔力で素早く加工したのだろう。
イヤリングの本体は魔力で加工され、美しく輝く銀であった。形自体は複雑じゃないけど細工がとても繊細だった。先端は小さな太陽を形象化した形になっており、その中に先ほどリディアが渡した赤い宝石があった。
リディアはそれを太陽のように微笑んで私に差し出した。
「テリアは私の人生に光をもたらしてくれた人だから。必ずあげたかったの」
「……リディア」
このような言葉と共にプレゼントをもらうのに喜ばない人がいるだろうか。
むしろ特性的にも、表情的にも太陽のような人はリディアなのに。けれど、以前のような自壊感はない。リディアから初めてプレゼントをもらった時は私には資格がないと思って迷ったけれど、今は正直に喜ぶことができる。
心の片隅では依然としてそのような私を非難する声が聞こえてきているけど、一人だけの自壊感のためにリディアの心を断るのがさらに彼女を傷つける道だということを知っているので無視した。
……でも、それとは別に気になることがあるんだけど。
「でもリディア。この宝石は……」
「私の渾身の力が込められた一品だよ!」
リディアは胸を張って誇らしげに言ったけど……これはつまりそれだということだよね? すっっごい力が凝縮された〈爆炎石〉ってことだよね!?
確かに宝石から尋常でない魔力が感じられた。このまま爆発させればこの区画くらいは吹き飛ばせそう。これを耳にかけて歩くと爆弾をつけている感じなのでちょっとアレだ。
でもリディアはニコニコした。
「もちろん実に使うのもできるよ。できることは限られているけど、非常時には使ってほしい」
「それはもったいないわよ」
「大丈夫。それを使う状況で使って危険を避けた方が嬉しいことだからね!」
そう語るリディアの笑顔はあくまで明るかった。
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