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エピローグ 比較と決心

 テシリタの工場を打撃した後、テリアは数日間何もせずにゆっくり休んだ。


「ジェリア、本当に大丈夫?」


「ああ、問題ないぞ。鍛錬と模擬戦は他の奴らともできるからな」


 甚だしくはボクに直接了解を得て普段の鍛錬や模擬戦に不参することさえした。


 いつもどこかに向かって走っているようなテリアだったので、その姿はとても新しかった。もちろん体内の魔力がかすかに動くのを見れば、本当に休息を取るだけではないだろう。おそらく魔力制御のための瞑想を並行しているはずだ。だが普段の彼女に比べれば、眠るような平穏さだ。


 そう感じたのはボクだけではなかった。


「お姉様……大丈夫でしょうか?」


「リディアも心配だよ」


 練習場で軽く鍛錬と練習をしている途中、アルカとリディアがそう言った。ボクはそれを聞いてつい笑ってしまった。


「テリアが危険なことをしたら心配するくせに、休んでいたらまた心配するのか?」


「あんな姿は初めて見ますからね」


「特に落胆しているわけでもないだろ。むしろかなり気持ちよさそうに見えるぞ」


 ボクの考えではテリアは楽しそうだった。今の余裕を楽しんでいるように見えるほど。休暇を取ったような感じというか。


 もちろん、それが本当の休暇ではないということくらいは知っている。


「多分この前の戦いで何かまたヒントを得たんだろ」


「ヒントですか?」


「ああ。今、テリアの最大の目標は〈五行陣〉に達するものだな。しかし、彼女の肉体はすでに十分に完成している。ただ魔力の制御がそれに追いつけないだけだ」


 前にも肉体の修練を差し置いて瞑想に集中したことがあった。今もその時と同じだ。ただ今回は余裕があってのんびりしているということだけが違う。テシリタとの戦いで何か悟りでも得たのか。


 テシリタとの戦い。結局ボクだけでなくみんながあまり役に立たなかった。ボクたちを相手にするために按配されたものは撃破し、消えた安息領雑兵と一部設備を追撃して発見したのも良かった。ボクたちの目的と任務は成功だった。


 しかし、作戦が成功したのとテシリタとの戦い自体は別物だ。


「建物の中で戦うのも見たかったです。お姉様ならきっと素敵だったですから」


 アルカが言ったように、建物内部での戦闘は観測できなかった。工場全体に魔力を妨げる術式が隙間なく展開されていたからだ。魔力の気配さえも撹乱されたせいで、内部でテリアがどのようにテシリタと戦ったのかは分からない。


 しかし構わない。最後の戦いを直接両目で見ることができたから。


 攻防自体は短かった。しかし、テシリタの攻撃はテリアさえ防御が難しいほど強力だった。そのような攻撃をテリアはなんとか受け流し、最後にはその力を逆利用することさえした。


〈月暈〉……か。


「テリアは本当に果てしなく強くなるんだな。どんな意味では奥義よりも難しい技もてきぱき使うからな」


 そのように話をすると、アルカとリディアは興奮してそれぞれ騒ぎ始めた。ボクはその姿を見ながら微笑んでいたが……心の片隅が暗かった。


 この前テリアが慰めてくれたのはまだ覚えている。今はただボクがテリアに及ばないということでは憂鬱にならない。あの時テリアがボクに言ってくれたことに比べれば、この程度の劣等感なんかただ香りが少し強い香辛料くらいなんだ。


 だがそんなテリアだからこそ、むしろボクの頭の中が複雑になった。


「テリアを賞賛するのはいいが、彼女に真剣についていく心配をしないと」


「どういう意味? リディアたちがテリアについていくって?」


「テシリタは『バルセイ』でもこの国とボクたちにとって大きな脅威だったな。ボクたちはその脅威を相手に戦って逃げたし。ボクたちの中でテシリタを少しでも相手できたのはテリアだけだったぞ」


「このままでは私たちが足を引っ張ることになるということですか?」


 アルカはボクの言いたいことをちゃんと理解したようだ。ボクは頷いた。


「もちろんテリアは今のボクたちが『バルセイ』のこの時点のボクたちより強いと言ったな。だが彼女が言う『バルセイ』のボクたちは急激に強くなりすぎた。それを今のボクたちが本当についていけるだろうか?」


「お姉様が可能だとおっしゃったので可能だと思いますよ」


「テリアの年齢を考えてみて。あの子も十分に〝急激に強くなった〟ってことじゃない。リディアたちがあの子の才能と努力を同じように真似することはできなくても、テリアが言ったことを実現することは可能だと思うよ」


「……それはいい見方だな」


 リディアの言う通りかもしれない。だが両目に刻まれた光景のせいでボクはただ希望的に考えることはできなかった。


 破滅の閃光を絶妙に受け流し、魔力で干渉して自分のものとして振り回した姿。その技はとても精巧で美しかった。命をかけた戦闘ではなく、一つの芸術作品に見えるほど。すべて終わった後になってようやくテリアは失敗するかもしれないと心配したと言ったが、どうしても失敗しそうにない様子だった。


 その美しさと強さを理解していたので、ボクがその領域に到達できるかどうかは分からなかった。


 たとえ到達できるとしても、その頃にはテリアはますます高いところに行っているんだろう。それでは結局同じだ。その上、テリアは私たちを守るためにわざと技を失敗しても影響が届きにくいところまで移動した。それはすなわちボクたち全員が()()()()()()()()()()という強力な証明だった。実際にも事実だし。


 このままではいけない。


 ボクが騎士として守るべき数多くの人々のためでもあるが、何よりもテリアのためにも強くならないと。幸いなことに、ボクにはそれを可能にする手段がある。


 ……その手段を頻繁に使うつもりはないが。乱用しては何の危険なことが起こるか分からず、ややもするとテリアや皆に迷惑をかけたら恥で死んでしまうかもしれない。


 しかし、平凡に努力するだけでは間に合わない。テリアはボクに憧れていたと言ったが……いや、だからこそボクも保護を受ける立場ではいけない。


 親友としてテリアの最も強力な味方になろう。そう決心して拳を握った。

読んでくださってありがとうございます!

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