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筆頭の存在

 予想通り、テシリタの筆頭自慢は長かった。本当に、本当に長かった。ピエリやテシリタのような強者と剣を突き合わせて戦うより、あの広長舌を聞いてあげるのがもっと苦しいほどだった。


 でも無益ではなかった。


「筆頭って奴も神法が使えるって?」


「あの御方に不可能なことはない」


 筆頭が伝授してくれたと言ったりもしたけれど、実は直接教えてくれたとは思わなかった。せいぜい邪毒神とのコネクションを取り持ったとか、邪毒神から魔法書のようなものでももらって渡したと思った。『バルセイ』ではテシリタの神法を盗んで学ぼうとした人々がみんな失敗し、奇跡的な偶然や神の恵みがなきゃあ身につけないという設定だった。


 ところで筆頭もそれを使えるなんて。さらにテシリタは神法の本来の主人である邪毒神と一度も接触したことがなく、筆頭が直接神法を教えたという。


 正直どれだけ本物なのか疑問に思うけど、テシリタはこんなことを自慢する時に嘘をつかない性格だ……と『バルセイ』で描写されていた。現実のテシリタは『バルセイ』と性格が違うかもしれないけど、少なくとも今までの姿は『バルセイ』と同じだ。


「神の能力なのにありふれた力に転落しちゃったわね。恥ずかしくない?」


「質の低い挑発だな。そう言う貴様は筆頭がおっしゃった赤天の竜か何か?」


「あいつはそれをどうやって知るのよ? 邪毒神から聞いたのかしら?」


 イシリンはテシリタに話しかけ続けた。


 ちらっと聞いただけだけど、イシリンの仇敵である異界の神の名は創造神バリジタと言っていた。テシリタが使うのは創造の神法だから、イシリンはテシリタの神法のもとがバリジタだと思っているんだろう。私もその可能性を考えたし。


 そのため、イシリンは邪毒神に関する情報を誘導しようと質問を投げ続けていた。けれど、テシリタにはイシリンの誘導は通じなかった……というより、そもそもイシリンの話し方が上手ではない。


 仕方ないわね。


「その神法を与えたと言われていた邪毒神、もしかして創造神バリジタなの?」


 普段ならしない率直な質問。でもテシリタにはこれがいい。


 テシリタは眉をひそめた。


「あの神様のお名前は知らない。特に重要でもないな。だがバリジタという名前は慣れてるんだ」


「何言ってるの? 他の経路で接点でも……」


「筆頭のお名前だからな」


「……え?」


 テシリタは意気揚々とした顔で言葉を続けた。


「本来筆頭のお名前はオレだけが知っている特別なものだった。筆頭からは誰かが聞けば率直に言えと言われたから秘密ではないが。それでもおかげで無知な奴らにあの御方のお名前を教え、優越感を感じることができるようになった。幼稚だが気持ちはいい」


 筆頭がバリジタだなんて。ならあいつは神だというの?


 不可能ではない。『隠された島の主人』も何の被害もなく分身体をこの世に降臨させたから。原理がわからない以上、他の邪毒神もそのような行動が可能かもしれない。……この世界の人間としてはひどいことだけど。


 もちろん、ただ名前が偶然同じ同名異人である可能性もある。でも筆頭が神法を使えることとテシリタに直接伝授したというのが事実なら、本当にバリジタの分身体かもしれない。


 その時、テシリタがイシリンの方を見た。


「貴様が赤天の竜という奴なら……同情する。可哀想な奴だと筆頭がおっしゃったからな」


「……は?」


「自分の世界を失って彷徨うことになった可哀想な神だと聞いたな。しかもこの世界に邪毒竜として降臨し、肉体と力さえ失って零落したんだと? 光栄に思え。あの御方の同情は珍しい栄誉だ」


 あ、やばい。


 そう思ったけど、私が制止する前にイシリンの魔力が膨らんだ。彼女の体から邪毒が流れ出た。


「バリジタ……私を世界から追い出したくせに、私のことをそんな風に言うって?」


 イシリンが怒りの咆哮を上げた。あふれる邪毒が彼女を拘束した魔法の鎖を破壊した。邪毒が巨大な魔法陣の形をした。


 ――第七世界魔法〈赤天竜波〉


 まるで竜が咆哮するような巨大な魔力の波がテシリタを襲った。普段とは違って、今回は純粋に邪毒からなる魔力砲だった。テシリタは盾の魔法で防御した。


 その瞬間、私は鎖を破壊して〈赤天竜波〉の怒涛に飛び込んだ。


 今は純粋な魔力も発揮できるようになったイシリンがあえて邪毒の魔力砲を使用した理由。それは私のためだった。怒りに燃えるふりをして……いや、かっとなったこと自体は本気だっただろうけど、彼女の戦闘判断はあくまで冷静だった。


 ――天空流奥義〈空に輝くたった一つの星〉


〈赤天竜波〉の邪毒が『浄潔世界』に浄化され、莫大な魔力となった。それを全部一本の魔力剣で凝縮して発射した。〈赤天竜波〉の巨大な波が私の気配を隠してくれたおかげでテシリタの反応が少し遅れた。


「うむ!?」


 テシリタは一歩遅れて防御魔法を展開した。完璧な防御になれないことを直感したようで、私の攻撃の軌道を横にそらす魔法だった。


 魔力剣の砲撃はテシリタに直撃しなかった。けれど、彼女の傍をかすめた余波だけでテシリタの肩と腕から血が流れた。魔女の帽子の鍔が破れた。


「……面白い」


 テシリタのテンションが下がった。表情に不快感が歴然とあらわれた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈神罰の場〉


 ――天空流〈三日月描き〉


 ――極拳流奥義〈深遠の拳〉


 ――第七世界魔法〈赤天の聖槍〉


 テシリタは内部のすべてを引き裂く攻性結界を展開した。私は巨大な斬撃で結界の力を斬り、ロベルは魔力を執束した拳で結界の力を貫き、イシリンは巨大な槍を具現した。けれどテシリタの〈神罰の場〉はそのすべての攻撃を相殺するほど強かった。


 テシリタは〈神罰の場〉の力を私に集中した。触れるだけで物質を分解してしまう強力な光が私を狙った。


 ――天空流奥義〈満月描き〉


 巨大な斬撃の球体が破滅の光を相殺し〈神罰の場〉を破壊した。けれど、テシリタの次の魔法が〈満月描き〉を相殺した。


 砕け散る魔力の向こう、テシリタと視線が合った。


「殺してやる、小娘」


「できればやってみて、おばあちゃん」

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