テシリタの力
前世の世界には『ライオンはウサギを狩る時も全力を尽くす』という格言があった。
テシリタの魔法陣の軍勢を見た瞬間、のんびりとそんな思いが浮かんだ。
「イシリン!」
イシリンが竜人少女の姿で私の中から飛び出した。彼女が魔法陣を展開するのと一緒に、テシリタの魔法陣が一斉に光を放った。
――第七世界魔法〈赤天の威光〉
――神法〈道具創造〉・〈歴史の雨〉
赤い光が巨大な領域を作った。その上からテシリタの魔法陣から発射された数多くの兵器がぶつかってきた。種類も形も様々な破壊の歴史が赤い光と衝突した。砕けて舞う光の粒子の間に兵器が入り込んだ。
私は左手に栄光の剣を持ち、右手には始祖武装『天上の鍵』を召喚した。
テシリタの『歴史の雨』はこの世に存在したあらゆる兵器を具現化して浴びせる技。強力だけど歴史の中に存在したということはすなわち『天上の鍵』でその能力を憑依させることができるという意味だ。各兵器の能力だけでなく、それを迎撃するカウンターの兵器の能力も。
――天空流〈月光蔓延〉
高速乱舞の斬撃一つ一つにそれぞれ異なる能力が宿った。それが〈歴史の雨〉の残りの兵器をすべて破壊した。残りの斬撃がテシリタに飛んだ。
「ほう、なかなかだな」
――神法〈魔法創造〉・〈天空の遮断幕〉
テシリタは巨大な盾の幻影を具現化した。斬撃は盾に傷さえつけられなかった。むしろ盾が私たちに突進してきて、イシリンとロベルが同時に拳を突き出して盾の進撃を防いだ。
テシリタはあくまで余裕があった。
「いいぞいいぞ。久しぶりに面白くなりそうだな」
――神法〈魔法創造〉・〈赤天封印〉
漆黒の鎖が蛇のように動いて飛んできた。イシリンへ。
「ふん!」
イシリンは自分の魔法で鎖を破壊しようとした。しかし、イシリンの魔力は鎖に触れると霧散してしまった。私が急いで振り回した剣が鎖を簡単に壊した。
テシリタの能力はある邪毒神の創造の力を学んで使う独特な神法。本来この世界の人間にすぎないテシリタは異界の魔法を学んでも使えない。でも神法の創造能力で魔法法則を〝創造〟することで多種多様な魔法を駆使する。
……ちょっと待って。創造?
イシリンを横目で見た。彼女の表情はかなり険悪だった。単なる戦闘の流れのためではなかった。イシリンがあんな顔をしているというのは……やっぱりそうだったわね。
しかし、ゆったりと情報を交わす余裕はない。テシリタがもう次の攻撃を準備していたから。
――紫光技特性模写『看破』
テシリタのさまざまな魔法を見抜くために『看破』の特性を模写し、〈選別者〉を最大出力で発動した。ロベルは私の威圧に押されて少しよろめいた。
でもテシリタはそよ風が吹いてくるような態度だった。
「踊れ!」
――神法〈魔法創造〉・〈星空の雨〉・〈巨王の証明〉・〈天空封印〉・〈赤天封印〉
無数の光弾の弾幕、長さが十メートルほどの巨大な剣、私の天空流を封じる鎖とイシリンの力を封じる鎖。四つの魔法が私たちを襲った。
「行きます!」
――極拳流〈壊山掌〉
ロベルが前に出て、魔力の衝撃波を放った。〈天空封印〉と〈赤天封印〉の鎖が破壊された。直後、私とイシリンが前に出て〈星空の雨〉と〈巨王の証明〉を迎撃した。でもテシリタはすでに次の手をいくつも準備していた。
主導権を奪われたままじゃダメ。
――天空流〈彗星描き〉
砲弾のように突進する。後ろからイシリンとロベルが魔力砲でバックアップした。何の抵抗もなく、テシリタを剣で直接切れる距離に触れた。極限まで鋭く精錬された魔力の刃が剣身に乗って流れた。
――天空流〈三日月描き〉
――神法〈魔法創造〉・〈幻影化〉
テシリタは一時的に実体のない幻想に変わった。斬撃は彼女をそのまま通過してしまった。
ゲームのパターン通りに。
――『万壊電』専用技〈雷神化〉第二段階〈雷鳴顕現〉
壮絶な雷光が周りを埋め尽くした。その間に〈幻影化〉が解除され、テシリタの実体が戻ってきた。すぐに魔法で雷電を防御したけど、それによって攻撃の勢いが遅くなった。
〈幻影化〉は絶対的な回避の魔法だけど、持続時間も短いし一度使えば再発動まで相当な時間が必要だ。速攻で〈幻影化〉を先に消耗させたのは大きな成果だ。さらに〈雷鳴顕現〉の牽制でテシリタの攻撃を遅らせたおかげで一撃を放つ余裕ができた。
もちろんテシリタはその程度で崩れる奴ではない。
――神法〈技芸創造〉・〈天空の鏡〉
――天空流〈三日月描き〉
私が斬撃を放つ直前、テシリタは〈技芸創造〉で自分自身に剣術を与えた。右手には〈道具創造〉で作られた魔剣が一本。彼女が放ったのは全く同じ〈三日月描き〉だった。二人の斬撃が相殺され、テシリタは傲慢に笑った。
「近ければ勝てると思ったのか?」
――神法〈魔法創造〉・〈剣の森〉
無数の刃が周辺一帯に乱立した。同時にテシリタが剣を振り回した。〈雷鳴顕現〉の雷電さえも〈剣の森〉の刃を半分しか破壊できなかった。
けれど……魔法で急造した剣術なんか。
「ふん」
雷電で〈剣の森〉を牽制する隙にテシリタの剣を受け流した。剣を回してテシリタの剣をさらに大きく弾き飛ばした後、体を狙った。けれどテシリタは魔力のバリアで私の剣を防ぎ、バリアの後ろから魔力砲を装填した。
その瞬間、イシリンとロベルが私の傍に来た。〈剣の森〉の刃を砕きながら。
――第七世界魔法〈赤天竜波〉
――極拳流奥義〈深遠の拳〉
イシリンの魔力砲がテシリタ周辺の刃と魔力場を吹き飛ばし、ロベルの拳が魔力障壁を破壊した。直後、私が二人の前に突進した。テシリタの放つ魔力砲を剣で斬った。けれど〈歴史の雨〉の無数の兵器が私たちを押し出した。
テシリタは楽しそうに笑っていた。
「このオレを相手に今まで粘るとはな。久しぶりに使えそうなおもちゃだぞ。もっと暴れよ!」
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