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結果とその次

「……は? 攻略法を見つけ……」


 俺が話を終える前に、トリアの魔力が膨らんだ。


 ――トリア式融合技〈炎風の巨人〉第二形態


 熱い炎の嵐が吹き荒れた。トリアの全身が炎風と融合し、まるで彼女自身が炎の嵐に変わったようだ。いや、〝まるで〟じゃなくて文字通りかも。炎そのものになった彼女はキメラを傲慢に睨みつけた。


 キメラもその視線の敵意に反応したのか、それともただ激しい魔力に導かれたのか。いつの間にか再生された足を利用して飛び上がり、トリアに向かって速い速度で突進した。


「ま、待って! 火は吸収されるだけ……」


「大丈夫です。リディア様、全力で撃ってください。私の体を通過しても構いません」


 トリアは巨大な炎風の拳でキメラを殴り飛ばした。火が大量に吸収された。しかし拳の物理力自体はキメラに打撃となり、奴の突進の勢いを殺した。


 その間、リディアの魔弾がトリアの体を貫通した。炎そのものになった彼女の体は魔弾を通過させた。しかしキメラに炸裂した魔弾の爆発は依然として大きな効果がなかった。それでもリディアはトリアの指示通り火力を浴びせ続け、トリアも炎風をキメラに浴びせた。まるで奴を充電させてあげようとするかのように。あまりにも激しい火力のため、俺は近づくことができなかった。


 でも近づかなくても攻撃は可能だよ。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術〈次元交差斬り〉


 次元を超えた刃がキメラの心臓を引き裂いた。奴が悲鳴を上げた。しかし奴は吸収できなかった炎に燃えながらも、魔力を集中して心臓を再生しようとした。吸収と再生を同時にするのは難しいのか再生が遅かったけど、絶命する様子ではなかった。


 そしてついに、放出の時がもう一度やってきた。キメラの体内で魔力が大きく膨らんだのだ。


「逃げ……」


 警告しようとしたけど、その前にトリアの魔力が動いた。


 ――トリア式融合技〈傀儡の渦〉


 巨大な炎風の渦がトリアとキメラを丸ごと包んだ。キメラは壮絶な火の魔力を放出した。しかし、炎そのものになったトリアにはダメージを与えられなかったし………炎風の渦が放出された魔力を奪った。奪われた魔力はまたキメラに浴びせられた。


「クルッ!?」


 キメラは慌てた。火はまた奴に吸収されていたけど、トリアとリディアの火力は続いていた。渦の内側の火力の総量は増え続けた。


 トリアは笑い声を上げた。


「奴は火を吸収できますが、身体の耐熱性が完璧ではありません。火力を浴びせ続けるとダメージが蓄積されます。そして奴が放出するのがあくまでエネルギー形態の魔力である以上、私にはただ奪える道具に過ぎません」


 ……なるほど。


 つまりトリアはこう言っているのだ。渦の内側の火力を無限に保ち、キメラにダメージを少しずつ蓄えて殺すと。激しい炎のせいでキメラの姿はよく見えなかったけど、魔力と透視で見れば確かに奴のダメージはますます大きくなっていた。反抗しようとするかのように火を噴き出したりトリアを攻撃したりもしたけど、どちらも今のトリアには通じなかった。


「ギャアア!」


 キメラは状況に気づき、渦から逃れようとした。だけど奴の前にあっという間に移動したトリアが奴の腹を蹴った。キメラは足に力を入れて耐えた。その時俺が放った〈次元交差斬り〉が奴の膝を切断した。倒れた奴に炎風と魔弾が降り注いだ。


「グ……オ……」


 火の吸収と放出を除けば、キメラの力はただ丈夫な肉体だけ。そのため、奴はトリアの炎風の監獄から抜け出せなかった。そして抜け出せない限り、奴はゆっくりと燃えて死ぬしかない。絶えず発悪しながらトリアに拳と魔力砲を浴びせたけど、トリアはその程度の攻撃ぐらいは一人でも防御し反撃することができた。


 そしてついに、キメラの肉体が炎の中で倒れた。


 だけど、トリアの〈傀儡の渦〉は消えなかった。渦の監獄に閉じ込められていた炎も同じだった。キメラは絶命したけど、奴を燃やすために増幅し続けた巨大な熱気がそのまま残っていた。


 トリアはその火を操り、一つの点に凝縮した。そしてそれを壁に叩きつけた。凝縮された火炎が爆発し巨大な衝撃波を発散した。でも着弾地点周辺を包囲した〈傀儡の渦〉が破壊の拡散を阻止した。


 狂った火力が壁を叩くのに数秒。爆発の力は弱まり、熱気だけが残るとトリアの渦も消えた。解放された熱気が部屋の中を熱くした。しかし、広い部屋に広がった熱気はただひどく暑いだけで、魔力で強化された肉体を絶命させるほどではなかった。


 渦が消え、露出した壁は大きく破壊されていた。かなり厚いせいで穴は開けなかったけど。


「……ふう」


 トリアは〈炎風の巨人〉を解除して座り込んだ。顔に濃い疲労が現れ、彼女から感じられる魔力も大きく減った。どうやらかなり消耗したようだ。


「トリア、大丈夫?」


「魔力を消耗しすぎたようです。しばらく戦闘を手伝うことは難しいと思います」


 かなり激しい消耗ではあった。俺とリディアは同時に頷いた。


「休んでね。残りはリディアとシドがやるの」


 トリアが一番大きな功を立てて脱力した状況だから、残りは俺たちがするしかないだろう。


 ただ、あの壁はその恐ろしい火力でも完全に壊れなかった。破壊が不可能なわけではないけど、耐久度が非常に高いということはさっきからすでに立証されている状態だ。壊して脱出することは可能かもしれないけど、おそらく力を大きく消耗するだろう。


 ……ひょっとしたら、いや十中八九その力の消耗までも敵の計略だ。俺たちを完全に閉じ込めて殺すのではなく、脱出しても力を消耗させて戦力を弱化させること。


 しかし、他に方法がない。空間転移の能力や魔道具を持った人もいないし、とにかく壁を壊せなければ身動きが取れなくここに閉じ込められているしかないから。


 俺たちは皆それを知っているので、疲れた体を引きずって壁に向かって進んだ。

読んでくださってありがとうございます!

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