順調な戦い
――トリア式融合技〈炎風の巨人〉
両腕が炎風の魔力の渦に変わった。それを推進器として突進した。キメラは依然として反応が鈍かった。私が近くに接近した時にやっと私を認識して腕を上げたほど。私はそんなキメラのあごに蹴りを入れた。
「クオ……!?」
キメラは強烈な衝撃を受けてよろめいた。隙だらけの胴体に炎風の拳が数十回命中し、仕上げに炎風をまとった足で頭を蹴った。しかし、キメラは打撃の衝撃で体があちこち弾き飛ばされるだけで、いざダメージはあまり感じられなかった。
その時、シド様がキメラの後方に接近した。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈極の線〉
シド様の短剣がキメラの背中を切った。今回も傷は致命的ではなかったようだ。でもシド様の目的は単に攻撃だけをすることではなかった。
「くっ!?」
シド様は突然慌てて短剣を手放して後ろに跳躍した。少し遅れてキメラの拳が振り回された。
「ちっ、魔道具を切り取ることはできないみたいだよ」
どうやらキメラの体に挿入された魔道具を剣で切り取ろうとしたようだ。
キメラはシド様の方に突進した。けれど、私がその前を立ち塞がった。キメラの拳撃が高速で浴びせられ、私は高速の拳ですべて受け流した。
――極拳流〈閃拳・連式〉
閃光のような高速の拳撃を無数に浴びせかけ、キメラを乱打した。依然として大きなダメージを与えることはできなかったが、キメラはますます怒っている様子だった。奴が咆哮しながら口から魔力砲を放った。
――極拳流〈一点極進〉
魔力を凝縮した拳で魔力砲を霧散させ、その勢いのまま奴の顔を殴り飛ばした。奴の体格はかなり大きかったが、〈炎風の巨人〉で炎風になった拳を発射すると顔にも届く。
「クワアッ!」
キメラが私に飛びかかった。巨大な体が近づく姿はかなり圧迫感があった。しかもさっきからだんだん反応が速くなっていた。けれど、もう一度〈一点極進〉で顔を殴ると奴は後ろに倒れた。
倒れたキメラが体を起こした瞬間、リディア様の方から大きな魔力反応が感じられた。急いで後ろに下がってそちらを見ると、リディア様の右手の人差し指から指輪が輝いていた。
あれは『武神の指輪』?
「ぶっ飛ばしちゃう!」
リディア様の銃が魔力を放った。魔弾の魔力量自体はさっきと似ていた。それがキメラに着弾した瞬間爆発するのも同じだ。だが今回は爆発に方向性があった。まるで弾道を延長するかのように、狭くて集中した爆発がキメラの体を貫いた。キメラの体があっという間に穴だらけになった。
私の〈一点極進〉が打撃した所はかなり焼かれていたし、リディア様の集中した攻撃は奴の体に穴を開けた。やっぱり奴の耐熱性と耐久性は完全ではない。
リディア様の銃から魔力が噴き出した。『武神の指輪』は魔道具を使う技術を向上させ、魔道具自体を大きく強化する始祖武装だ。先ほどは技術を向上させる力だけを使って奴の防御力をテストしたのだし、今度こそしっかり破壊力を高めようとしているのだ。
「思う存分戦ってね。弾道はリディアが調節するから」
「わかりました」
リディア様を信じてまっすぐ突進する。キメラは拳を振り回した。早くて強い一撃だったが、あくびが出るほど正直だった。それを受け流した後、炎風の手のひらに魔力を集めた。
――極拳流『獄炎』専用技〈火山撃発掌・針〉
破壊力が広がる〈火山撃発掌〉を一点に集中し、破壊力を極大化した一撃を放つ。キメラの太ももが大きく破壊された。それによってバランスを失ったキメラにリディア様の魔弾が浴びせられた。絶妙に私を避ける弾道だった。さっきの傷はもう半分以上再生されていたが、新しい穴が次々とあいた。
そしてキメラの首筋にはシド様の刃が突きつけられていた。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈極の線〉
シド様がキメラの首筋を切った傷。その傷を刃が正確に掘り下げた。一回ではなく五回、私の動体視力でもギリギリでやっと識別できるほどの速度だった。ピンポイントの刃が傷をさらに深く掘り下げた。
ちょっと待って。あの傷はなんでまだ再生されてなかった?
「クワアアッ!」
キメラは咆哮して拳を振り回した。だがリディア様の魔弾が奴の腕を牽制して速度を遅くさせ、その間シド様はこちらに避難した。
「シド様、奴の傷に何かされたんですか?」
「『地伸』で小さな石片を作って打ち込んでおいたんだよ。魔力で直接具現する岩石は積極的に使うには浪費が激しいけど、傷に挿入して再生を妨害するのは小さな欠片でもいいから」
思いもよらない活用法だ。やっぱり自分の能力をハセインノヴァに合わせて応用する技術が優れているね。これが攻略対象者の才能ということか。
そういえば『バルセイ』のシド様は今とは性格が全く違っていたというか。よく想像がつかない。変わった姿を見たことがないからだろう。実は今もシド様がなぜテリアお嬢様を助けるのかよくわからない。シド様は他の人たちより縁が浅いし、テリアお嬢様と深く交流したわけでもないから。たった一度だけ直接聞いてみたが、シド様は返事をごまかした。
……今重要なのはそれじゃない。
「はああっ!」
私が正面からキメラを叩きのめし、リディア様が威力的な魔弾でダメージを累積させ、シド様が小さいが致命的な傷で奴の命を脅かす。キメラはどうしようもなくやられていた。キメラは私たちの攻撃手段に対する防御を備えているだけで、その他の能力はそれほど脅威的ではなかった。このままなら順調に討伐できるだろう。
……このままなら。
「クオ……!」
キメラの気配が変わった。私が最初にそれを感じた。背筋がゾッとした。
「避けてください!!」
慌てて叫んだ。だがそれさえも遅かった。
キメラが咆哮した瞬間、それに呼応するように膨大な魔力が爆発した。
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