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アルカの改善

「行きます!」


 展開したのは今回も〈掌握魔装〉。けれど数が非常に多かった。魔力剣が約百本だった。


「うっ……」


 突然の脱力感のせいで歯を食いしばった。大したことじゃなかったけれど、初めて経験する感覚だった。これが自分の魔力を使う時の感覚なんだろう。今まで特性の便法で迂回してきたことが感じられ、歯を食いしばった。


 そのままキメラに剣の雨を浴びせた。あるものは床に刺さり、あるものはキメラを斬った。魔道具の魔力波が魔力剣を崩壊させた。けれど、その一部は半分程度だけ壊れたまま原型を維持した。


 やっぱり、勘違いじゃなかった。


「今ですよ!」


 ハンナは疑いなくキメラに突進した。ケイン殿下は五体の分身でキメラを攻撃した。その間、私は魔力で弓を作り、〈掌悪魔装〉の矢をたくさん作り出した。


「せいやっ!」


 ハンナが力強く振り回した剣とキメラの拳が衝突した。両方とも弾き飛ばされ、キメラの拳が真っ二つに切られた。でもキメラの再生力が手を直ちに復旧した。


「キャアッ!」


 キメラは突然拳を素早く振った。ハンナは剣で止めたけれど、力に勝てず姿勢が崩れた。その間、キメラが魔道具の魔力波を放った。


 その瞬間、私は〈掌握魔装〉の矢を射た。矢の出力を最大に設定して。


 飛んだ矢が魔力波とぶつかった瞬間、魔力波が矢に吸収された。ハンナは姿勢を取り戻したし、ケイン殿下の分身たちがキメラに飛びかかった。キメラは全身から魔力波を噴き出しながら迎撃しようとしたけれど、私が相次いで浴びせた矢の雨が魔力波を全て吸収した。


「魔道具の魔力波を『万魔掌握』で吸収します! 全力で攻撃してください!」


 そうだ。私がさっき感じたのは魔力波の吸収だった。


『万魔掌握』は自然の魔力を操る能力。他人の魔力を吸収することは不可能だ。そう思っていたし、今まで出会った敵はみんな無限の魔力という巨大な力で圧倒することができた。それができない敵は逆に何をしても勝てない強者だけだった。そのため、他人の魔力を奪うという発想は全然しなかった。


 もちろんキメラの魔力波は魔道具から出たものであり、キメラがそれを完璧に制御しているわけじゃなかった。だから奪えるだけで、普通は放出された魔力といっても奪える割合は低いだろう。そして体内の魔力には干渉できない。しかし、放出された魔力は他人のものでもある程度干渉できるということを知っただけでも大きな成果だった。


「はあぁっ!」


「ふっ!」


 ハンナの大剣とケイン殿下のバトルアックスがキメラを斬った。傷自体は深くなく、すぐに再生された。でもケイン殿下のバトルアックスは崩壊せず、近づいたハンナも負傷しなかった。私が撃ち続けている〈掌握魔装〉の矢がキメラの魔力波を無力化した。


 そして、そのように無力化して強奪した魔力もまた()()()()()()()()()()()()()だってことは同じだ。


 ――『万魔掌握』専用技〈掌握剣陣〉


 強奪した魔力を多数の魔力剣に換装した。キメラを囲む形で魔力剣の陣が形成された。それらすべてが〈掌握魔装〉の魔力剣であり、陣の内側に『万魔掌握』の力が強く作用した。依然として自然の魔力はまともに掌握できなかったけれど、キメラが吐き出す魔力波は完全に無力化された。


 そして、その力は魔力を放出するより純粋な肉弾戦が得意であるハンナには通じない。ハンナは〈掌握剣陣〉に飛び込んだ。


「せいやああっ!」


 ――太山剣流〈山壊し〉


 ハンナの筋肉は非常に膨らんだ。その筋肉が発する斬撃に、キメラは正拳突きで対抗した。キメラの拳から肘までが半分に切断された。


「クワアッ!」


 怒ったキメラはハンナに飛びかか……らなかった。混濁した視線が私に向けられた。その意図は明白だった。


 けれど、キメラが私に突進してこようとした瞬間、ケイン殿下が奴の前を遮った。バトルアックスの中に赤い光を宿したまま。


「ふぅっ!」


 節制された気合と赤い斬撃がキメラの手を切り取った。キメラはさらに怒った。だけど依然として〈掌握剣陣〉の中であいつにできることはあまりなかった。


 そしてケイン殿下のおかげで、私は次の攻撃の準備を終えた。


「ありがとうございます、殿下」


 色とりどりの魔力の矢が弓に装填された。


 ――アルカ式射撃術奥義〈天国の虹〉


『万魔掌握』で習得した特性が入り混じった強力な砲撃が放たれた。すでにケイン殿下は射線から大きく外れていた。キメラは威力を感じ、魔力を全て自分の肉体に注ぎ込んで強化した。魔力波は無駄だと気づいたのか、莫大な魔力が身体の丈夫さだけに集中した。


「グゥ……オ……!」


 けれど、固い肉体が多色の砲撃に耐えたのはほんの一瞬だけだった。圧倒的な破壊力が皮膚を突き破って筋肉を引き裂き、骨を砕いた。ついに砲撃がキメラの固い体を貫き破壊した。


 多色の破壊が収まった時、その場に残ったのは上半身が消滅したキメラの足だけだった。


「終わったん……ですか?」


「まだわからないよ」


 ハンナはぼんやりと呟いたけど、私はまだ緊張していた。あの状態で再生しちゃうかもしれないから。本当にそうなるととんでもない再生力だろうけど、そんなケースもあるとお姉様が言ったことがあった。


 しかし、キメラが回復する気配はなかった。


「……終わったようですね」


 その時になってようやく肩の力を抜いて、ハンナも緊張をやめた。ケイン殿下はまだ周りを警戒していたけど、それは新しい敵が現れる可能性に対する緊張だった。キメラの復活を警戒する様子じゃなかった。


「かなりの威力でした。どうしても全力ではなかったはずなんですが」


「いろいろ危なかったんですけどね」


 危うく何もできない障害物になるところだった。短所に気づいて改善できるようになったのはいいけど、それは結果論にすぎない。その上、普段とは違って疲れて魔力が消耗したのが明確に感じられた。もし今回と同じ状況にまた立たされることになったら、力が尽きて倒れるかもしれない。


 もっと。力だけに依存するのじゃなく、お姉様みたいな人にならないと。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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