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一つの結末

 私の剣と奴の槍が何度もぶつかった。左手の魔剣で槍を受け流し、右手に作り直した聖剣で奴を攻撃する。奴は本来武闘の技量を積んだことがなかったらしく、左手の魔剣だけでも奴の二本の槍に対応できた。


 しかし、それは奴も自ら感じていたようだ。


 ――権能『時』専用技〈技量再現〉


 突然、奴の槍が剣に変わった。そして動きが一変した。より鋭く、より正確に。今の剣術はまるで長年剣に邁進した達人のようだった。


 ……まるで私の鏡像を見るように。


【私の剣術を盗んだよね?】


【すべての過去はわしの力なのじゃ】


 今回も奴は今の私じゃなく、神になる前の私の技量を複製した程度に過ぎなかった。単なる剣術対決なら、今の私が圧倒的に勝利できるだろう。けれど、奴の双剣は〈終わりの槍〉の力をそのまま持っていた。そのために奴の双剣をまともに受け止めることができるのが私には左手の魔剣だけだった。


 奴は武器の違いを利用しようという考えらしいけど……私はそんなに甘くないよ。


【ふん!!】


 聖剣がまた消滅した瞬間、私はすぐ右手を伸ばした。奴の剣が私の手のひらを貫いた。奴が微笑んだ。しかし、私が手のひらを突き刺されたまま刃をつかむと、奴の顔色が変わった。


【いざ神には何の影響も与えない神器なんて、あったって何の脅威にもならないよ】


〈終わりの槍〉はあくまでも必滅の存在にのみ影響を及ぼす。もちろん神でも殺されたら死ぬけど、時の流れでは死なない。そのために神の手で直接捕まえるならば、〈終わりの槍〉はただ平凡な冷兵器に過ぎずになる。


 奴は捕まった剣を手放して後ろに逃げた。


 ――天空流奥義〈五行陣・木〉


 愚かな隙間を見せちゃった奴にすぐ一撃を放った。今度は神としても本気の、もしここが奴の神殿でなかったら世界まで引き裂いてしまう一撃だった。奴が慌てて世界に干渉して斬撃の威力を削ったけれど、完全に相殺することはできなかった。極光の線が剣に変わった〈終わりの槍〉を真っ二つにして、奴の胸を深く切った。


 ――天空流〈ホシアメ〉


 無限に近い数の魔力剣が空全体を覆った。まるで目に見えるすべての場所を私の魔力で満たすことで、ここが私の領域だと宣言するように。奴はそれを見てイライラした。


【ここはわしの世界なのじゃ!】


 まるで奴の叫びに従うかのように世界が歪んだ。空を覆った〈ホシアメ〉が霧散した。いや、霧散というより、なかった時間帯に戻ったというかな。私の〈五行陣・土〉が空間を掌握したとしても、ここは奴の神域。奴が権能を最大に発揮できるここでは、やっぱり平凡な手段は通じないようだ。


 もちろん私には平凡な手段だけがあるのではない。


【もうすぐ私のものになるよ】


 左手の魔剣を空に向けて振り上げた。奴はまるでただの一本の剣で何ができるかと言うように笑った。でも魔剣から魔力が噴き出した瞬間、奴の顔色が変わった。


 剣から噴き出した魔力の柱が空に届いた。まるで空と地をつなぐように。その直後、突然空が変わった。本来この神域の空は灰色だったけれど、鮮やかな赤色に染まったのだ。奴が神域に行使していた支配力が消えた。神域の支配権を一時的に強奪したのだ。


【これは……この空はまさか?】


 奴はその時になってやっと驚愕の視線を魔剣に送った。神の神域の支配権さえも無力化する力、奴が本当に古い神なら見当がつくことがあるだろう。


 しかし、これは一時的な現象にすぎない。だからこの力が維持されている時に決着をつけないと。


【終わらせよう】


 もう一度聖剣を具現化し、魔力を整えた。本気で終わらせるために。奴も私の決意を感じたらしく、今までで最大の魔力を手に集約した。


 ――権能『時』専用技〈終末の槍〉


 見た目は〈終わりの槍〉に似ていた。でも感じられる魔力も、異質な感覚も格が違っていた。恐らく奴の最強の手段だろう。私の過去をすべて見守ったから、私が今何をしようとしているのか見当がつくだろう。生半可な手段では()()()()()()()を防ぐことができないということも。


 ――天空流終結奥義――


 お互いに向かって突進し、最後の一撃を振るう。遠くから斬撃を放つわけでも、魔力を撃つわけでもなく、ただ武器と武器がぶつかるだけの直接対決。奴は勝ったかのように微笑んだ。


 だけど武器と武器が触れた瞬間、壊れたのは〈終末の槍〉の方だった。槍を破壊した剣も、壊れた欠片がかすめた頬も平気だった。二番目の斬撃が奴の身体を深く切り、続いて突き出した剣が奴の心臓を貫いた。神に肉体的な心臓のようなものはないけれど、存在の核である神核を貫いたのが感じられた。


【が……はっ】


【終わったよ】


 神核を貫く剣で魔力を発動する。核の力が剣を通して私に吸収され始めた。


【そんな……らしいのぅ】


 奴はもう抵抗しなかった。もう終わりだということを、逆転できないということを知っているだろう。でも大人しく死んでもくれなかった。


【しかし……知っておる。なぜわしの力を要求するのか。その願いが本当に許されると信じるのかのぅ?】


【……】


【滑稽じゃ。過分な願いは自分を滅ぼすものじゃ。わしを恨んだようじゃが、間違っておる。神の力に頼る時点で過分な願いってことを知らないのかのぅ? わしはただ必滅の生命たちに理を悟る機会を与えただけじゃ】


 警告のような言葉だったけれど、私は鼻を鳴らした。


【私自身を滅ぼす程度で私の願いを叶えることができれば、安い代価だよ】


【……傲慢なのじゃ】


【いや、私が傲慢なのじゃない。貴様が無能なんだよ。理を悟る機会? 見栄えのいい言葉はやめて。貴様は自分の願いを諦めちゃった無能な奴じゃない。だから人が願いを叶えるのに耐えられなくて絶望を強要するクズだよ】


 奴の過去は私もある程度知っている。少し同情してはいるけれど、それより奴への憎しみがはるかに大きい。だから迷いはなかった。


【……その願いが叶うのか……見ておるのじゃ】


 それを最後に、神核の吸収が終わった。奴の姿が完全に消え、私の中に今まで感じたことのない力があふれた。


 そうして私は神名を簒奪した者になった。

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