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意外なこと

「拒否権を使うよ」


 カリンお姉ちゃんは悩んだ末に宣言した。


 少し驚いた。悩むはずだって思ったけど、本当に拒否権を使うとは期待しなかったから。まだ最初の質問でもあるし、実質的に拒否権を使うことに大きな意味はないだろうだったから。


 それなのに強いて拒否権を使ったということは……私が考えられる可能性は二つ。カリンお姉ちゃんが思ったよりバカだったり、この質問の答えに私の心当たりを超える秘密があったり。根拠はないけど、後者だという感じが強くする。


「次は私が質問しようか? それとも貴方がもう一つする?」


「貴方に機会をあげますわ」


 今の拒否権の意味と次の質問についてはもう少し考えてみるのがいいと思う。


 カリンお姉ちゃんが次の質問を言うまでは時間が少しかかった。


「今そっちの世界の状況はどう? 『バルセイ』と比べて話してくれたらもっといいよ」


 今回もおかしいわね。それでも最初の質問よりは少しでも意義が見えた。


 もしカリンお姉ちゃんが『隠された島の主人』だとしても、この世界の時間に属している状態なら。私の方(未来)のことはよくわからないだろう。気になるのも一理ある。情報として意味もあるし。


「まだ『バルセイ』のストーリーは始まっていません。それでもずっと順調だと言えるでしょう。ミッドレースアルファ・プロトタイプはすでに討伐されており、アカデミーの邪毒獣出現事件でも人命被害はありませんでした」


「……うまくいっているね。本当に」


 よかったと言うように穏やかに笑うあの姿が果たして演技なのか本気なのか。下手に信じたくはないけれど、本気かもしれないという思いが少しずつ強くなっていった。しかし油断は禁物だ。


 話をしている間、私も次の質問については一通りまとめた。私がここに来た目的と知っておくべきことを考えた結果だ。


「二つ目の質問権を使いますわ。私がここに現れた時、どうやって私がミヤコの転生者であることを知ったんですの?」


 すでに最初の質問に拒否権を使用した以上、この質問の答えを回避することはできない。


 カリンお姉ちゃんが『隠された島の主人』かどうかははっきりできないけれど、私の転生に関与したかはこれで分かるだろう。


 カリンお姉ちゃんは眉をひそめたけれど、答えをためらわなかった。


「そうなる運命だから」


「それだけで答えが十分だと思いますの? もう少し説明してください」


 腕を組んで催促すると、カリンお姉ちゃんは気に入らないようにため息をついた。だけど〈三問の円卓〉に縛られている限り、答えの義務から逃れることはできない。


 結局、彼女はもう一度ため息をつき、また口を開いた。


「言葉通りの意味よ。言ったじゃない? ここは貴方の基準では過去だって。こっちのミヤコは……命が危ない状況ではあるけれど、まだ生きているよ。だから私の基準では〝ミヤコ〟はまだ転生していない。でもミヤコは〝テリア〟に転生する予定だよ。そんな状況で、そのテリアがいきなり目の前に現れたでしょ」


「生まれ変わっていないテリアの可能性もあるでしょう」


「ない。絶対に」


 急にゾッと戦慄が起こった。


 断言した瞬間、カリンお姉ちゃんの気配が一変した。強いて聞かなくても感じられるほど強烈な怒りと悲しみだった。私に向けられたものではなかったけれど……その強烈な感情の余波を感じただけでも、まるで私を睨む猛獣の目を前にしたような錯覚が感じられた。


「貴方も知ってるじゃない。『バルセイ』で〝テリア〟が救われたルートなんてどこにもなかったよ」


「でも今私はまだ『バルセイ』の本編に足を踏み入れることもしませんでした」


「同じよ。『バルセイ』の記憶を持って転生でもしない限り、〝テリア〟の行跡は変わらない。絶対に」


「貴方がそう作ったからですの?」


「とんでもないこと言わないで!!」


 カリンお姉ちゃんが突然魔力を爆発させた。特に攻撃しようとするのではなく、感情が激しくなり瞬間的に爆発したのだった。そんな中でも前世の私には爪の垢ほども余波が及ばないように調節したけれど、その代わりに私の方に衝撃波が集中してしまった。


「くっ……!」


「……あ! ご、ごめんね」


「……大丈夫ですわ」


 私の後ろの窓は割れてしまったけど、私は少し押し出されただけだった。


 今の反応は……明らかに怪しいわね。〝テリア〟の行跡を断定的に言うのもそうだし、今の怒りは本気だった。でもその怒りの土台を成したのは計り知れなく深い悲しみだった。それは〝神崎ミヤコ〟に向けた感情ではなかった。


 一方、カリンお姉ちゃんは表情を整え、また口を開いた。


「ゴホン。最後の質問は特に質問権を使わなくても答えてあげる。何も言わないと私が悔しいからね。さっきも似たような話をしてたけど、私はその世界や人間を作ったり運命を操作したことがないよ。むしろそんなことができたらどんなに良かっただろうと何度も泣いてた」


「……聞きたいことはたくさんありますけれど、今回は質問権を使うことになるみたいで、一旦保留します」


 もともと考えておいた最後の質問は私を転生させたのが貴方かということだった。でもすでにその質問は意味がなくなった。すでにここが過去だと宣言した以上、ここでは私の転生はまだ起きていないこと。いくら〈三問の円卓〉の強制力が強力だとしても、まだ起きていないことを自白させることはできない。今度もカリンお姉ちゃんの質問を受けながら次のことを考えないと。


「続いて質問しないなら、次は私の番だね」


 正直、どんな質問が出るか予想できない。今まで出たものがすべてあまり重要ではないもので、まだ私には拒否権が残っているから。そもそも得ようとする情報がなかったのなら、強いて〈三問の円卓〉に応じる必要もなかったし。一方的に私だけが情報を得ていくわけだから。


 しかし……カリンお姉ちゃんの最後の質問は、単なる予想外のレベルではなかった。


「最後の質問権を使うよ。……貴方は今幸せなの?」

読んでくださってありがとうございます!

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