表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

250/891

強敵の登場

「お互いに怒ったからお互い様よ」


「そうしてくれたら俺はありがたいね」


 すぐ便乗するねこいつ!! ムッカつく!


 怒りを込めて魔弾を撃った。一発爆発して魔物が死んでいった。シドはそれを見て口笛を吹いた。


「やっぱりやればいいじゃん。集中しろって」


「うるさい。あんたこそ集中して」


「はいはい、仰せのままに」


 シドはすがすがしく席を立った。私はしばらく彼の背中を見つめていた。


 ずっと相手していたらペースが崩れそうな奴だね、本当に。あんなタイプは初めてだからだろうか。これからあいつとやり取りする時は気を使った方がいいかも。


 そう思いながら腹いせに魔弾を乱射したけれど……実はあまり不愉快な気持ちではなかった。


 ……だからといって気に入るというわけじゃないけど。絶対にね。




 ***




 意外と面白いね、リディアの奴。からかう甲斐がありそう。


 思わずにやにやしながら魔物を切り倒した。おっと、なんかサイコパスみたいな演出になっちゃった。でも笑いをあえて抑えるつもりはない。


 ……まぁ、ひどすぎて後頭部に撃たれるのは嫌だけど。それでも適当なほどはさっきの論争に対する腹いせだとして見逃してほしい。


 ……ゆったりとした考えはここまで。そろそろ意識を変えようか。


 実は先ほどから少し怪しい違和感があった。薄すぎて正確に何の気配かは分からないけど、ちょっと邪毒の感じがするね。


 おそらくリディアは違和感そのものをまだ感じていないのだろう。まぁ、ハセインノヴァは感知能力を磨くことが重要なので人より優れてはいるから。


 しかし違和感が感じられるのは〈大地の城壁〉の外だ。直接調査しに行くには少しでもここを空けなければならない。


 でもリディアだけに任せるのは気乗りしな……。


「!」


 ……悩む状況じゃなかったんだね。


 突然、時空亀裂の方から強烈な気配が膨らんだ。亀裂が吐き出す数多くの邪毒塊の一つが急激に大きくなり、他の魔物より倍以上は巨大な形状になった。まるで筋肉質の人間と鷲を合わせたような鳥人間の姿だった。ただ体格は小さな家ほどに見えた。


 一応あいつを先に何とかしないと――そう思って突進しようとした瞬間、赤い宝石の魔弾数発が奴の体に命中した。爆発が起き、奴がふらついた。でも皮膚表面が少し焼けただけで、明確な被害はなさそうだった。


 リディアが本気を出せばあいつにも十分攻撃が通じるだろうけど、そうなれば彼女の殲滅能力を魔物の軍勢の方に使えなくなるだろう。今は俺よりリディアの方が対軍戦に適している。


[とりあえずあいつは俺が引き受けるよ。周辺殲滅を優先しながら、俺の方にはたまに支援射撃ぐらいしてよ]


[分かった。任せておくよ]


 リディアに連絡するとすぐ返事が来た。頼もしいね。


 ――『地伸』専用技〈大地の歩み〉


 地を通じた超高速移動で、鳥人間型魔物の背後に移動した。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術〈筋肉切り〉


 極度に薄く浸透力に優れた魔力の刃で奴のアキレス腱を切った。


「グオ!?」


 怒った奴の注意が俺に注がれた。奴の頭にきたけど攻撃があまり効いたようではなかった。


 やっぱり上位魔物。部位をピンポイントで攻撃するのは打撃が少ない。


 ――『地伸』専用技〈山の拳〉


 巨大な岩拳で奴の顔を強打した。短い断末魔と共に奴が後ろに倒れた。その後頭部が地面に着く直前、俺は奴の額に乗り込んだ。同時に赤い魔弾が奴の後頭部に滑り込んだ。大量の破片が混じった爆発が奴の後頭部に炸裂した。


「ナイスサポート!」


 快哉を叫びながら〈盤岩固剣〉に魔力を込めた。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術〈空虚の一閃〉


 目に見えない、しかし広い範囲を切る斬撃が奴の両目を切った。血を吐く目玉にさらに白光技の魔弾を数発食わせ、魔力をたっぷり吹き込んだ拳で額をぶん殴った。奴の後頭部が地面と激突して轟音を立てた。その後頭部に刺さっていた〈爆炎石〉の破片が爆発し、奴の肉を掘った。


 ――『地伸』専用技〈大地の拘束〉


 巨大な石の触手が奴の四肢と胴体を拘束した。


 このまま仕上げるつもりだったが……どうやらそれは浅はかな考えだったようだ。


「グワアアア!」


 奴がむやみに魔力を放出した。その暴力的な力の噴流が〈大地の拘束〉を破壊した。俺も慌てて避難せざるを得なかった。


 奴はすぐ立ち上がって俺に突撃してきた。奴の全身から濃い邪毒の霧が吹き出した。何の対策もなしにあそこに触れたらすぐ腐食して死んじゃう濃度だった。


 対策なしに触れるつもりはないけど。


 ――『地伸』専用技〈アーセンドの石壁〉


 巨大で堅固な石壁が奴の進路を阻んだ。奴は石壁に向かって邪毒を放出した。でも石壁はびくともしなかった。


 ――アルケンノヴァ式射撃術『結火』専用技〈道を開く一発〉


 リディアの魔弾が爆発し、奴の全身を包んだ邪毒の霧を中和させた。完全に消えてはいなかったけど、俺が入り込む隙間ができた。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術奥義〈空虚の歩み〉


 次元の中に隠れ、探知も干渉も外れたまま突進した。そして魔力を集中した一撃を奴の心臓付近に食わせた。奴の硬い皮膚をまともに破ることはできなかったけど、奴をもう一度転ばした。


 相手にしながら耐えることはできる。でも倒すことは全力を尽くさなければならないようだ。〈大地の城壁〉を保ちながら戦闘にも全力を発揮するのは魔力の制御も難しく消耗も激しいので避けたかったけど、これは仕方ないね。


 惜しんで死んじゃうバカなことをするよりは、少し無理をしてでも確実に始末した方がいいだろう。


[リディア。今から少し本気で行くよ。適当に補助してくれ]


[何よ、曖昧すぎるじゃない。ミスしても責任取らないからね?]


[今まで本当に良かったんだよマジで。お前だから信じてもいいと思う]


 何故か最後にリディアの返事がなかったけど、肯定する気配は伝わってきた。


 よし、五分以内に奴を討伐する。


 ……さっきの違和感も気にかかるしね。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ