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新しい局面

 ……そういえば、テリアは魔物たちの襲撃をウェーブと呼んだな。


 なぜそのような表現を使ったのか分からなかったが、実際に目撃してみると理解できた。確かに波のように押し寄せることに例えたくなる光景だ。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・八方〉


 魔力の渦が八頭の竜になった。その竜が暴れながら魔物の群れを飲み込んだ。しかし、魔物らは気にせず次々と押し寄せてきた。


 ボクと突撃隊が魔物を倒し、チャージされた魔力砲で殲滅。五回ほどその過程を繰り返したが、魔物の数は減る気配がなかった。いや、むしろだんだん強くなっていた。


 だがこれは予想通り。そしてこれからもっと強い奴が次々と現れるだろう。


「全員、力を無駄にしなく節約しろ! 危険な状況では力を使いすぎるな、歩調を合わせて速やかに後退しろ! 隙間はボクがカバーするぞ!」


 長期戦が予想される以上、力の分配も重要に考えるべきだ。特にここにいる全員の魔力量はボクより著しく低い。だから隊員たちが力を節約できるようにボクが補助した方が良い。


 しかし、そろそろ奴らの勢いが強まっているんだな。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・巨竜〉


 巨大な魔力の嵐が〈冬の回廊〉全体を埋め尽くした。千匹近いの魔物すべてが完全に粉砕され、回廊越しまで破壊の怒濤が広がった。


「全員後退しろ!」


 隊員たちを後退させた後、ボク一人で回廊の果てまで突進した。回廊の向こうには依然として魔物があふれていた。


「かかってこい!!」


 魔力を込めた怒声を上げた。同時に〈竜王撃・八方〉で魔物の群れをかき分けた。すると奴らの注意がボクに注がれた。


 その状態のまま後退。ボクに注意が引かれた奴らが〈冬の回廊〉に駆けつけ、他の奴らはあいつらに惹かれて一緒に来た。ボクは奴らより早いが、だからといって完全に引き離したりもしないギリギリのスピードで走った。計算した通り、後方支援部隊の魔力砲が充電されたばかりだった。


「撃て!」


 合流と同時に怒号、そして砲撃。再び轟音と閃光が爆発し、回廊内の魔物が一掃された。これで六番目。


 ……とは言えないことを、ボクは魔力の気配で悟った。魔力砲の閃光と残響を突き抜けて、何匹かの魔物が突進してきたのだ。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・子竜〉


 小渦の竜を放った。突進してきた魔物たちの頭を竜がかみちぎった。魔力砲に撃たれて死ななかっただけで、すでに満身創痍だったので、それだけでも絶命した。


 だが、その光景の意味は明らかだった。


「……そろそろ魔力砲に耐える奴らがくるぞ」


「そうですね。ジェリア様じゃなかったら危ないところでした」


「空虚な褒め言葉はいらないぞ」


「本気です。僕だけの考えでもありませんし」


 その言葉を言ったテニーは苦笑いするだけだったが、他の人々の眼差しには熱気があった。それにボクに送るのがその熱い眼差しだけではなかった。


「本当に圧倒的でした。騎士団の魔力砲五門よりもジェリア様の方が強いですね」


「ジェリア様がいらっしゃれば、最後まで被害なく収拾することも可能でしょう!」


 照れくさいことをよく言うんだな。訳もなくボクまで顔が少し熱くなる感じだ。


「……過大評価すぎるぞ。ボクはまだまだだ。そして魔物はますます強くなるだろう。しっかりしろ」


 テリアだったらもっとスムーズだったはずだ。ひょっとしたらここを守りながら魔物発生ポイントを制したのかもしれない。ボクも少し無理すれば一ヶ所くらいは制圧できるが、ボクの力では危険負担が大きい。ここでは慎重に行動すべきだ。


 それに早くも魔力砲を突き破って飛びかかってくる奴らがいる。今は魔力砲の威力に耐えられず、命ばかりついている程度だった。だがもっと強い奴らが出てきたら、すぐ魔力砲に被害をほとんど受けない奴も現れるだろう。


 そんな奴が出てきた時こそ、ボクが本当にまともに乗り出さなければならない時だ。騎士団の魔力砲の威力に平気で耐えるほどの防御力なら、この場でまともに相手できるのはボクだけだ。先天的に祝福された膨大な魔力量のおかげでまだ問題はないが、ボクも力を調節するのは同じく必要だ。


 もっと洗練に、もっと絶妙に、でも強さはそのまま維持するように。もっと精巧に力を制御する方法を身につけないと。


「次が来ます!」


「ああ」


 魔力砲はボクの〈竜王撃・巨竜〉と違い、〈冬の回廊〉の外まで殲滅することはできない。そうしながら魔力の残響が濃く残るため、魔物の注意をこちらに引くのに良い餌だ。本当に楽だな。


「プランBに行く。練習した通りに行こう」


 プランB。後方支援部隊は魔力砲を充電する魔力の一部を突撃隊強化の魔道具に、突撃隊は魔力をもう少し節約する戦術だ。魔力砲の充電が遅くなる代わりに、突撃隊が力を節約する長期戦対応用だ。


 最初からこの戦術を使わなかったのは魔物の数が多かったから。だが先ほどのウェーブを詳しく観察した結果、魔物がさらに強くなった代わりに頭数が微妙に減った。押し寄せてくる勢いも少しだが減った。まるで物量戦から少数精鋭に少しずつ転換されるように。


 理由はともかく、数が減って個体の力が強くなっているなら、力を注ぐ殲滅戦は非効率的だ。魔力を惜しんで各個撃破した方が力を蓄えるのにもっといいだろう。


 ……そんなボクの予想は本当に早くも破られた。


「――グオオオオオオオ!」


 姿が見えないのに、音だけは広く響く巨大な雄たけびだった。しかも音だけが大きいのではなかった。聞くだけで……あるいは触れるだけでも戦慄が感じられるほど濃密な魔力を内包した。まるで自分がそこにいることを知らせるようだった。


 あるいは……宣戦布告をするような気もした。


「美味い奴が現れたらしいぞ」


 ボクは平然と言った。平然としていなくても、そんな姿を見せなければならなかった。


「あれは……危ない奴です」


 皆の顔に警戒心と恐怖が幼かった。奴の魔力を感じて、手ごわい奴だと直感したのだろう。闘志が消えるほどの恐怖ではなかったが、パニックの危険がないとは言えない。


 だからこそ、ボクは堂々と前に出た。


「あいつはボクが相手にするぞ。一人で十分だ」

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