最後の悩み
「……へえ」
シドが細目をした。そしてジェリアとロベルは頷いて、アルカとリディアは何か意気揚々とした顔をしていた。
けれど、私はそのような感想など全く気にせず、今後の日程と計画について考え続けた。
「……一応これといった方法はないようですわね。今のところ、再確認と点検しかできないようですの」
「だからといって何もしないつもりはないですよね?」
「もちろんですわよ」
どんなことをするのか。誰がどんな仕事を引き受けるのか。そんなことを考えて、短く会議した。おかげである程度まとまった。
「ジェリア、ジェフィス、シド公子。三人はもう一度邪毒陣と魔道具に対する調査を。可能性は薄いと思いますけれど、再確認する必要はありそうですからね」
この三人にはこれが一番適切だろう。特にこの調査は場所を探る能力が重要で、その方ではシドが最も適切な能力を持っている。既存の調査ルートや方式を覚えているはずのジェリアとジェフィスにシドを付けることで、もっと精密に調べることができると思う。
次はケイン王子とガイムス先輩を振り返った。
「ケイン殿下、ガイムス先輩。お二人はアカデミーの邪毒濃度と時空間変動状況を引き続き注視してください。そして警備隊や騎士団と連動して、警備状況を点検してください」
結界術に長けたケイン王子と空間系能力者のガイムス先輩。邪毒濃度と時空間状況については、この二人こそ適格だ。しかも実績のある王子としてある程度権限があるケイン王子はもちろん、ガイムス先輩もすでに卒業予定者として騎士団予備隊に所属している。コネを活用できるだろう。
元修練騎士団長として各自の特性を知っているガイムス先輩が微笑んだ。
「どんな意図なのか分かるね。なかなかいい選択だよ。残ったのは君たち姉妹とロベルとリディアさんかな? 三人は何をするのかい?」
私とアルカはジェリアの方であれケイン王子の方であれ加担できるけど、両方とも私たちの助力はあえて必要ない。むしろ人材の浪費に近いだろう。
それにピエリについて調べてみることにした以上、そっちに投入する人も必要だ。
「三人でピエリの三十年間の行跡について調べてみます。関連記録をきちんと閲覧するには、私たちの名前と権限程度は必要ですから。それにしてもケイン殿下、補修作業の正確な日付は決まりましたの?」
実は今でも私は補修作業がいつ行われるのか分からない。ゲームでも正確な日付は出たことがなく、今も日付がまだ確定していないのだ。邪毒獣出現の可能性のため、ケイン王子がわざと日程を不透明にしたためだ。
しかし、それにも限界がある。作業の日付がずっと曖昧な状態なら、作業者たちにも迷惑だし。そろそろ決めておいたと思うけれども。
ケイン王子はなぜか少し照れくさそうに見えた。
何だろう……?
「その……明日です」
「……は?」
瞬間、礼儀を忘れた。
いや、ちょっと待って。私今何を聞いたの?
私の反応を見て、ケイン王子は頬を掻いた。
似合わない行動がいたずらにもっと憎らしいわよ!
「まだ明確な予兆がない状況なので、いっそ日程を早めました。もし安息領やピエリの準備がまだ終わっていないかもしれませんから。そして過去の補修作業よりも少し早い時期です。おそらく敵もその時だとは思っていないでしょう」
……言われてみれば一理あるわね。不安が消えないけどね。
それでもまぁ、もう決まった以上は仕方ない。備える時間が迫っているという問題はあるけど、ケイン王子の言葉通り、それは安息領の方も同じだ。それにケイン王子なら何の準備もなしにそんなことはしなかっただろう。
予想通り、ケイン王子にはまだ言いたいことがあるらしい。
「現在、作業者と警備隊は補修作業中に襲撃や予期せぬ事態が起きることを想定して計画および準備を進めています。当日の警備に助力する騎士も配置されました。そして私の指示に従って迅速に配置を変更する準備もできています。今日の啓示夢の話をもとに対応策を講ずればいいです」
「いいですわよ。そっちはケイン殿下を信じます。……ロベル。貴方は調査を進めている間、連絡役を預かってね。作業が明日だから、迅速な情報共有が何よりも重要なのよ」
「かしこまりました」
さあ……計画はこの辺でいいのだけど。
みんなの視線が私に集中した。話を終えそうな雰囲気だったのに、私が依然として何か悩んでいるように見えたんだろう。
実際、今悩みがある。それもかなり大きな。今までは思ってもいなかったんだけど、今回一連の出来事を経験して少し心境の変化が生じたというか。
特に『隠された島の主人』の相次ぐ干渉。啓示夢という形で『バルセイ』の情報をやたらにばらまくあいつの行動にはちょっと呆れちゃったけれど……おかげさまで今までの自分の方針を振り返るきっかけになった。
あいつが何の意図で一連のことをしたのかは分からない。でもそれを知らなくても、見た目だけでも利用できる余地があるということだけは確かだ。それなら利用しない理由もない。
結果的に今までの私の信条を覆す形になるけど……そもそもその信条は信頼性の問題から定めたものだった。他のきっかけがあるなら、違う方向を模索するのも自然なことでしょ。
意を定め、私はみんなを見回しながら口を開いた。
「みんなさん、少しお話があります」
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