可能性について
「特に遊んでいたわけじゃありませんわよ」
そう思っても言うことはないけど。
ケイン王子は真剣に責めようとしているわけじゃないようだった。ニコッと笑ってやり取りに割り込んできただけ。
「啓示夢ですか。内容には驚きましたが……少し安心ですね」
「安心って?」
「貴方の情報はどう考えても曖昧な部分がありましたからね。ああ、非難しようとしているのではありません。現実的な限界でしたから。ですが、その啓示夢の内容を貴方がある程度認めましたので、それを具体的な情報として受け入れてもいいと思いました」
曖昧な情報か。間違った言葉じゃないけど、そんなことを持った私が認めたからといって、それを具体的な情報だと受け止めていいのかしら。
少し疑われ、ケイン王子の目を見た。案の定、目に怪しい笑いが漂っていた。多分、実は具体的に知っていることがあってわざと隠すんじゃないかな? とかでも考えているんだろう。
その意図に釣られる理由はないから、言うべきことだけ言おう。
「邪毒神に感謝したくはありませんけれど、私もその部分だけは役立ったと思いますの。何の意図を隠したのかは分かりませんけれども」
「確かに怪しいですね。このように積極的に介入する邪毒神は珍しいですし、特定の誰かを助けようとする者だなんて」
「本当にその通りですわね。いってい正体が何なのか顔を一度見たいんですわよ」
ウフフ、アハハ。私たち二人とも笑ってはいたけど、眼差しは全くそうじゃなかった。いつの間にか近づいてきて私たちを見つめていたシドがうんざりした。
「……第二王子殿下、もともとあんな方なのかよ?」
言葉だけはジェリアに向かっていたけど、そんなに堂々とあいつら何なんだって目で私たちを見ていたら意味がないでしょ。その気持ちは理解できるけど。
ジェリアはため息をつきながら前に出た。
「無駄な神経戦はやめろ。意味もないし。ケイン、まさかテリアが『隠された島の主人』と何らかのつながりでもありそうか? テリア、君も余計に神経質に反応するな」
うぅ、やっぱりバレだったのかしら。
ケイン王子は苦笑いして肩をすくめた。
「いつまでも私とだけ距離を置いているようで意地悪になっただけだよ。……そんな疑いをしなかったわけではないけど」
あの疑いのバカがもう。……私も適当な疑いだとは思うけれども。
「邪毒神がどれだけ信じられるかはわかりませんが、貴方の情報と一致する部分もありましたね。邪毒獣が現れるとか。一応その程度の邪毒災害が発生することを前提に、手段と兆候について調べてみました」
私だけでなく、ジェリアとシドもケイン王子の言葉に耳を傾けた。この時点で一つでも多くの情報は貴重だから。
「これまではテリアさんの経験と知識をもとに邪毒陣に焦点を当てていました。ですが、邪毒陣を利用した邪毒災害の誘発は予兆があるしかありません」
「そうですわね。邪毒濃度が異常に上昇しますから。いくら秘密に仕事を進めようとしても、邪毒濃度を増幅させる過程で必ず目につくしかありません。今のアカデミーなら、邪毒災害発生までに一日はかかるでしょう」
「そうです。しかもその方法の場合、機能を発動すると起点となる邪毒陣の位置が露出されます。最悪の場合でもアカデミー全域に人員を散開させた後、発動した時に直ちに対処させることで防ぐことができます。ですが、そのような不安定な方法だけがあるわけではありません」
その後、ケイン王子はより隠密な方法を羅列し始めた。何の気配も予兆もなく時空間の亀裂を開けちゃうことができたり、あるいは予兆を感知しても対応できない特殊な方法だった。
ほとんどは私も知識として思っていることだけど、あまり深く考えてはいなかった。高くて扱いにくい装備を備えた実験室の中で、観測にも専用装備が必要な小規模でしか具現できない技術だったから。それらをアカデミーで邪毒災害誘発に使うほどに拡張できるならば、特許料で一生を責任取られるレベルの技術だ。
もちろんケイン王子もそれを理解していた。
「もちろん、これらの方法は規模と実現可能性の面で現実性に欠けています。テリアさんもよく知っているはずです。そもそもこれらの方法は、父君であるオステノヴァ公爵閣下の協力によって分かったものですから」
「そもそもいくつかは父上の主導で実験が進められている技術ですからね。……もしその技術を流出させて実用化まで成功した者がいたら、その能力だけでも司法取引くらいはできるはずですわよ」
もちろん、現実性に足りないといって完全に度外視することはできない。万が一というのがあるから。
その時、ジェリアが口を開いた。
「それらの方法はすでにケインから聞いたぞ。団員たちを率いて調査もしたんだ。だが、それらどころか似たようなものも捉えられなかった」
やっぱり、もう調査まで終わったわね。
けれど、何の所得もないという話をしようと言い出したわけじゃないだろう。実際、ケイン王子は依然として言いたいことがあるような表情だった。
「それでも今の時点でも可能性のある手段が一つあります」
「完全隔離空間、ですの?」
「そうです」
簡単に言えば、出入りと干渉が徹底的に封鎖された異空間だ。
本来、完全隔離空間は封鎖を解除するまでは絶対に外部と疎通できない。けれど、その空間の中で外に影響を及ぼす方法が数年前に開発され、能力さえあれば実戦でも使用できる。
……能力があるなら、ね。
その技術はあまりにも複雑で、莫大な魔力が必要だ。あまりにもややこしくて難しくて魔道具化はまだなされていない。だから人が直接遂行するしかないけど……理論上、制御能力と魔力貯蔵量がピエリ級になってこそやっと使える方法であるだけでなく、時間も非常に長くかかる。
それでも姿を消したピエリが完全隔離空間に隠れている可能性はある。でもそれを仮定しても、すぐに探しに行くことは不可能だ。
なぜなら……。
「残念ながら、今私たちには完全隔離空間を見つける方法がありません。……文字通りに」
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