予告
修練騎士団の首脳部会議室。
大人数を収容できる汎用会議室と違い、こっちは相対的に小さい。もちろん汎用会議室も普段の使用人員は少ない方だけど、首脳部会議室は空間自体が小さい。前世の一般的な高校の生徒会室くらいの大きさだから。
そんな首脳部会議室で、私が呼び集めた人たちが私に注目していた。
「テリア。どうした?」
ジェリアが団長として代表として前に出た。
今度の会議を招集したのは私だった。そして会議室に集まったのは私の使用人であるロベルとトリア、一歩遅れて修練騎士団に合流したケイン第二王子、そして現在アカデミーにいる公爵家の子たちの中でシドを除いた全員。簡単に言えば、主人公と攻略対象者たちがシドを除いて全員集まっていた。ジェフィスは攻略対象者じゃないけど。
「そろそろ一つ、情報を共有しようと思ってね」
その一言でみんなの眼差しが変わった。
まぁ、何を考えているのかは聞かなくても分かるわね。いつも一人で悩んでいた私が情報共有だなんて! とかでも考えているだろう。
でも今回のことは私が一人でもがいても解決できることじゃないわよ。しかも、すでに一度は共有していた話でもあるし。
「私が前に話した〝災い〟、覚えているのかしら?」
そのように話し始めた瞬間、リディアとアルカを除いたみんなの顔色が変わった。
私が覚えているのかと尋ねるほどの〝災い〟はそもそも一つしかない。ケイン王子の舞踏会でケイン王子に言ったそれ。そしてそれを共有されて私と話をしたジェリアと、その場に同席したジェフィスとロベルとトリア。この人たちはみんな知っている。知らない人はアルカとリディアだけ。
私はその二人に要点を概説した後、本格的に話を始めた。
「結論から言います。それは……本当に起こるなら、その時期はもうすぐですの」
「正確な時期までご存知ですか?」
ケイン王子がそのような質問をした。少し微笑んだ顔がまるで私に何かを期待しているようだった。
けれど、私は首を振った。
「いいえ、残念ながらそこまではわかりません。でもひょっとしたら起きる場合、間もなく起こるということは自信できますわよ」
ゲームでその事件が起きたのは今年。それは確かだけど……実は正確な日は提示されなかった。ゲームで言及されたのはただ〝シドが編入し、春が過ぎる前〟という一文だけ。でも春はもう二ヶ月しか残っていないので、デッドラインは最大に見積もっても二ヶ月。それよりも早い可能性もある。
事件発生前後の推移についての情報でもあれば逆算できたはずだけど……残念ながらその事件はただ回想で出ただけだ。戦後の詳しい状況までは明らかにしなかった。
「ひょっとしたら起きる場合、ですか。時期を察する割には発生するかどうかが不透明だと言うようなお言葉ですね」
ケイン王子がそう言った。
やっぱりよく気づくね。どうせ隠すつもりはないから構わないけど。
「はい、そうですの。原因と推察することがないわけじゃありませんけれど……実はその原因がもうなくなったんですわよ」
「なくなった? それでも心配するってことは……原因がまた生じる余地があったり、あるいはそれが原因であることを百パーセント確信していないということですか?」
「さすがケイン殿下ですわ。追加説明を省略できるようにしてくださってありがとうございますわ」
「これくらいは誰でもできる予想です。それで、その原因というのは何ですか?」
私はジェリアを振り返った。
私の使用人であるロベルとトリア以外に、この場で〝あのこと〟を直接経験したのはジェリアだけ。また、当時執行部を指揮して邪毒陣撤去作業を率いた彼女なら、私の説明を補助することができるだろう。
「五年前、安息領がアカデミーを襲撃した事件を知っていますの?」
「あの有名な事件を知らないわけがないでしょう。ですが、単に事件について聞いたことがあるのかと聞くのではないようですね」
「ええ。ケイン殿下なら事件の顛末について報告を受けたでしょう?」
「もちろんです。当時、修練騎士団がアカデミーに設置された邪毒陣を多数発見しました。それを撤去する途中、安息領が襲撃し、警備隊と執行部が協力して奴らを撃退した。という報告を受けました。そしてテリア公女が安息領のバケモノを討伐するのに多大な貢献をしたと。……待ってください、まさか貴方の言う原因が……」
さすがケイン王子。どういう意味かすぐ気づいたようだ。それだけでなく、明晰なジェフィスと五年前の当事者だった者たちもみんな納得したという顔だった。
アルカとリディアも真剣な顔になった。
「五年前の事件が関係しているということですよね? お姉様」
「リディアも分かったよ。その時撤去したという邪毒陣が今年の事件の原因ってことでしょ? でもそれなら、邪毒陣を撤去されたからもう大丈夫なんじゃないの?」
リディアの言葉も一理ある。そもそも私もそれを目的にその時、邪毒陣を無くしたから。
けれど、私は首を振った。
「考えて。邪毒陣がいたら、それを設置した者もいるでしょ?」
「そうだね。でもアカデミーは国の人材が集まる所だよ。それだけ犯罪やテロへの警戒はすごい。それでも邪毒陣を設置したということは……」
リディアの顔が青白くなった。他の人たちもリディアほど劇的じゃなかっただけで、みんな表情が良くなかった。リディアが暗示したのが……私が言おうとしていることが何なのか、やっと気づいたわね。
「気づいたみたいだね。そう。邪毒陣を設置したのはピエリなのよ。多分直接」
私はロベルに合図した。すると彼は一歩前に出た。
「五年前の事件当時、ピエリ・ラダスは直接乗り出して安息領を撃退しました。ですが、当時の彼の行動は妙に消極的でした。おそらく、自分が安息領と関係がないことをアピールするためのごまかしだったのでしょう」
ロベルは書類の束を取り出した。みんなの視線がその書類に注がれた。
私が入学した時からのピエリの行跡を詳しく記録した書類に。
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!




