ラウル
「もちろん警備と防御だけに力を入れるという意味ではありません」
私は微笑んで前に出た。
「修練騎士団は生徒たちのアカデミー生活全般を支える組織。当然、内部的にも多くの業務があります。そのすべてを振り返り、詳しく見て、連携して内実を固めることが目標です。そのようにすることで、外的な防御体系もさらに強固になるでしょう」
詳しくは公約集を確認してください、と。そう言って公約集を自ら配布してあげると、通りかかった生徒たちは少し当惑したような顔で公約集を受け取っていった。中には顔を赤らめる人もいれば、過ぎ去った後に眉をひそめる人もいた。
「どういうつもりなの?」
「フィリスノヴァの隣にオステノヴァがつくからあんなショーもやるんだな」
「バカみたい」
自分たちだけでそう呟く生徒もいた。私の聴力では全部聞こえるけど。
表情ややり取りでそのような否定的な意見を示す人たちは……二割ぐらいかしら。肯定的な視線を送る生徒がはるかに多いけれど、否定的な側もかなりいた。もちろん、その中に私たちと少しでも面識があったり、あるいは修練騎士団と縁のある者はいなかった。
通りすがりの人たちを見たので、全体の標本では足りないと思うけど……二割か、思ったより多いわね。
「やっぱりこんな広報はボクより君の方がいいんだな」
少し余裕ができた頃、ジェリアはそう言って苦笑いした。けれど私は首を振った。
「公約の内容はほとんど貴方が骨子を立てたじゃない。もちろん私や他の子たちも手伝ってあげたけど、結局私が言う内容も貴方のアイデアに基づいたものよ」
「それとは別の話だぞ。ボクはどうしても防衛や武芸に関する話にしきりに焦点を合わせるようになるんだ」
「後で騎士団で騎士として演説をする時はそれがむしろ大きな助けになると思うわよ?」
「騎士が演説をすることはあまりないぞ。万夫長以上の地位に上り、騎士団の歴史に残る戦闘の出征式くらいならともかく」
「あら、私がそんなことも知らないと思うのかしら?」
私がそこで話すのをやめると、ジェリアは不審そうに首をかしげた。そうするうちに少し遅れて私の言葉の意味を悟り、フッと笑った。
「信頼が重いぞ」
「自信ないの?」
「まさか」
そのやり取りを横で聞いていたアルカは首をかしげた。そんな彼女の耳にリディアが顔を当てた。
「ジェリアなら万夫長以上の地位に就くことができるという意味だよ」
あえて解釈してくれる必要はないんだけどね。
とにかく、そんな感じで選挙遊説と私語を交わしていた時だった。急に周りを通りかかった人が減った。いや、正確には道をどいてあげようとするように道端に移動した。
……ついに来たのかしら。
余裕のある道の向こうから、一人の男子生徒が不機嫌そうにしかめっ面をしてこっちに近づいた。
背はジェリアより少し高いくらい。さわやかな藍色の髪と目がかなり美しかった。容姿もそれに相応しいイケメンだったけど、しかめっ面のせいでその美貌が少し色あせた男だった。
着ている制服も騎士科のものじゃないし、顔もほとんど見たことのない人。けれど、彼が誰なのか知識では知っている。
でも私や彼が口を開くよりも先に、ジェリアが一歩前に出た。
「アスティロン辺境伯の令息か。ボクに用事があるようだな」
「はっ。フィリスノヴァ公爵令嬢が俺の名前を知っているなんて、これは光栄ですね」
……うわぁ、一発殴りつけたい。
堂々と挑発する笑みを浮かべていたけど、いざそれを正面から受けたジェリアは心の中が分からない笑みを浮かべた。
「知らないはずがないぞ。アスティロン辺境伯は辺境伯勢力の筆頭だからな。長男のラウル・ラウド・アスティロンか?」
「そうです。直接会うのは初めてですね。一応会って嬉しいと言うべきでしょうか?」
「すでに知っているようだが、ボクはジェリア・フュリアス・フィリスノヴァだ。……心にもない親しいふりなんかしなくてもいいぞ。丸見えだからな」
ラウルが手を差し出し、ジェリアがその手を握った。形式的な握手だったけど、当然親密さなど少しも込められていなかった。
ラウルは握り合った手を見下ろして眉をひそめた。
「……かなり力を入れていますね」
「どういう意味?」
「フィリスノヴァのくせに人に媚び方をよく教わったと驚きました。握手さえ簡単にしてくれない人種ですからね、貴方たちは。こうやって直接出て広報をしているのも同じだし」
そしてラウルは私の方をちらりと見て口元を上げた。明白な嘲笑だった。
「これもオステノヴァの作品ですか? よくも丸め込んでいましたね。後ろでそっと何を企んでいるのですか?」
「なっ……!」
ラウルの態度に他の子たちが怒った。特にリディアは今にも〈爆炎石〉を投げそうな勢いだった。
けれど、ラウルのターゲットである私とジェリアは平気だった。
「さぁね。貴方も私たちと一緒なら自然にわかるでしょう」
「ハハ、それもいいが、気になることがあれば直接聞いてもいいぞ。いくらでも答えてやるからな」
「お姉様たち! あんなこと言われてじっとしているんですか!?」
「落ち着いて、アルカ。リディアも。たった一言で興奮するなんて、気品が落ちるんじゃない。初対面でいきなり人を非難することほど情けない行為なのよ」
私の言葉に今度はラウルの眉毛が上下した。この程度の挑発に反応するなんて情けないわね。
一方、ジェリアは豪快に笑い出した。
「ハハハハ! 二人とも時間の無駄はやめろ。それよりアスティロン令息。わざわざ訪ねてきたのを見ると何か言いたいことがあるようだが、そろそろ本論に入ってはどうだ?」
ジェリアの言葉にラウルは小さく鼻を鳴らした。
「お気遣いありがとうございます、と言っておきましょう。……正直不本意ですが」
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