ジェリアの心
「ジェリア! 今日は勝つ!!」
ボクの名前を叫びながら飛びかかるリディアに向かって、ボクは激しく笑いながら声を上げた。
「その言葉、もう百回は聞いたぞ!」
――『アーマリーキット』具現兵器・近接炸裂型マチェテ『灰色の猿』
片手には『灰色の猿』を、もう片方の手には魔力で刃を構成する短剣である『野性の爪』を握ったリディアが突進してきた。それに対抗してボクは愛剣である『冬氷剣』を握って魔力を高めた。
――リディア式戦術魔弾〈万年爆炎〉
リディアの魔弾が『灰色の猿』の柄に装填された。すると刃が赤く燃え始めた。刃が振り回されるたびに、爆炎が鎖のように相次ぎ、氷を破壊した。
魔弾の力を変換して魔剣に化する『灰色の猿』の真骨頂。ずいぶん久しぶりに見るんだな。
直後、リディアは赤い宝石を多数まき散らした。リディアの魔力である『結火』が作り出した爆発する宝石、〈爆炎石〉。すでに熟練しているその威力は、一つだけで小さな家を吹き飛ばすレベルだった。
だが。
「無駄だぞ」
――『冬天』専用技〈冬到来〉
周辺一帯が一気に凍りついた。騒々しく爆発していた〈爆炎石〉もその爆煙ごとすべて凍りついた。それだけでなく無数の氷錐が湧き出てリディアを狙った。
「こっちのセリフよ!」
リディアは空中で爆発を起こし、自分の身を吹き飛ばした。そして小さな体格を利用して氷錐の弾幕の間を器用に通過した。彼女の姿が瞬く間に目の前まで迫ってきた。果てしない爆炎の刃がボクの肩に向かって振り回された。
「くだらない。いつものようにな」
――狂竜剣流〈一縦〉
爆炎の連鎖を切り裂き、巨大な氷の刃でリディアを牽制した。リディアは舌打ちをして爆発を起こして避けた。ボクたちの魔力は同時に空中に散らばった。
――『結火』専用技〈結火魔装〉
――『冬天』専用技〈冬天魔装〉
それぞれ赤い宝石と氷が数百個の武器を作り出した。壊れた破片があちこちに散らばっていた。もちろんボクの周りにも。
その瞬間、壊れた破片が一斉に爆発した。
だがボクは冷気と氷の壁で爆炎を防いだ。そして後ろから振り回された〈結火魔装〉の剣を手で握った。
「前にも通じなかった戦術だぞ」
『冬天』の魔力を込めた手の握力が〈結火魔装〉を破壊した。
……テリアならボクが〈結火魔装〉を握った瞬間、魔装自体が変わってボクの手を攻撃させたのだろう。
そんなことを考えているうちに、リディアが激しく咆哮した。
「リディアも知ってるのよ!!」
散らばっていた爆炎が再び集束され、数本の『結火』の槍に変わった。それらがボクの周りに刺さった。魔槍たちが共鳴して魔力を噴き出した。
――アルケンノヴァ式武技術〈槍の監獄〉
強力な結界の重圧感がボクの体を押さえつけた。さらに『結火』の魔力が強烈な炎を起こした。だが、ボクがもう一度〈冬到来〉の冷気を吐き出すと〈槍の監獄〉が破壊された。
しかしその瞬間、地面から強力な魔力の気配が感じられた。
「!?」
いつの間にか地面から小さな銃口が飛び出していることに気づくと同時に、その銃口から魔弾が発射された。ギリギリで頭を反らして直撃は避けたが、魔弾の噴き出す強烈な炎がボクを襲った。
リディアはその隙を狙って突っ込んだ。
――リディア式戦術魔弾〈唐変木のおじさん〉
『灰色の猿』の魔弾交替。熱を一点に集中して突破力を極大化した一撃だった。
「ふん」
――『冬天』専用技〈剣の冬森〉
〈冬到来〉で四方に広がった冷気の魔力を利用し、巨大な氷の刃を多数作り上げた。リディアの攻撃を防ぐことはできなかったが、ほんの一瞬その進撃を遅くさせる効果はあった。
……テリアなら、そもそもこんな風に活用する冷気を残さず一掃したのだろう。
――狂竜剣流〈竜の爪〉
爪のように分化した斬撃が、様々な角度でリディアを襲った。リディアはそれを全部マチェテで受け流し、続いて振り回されたボクの剣と正面からぶつかった。
その時、リディアの後ろから二本の小銃が空中に浮いた。
――リディア式射撃術〈猛禽の翼〉
――『冬天』専用技〈隔絶の輪〉
二本の小銃が発射した魔弾を防御技で防ぎ、ボクの剣を抑えていたリディアのマチェテを逆に押し付けた。広範囲にわたる氷と強力な腕力でリディアのあらゆる手段を封じ、足元から生えた氷でリディアの腹を強打して吹き飛ばした。
「うぐっ……!?」
「攻撃を連携するのはいいが、対応される場合の考慮がまだ不完全だな。そのような方向ではテリアの助言を求めてみるのがいいぞ」
「ゴホッ。……知ってるよ。でも貴方も今日に限って普通じゃないね」
吹き飛ばされて転んだリディアは咳をしてそう言った。
「貴方、今日は何か気がここにいないようだよ。どうせテリアのこと考えたんだよね?」
「……そんなにわかりやすかったか?」
「ただそんな感じがした。それにしてもムカつくね。リディアをまともに見てもいない貴方を相手にも勝てないなんて」
「……すまんな」
「結構よ、その気持ちは理解するから。テリアはすごい子だから。正直憧れるしかないよ。リディアもテリアをたくさん真似してるのよ」
やはり。妙にテリアのことを思い出させる気がしたな。戦闘法の面で大いに参考にしたようだな。
一方、リディアはボクを見てニヤリと笑った。
「テリアを目指すのはいいけど、あまり一人で悩まないでね」
「……テリアの傍に立つにはまだ足りないぞ」
「それはリディアたちみんなが同じだよ。だから一人で悩まないでって言うのよ。どうせやるなら一緒にやればいいんじゃない?」
ったく、人の心も知らずに軽く言うのは。
だが間違った言葉でもなく、笑っているリディアにあえて冷たく言うつもりもなかった。それでボクはリディアの小さな頭に手を当てて乱雑なことをした。
「こら! 何してるの!」
「いや、まぁ。お礼だぞ」
「こんなお礼なんてないよ!」
「ありがとうって本気だぞ」
そう言って笑うと、リディアは目を丸くした。だがすぐ表情がいたずらっぽく歪んで、ボクの頬をつついた。
「こう見ると貴方も本当にきれいなんだけどね。男たちをよく誘いそう」
「そんなことなんか興味ないぞ」
ったく、いつの間にかこんな冗談まで投げかける性格になっては。
そう思いながら、今度はリディアの頭をやさしく撫でた。
このいい友人でさえテリアのおかげで知り合ったと思ったら、やはりテリアにはかなわない。
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