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白の中の紫

 やっぱりお姉様は強い。


 お姉様の攻撃はまともに見えなかった。そして私の攻撃は何一つ通じなかった。もしこれが本当に命がけの戦いだったら、おそらく私は千回は死んでいたのだろう。


 普通ならとっくに諦めている状況。でも私は少しも折れていない。


 私の決意が堅固だから……ではなかった。もちろん堅固だと自信はあるけれど、今私が諦めない理由は別にあった。


 ……できるよ。


 解決策が見えないにもかかわらず、できると確信した。さらに、その心はますます大きくなっていた。それが私がこの挑戦を止めない理由だった。


「アルカ」


 お姉様が声をかけてきた。


 まさか諦めろって言おうとしているのかな。お姉様の表情はとても穏やかで、本音をうかがうのが難しかった。


「望みがないとおっしゃるのであれば……」


「そんなことないわよ。ただアドバイスをしたくてね」


 アドバイス。その単語に訳もなく心が浮き立ってしまった。お姉様がしてくれるアドバイスなら、きっと普通じゃないだろうから。


 そのせいで油断してしまった瞬間、お姉様が瞬間移動のような速度で私の前に現れた。剣を振り上げたままでそれに気づいた時は、すでにお姉様の剣が私の体を切っていた。


「うっ!?」


 痛くはないけど、あまりにも突然で驚いてしまった。その上、その心を落ち着かせる前に莫大な魔力が私に降り注いだ。気を失っちゃいそうだと思うほど濃い魔力だった。反射的にお姉様の魔力剣を手で握ったけれど、そのせいでむしろさらに濃い魔力にさらされた。


 でも手を離そうとした瞬間、お姉様の手が私の手を握った。まるでお姉様の剣から手を離さないようにしようとしているかのように。


 お姉様の意図が何なのかは分からない。でもお姉様が望むという理由だけで、私はしがみつくように手に力を入れた。濃密な魔力のせいで息が苦しくなった。


 そんな私にお姉様が話しかけてきた。


「魔力を感じなさい、アルカ」


「魔力を……?」


「そうよ。私の魔力を覗いてみて。そして貴方自身の魔力をよく見て。できるだけ深く、一番奥に隠れた魔力まで全部暴いてみるという覚悟で」


 お姉様の魔力。これは今まで飽きるほど感じてきた。お姉様の優しい浄化の魔力、そして紫光技に変化した強い魔力。その中でも『万壊電』はお姉様が一番好んで使う特性だった。そのピリピリした感じとどこか怖い感じに慣れている。


 そこまで考えて自分の魔力に目を向けた。そして悟った。私の魔力が、かすかにもお姉様の『万壊電』に似ているのを。


「こ、れは……」


〝ほんの少し暖かくなったような感じだね。まるで熱気を抱いたかのようにね〟


 頭の中でリディアお姉様の言葉がよみがえった。


 リディアお姉様がそのようなことを言ったけれど、その時私は変化をよく感じられなかった。でも今は違う。かすかではあるけれど、どんな変化が起きたのかはっきり感じられる。


 私の表情を見たお姉様が微笑んだ。直後、お姉様が突然剣を振り回して私を吹き飛ばした。


「きゃあ!?」


「ヒントはこれくらいでいいわね?」


 私は頷いた。


 今の言葉と行動で確信ができた。やっぱりジェフィスお兄さんやリディアお姉様の考えが合ってたんだって。お姉様が私の『万魔掌握』に期待するのは、始祖の伝説と同じ能力だったんだ。


 ……やっぱりお姉様はすごい。何でも知っているし、何でもできる。お姉様に不可能っていうのが存在するのかな?


「他のことを考える余裕があるのかしら?」


 お姉様が急に私の目の前に現れた。


「っ!?」


 私はあたふたと弓を上げた。遅れたと思ったけれど、意外とお姉様の剣は適度な速さで振り回された。私の武器が一撃で壊れるのは相変わらずだったけど。


 お姉様の攻撃の様相が変わった。今までは私が対応どころか視認すらできない速度だったけど、今は壊れた代わりに新しい剣を作って姿勢を取る余裕があった。その代わり、一撃に込められた魔力量が倍に増えた。私に害を与えないように加工された魔力なのに、かすかにピリピリとした痛みを感じるほど。


「う、くっ……!」


「集中しなさい」


「して、いますよ!」


 お姉様は私の首に向かって剣を振り回した。私は剣を立ててそれを止めようとした。でも私の剣は何の抵抗もできず破壊され、お姉様の刃と魔力が私の首を強打した。私はその勢いに押された。


 でも私はその勢いに抵抗しなかった。むしろその力に身を任せて後ろに回転した後、〈魔装作成〉で魔力弓を作った。そして私なりに最善を尽くした速射でお姉様を牽制した。


 ――アルカ式射撃術〈願いの星〉


 矢一本に大量の力を集中させ、強力な一撃を放った。それはお姉様が一度振り回した剣に迎撃された。だけど莫大な魔力に圧倒され消滅する直前、砕けた矢の魔力が大きく輝いた。そしてお姉様を包む小さな結界が展開された。


 ――白光技〈絶望の牢獄〉


 私が使える最強の制圧用結界。普通の魔物や生徒なら三日はじっと閉じ込める技だ。


 もちろんお姉様は三日どころか三秒すら許さなかった。


「急に小細工を仕掛けてくるわね」


 お姉様は剣さえ振らなかった。ただ結界がないかのように前に歩くだけ。結界はお姉様の体に触れるやいなや粉々に砕けた。


 でもその一瞬の時間こそ、私が望んだものだった。


 ――天空流〈一つの星〉


 いつもより一層莫大な魔力を一点に集中した。ほぼ私の制御限界まで。過度な魔力量のため不安定になった魔力剣がぶる震えた。


 その奥に、紫色の魔力が一切れ混ざっていた。


「えっ?」


 私がそれを見て驚いた瞬間、お姉様が突然目の前に現れた。


「まだまだよ」


 お姉様が剣を振り回し、私は反射的に防御姿勢をとった。限界まで魔力を集中したおかげで、ほんの少しは持ちこたえた。しかしお姉様がもう一度雷電の魔力を爆発させると、私の剣は不安定な状態に耐えられずに粉々になった。


 直後、その魔力の一部が私の体に逆流した。


「……!?」


 抵抗する暇さえなかった。


 私は訳もわからないまま急に意識を失った。

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