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ライバル 下 ☆

 やっと私は自分が笑っていることに気づいた。気がついたら、むしろ爆笑したい気持ちまでした。


「そうですわね。今とても気分がいいですわよ。人としっかり競ってみるのはかなり変わった感じですわ。実家で修練する時はこれほど真剣に練習したことはなかったんですの」


「変わった感じか。人じゃないものは結構相手にしたことか?」


「貴方もそうでしょう? その剣実戦用(・・・)じゃないですの?」


「言うまでもないな」


 私たちはさっきまで剣を振り回して戦ったことが嘘のように笑いながら会話をした。


 しかし、私もジェリアも、全身に沸き立つ魔力を落ち着かせるつもりは少しもなかった。


「終わったらお茶でも一杯飲みましょう」


「いいぞ。だがやるべきことはやらないとな」


「お忙しいですわね。では、私はゆっくりと……」


「ボクじゃなくて君のことだ。入学式に行けよ新入生。こっそりさぼろうとするなよ?」


「……」


 恥ずかしくて黙って剣を取り直すと、ジェリアも姿勢を変えた。


 そのまま私たちは誰が先と言わず剣を持ち上げた。


 


 ***


 


〈竜の咆哮〉と〈三日月描き〉が同時に放たれる。


 魔力砲を切り裂いて迫ってきた斬撃を避け、その間接近するテリアに向かって大量の氷の錐を撃った。


 ガチャン、ガチャンと氷が破壊され、その間に隠れるようにテリアの姿が移動し続けた。今は魔力で作った足場だけでなく、砕け散る氷や地面まで踏み台にして空中を飛び回っていた。破片の間をかき乱すように斬撃が続いた。


「ちっ!」


 やはり立体機動戦闘に長けた天空流は相手にするのが面倒だ。


 四角に飛んでくる斬撃を避けようとしたら姿勢が崩れた。その隙に〈流星撃ち〉の閃光が飛んでくると、ボクは氷の盾を作った。ガガッと気になる音と共に閃光が横に逸れた。


「はあああああ!」


 練習場全体を冷気で覆い、強力な氷構造物を形成する。今ボクが具現できる最強の氷を。


 テリアが空間を自由自在に走り回るなら、その空間自体を塞げばいいだけだ。


 茂みのようにびっしりとした氷の槍がテリアを狙って……。


 ――天空流〈フレア〉


 ……閃光が閃いて肩から血が噴き出した。


 氷の森が真っ二つに切り裂かれて崩れるのを茫然と眺めていてふと、爆発するように噴き出した長距離斬撃がボクの肩を斬ったということをワンテンポ遅れて理解した。


 ギリッ。歯を食いしばって剣に魔力を集中した。


 


 ***


 


 来る。


 ジェリアが大量の魔力を高めるのを感じ、緊張を高めた。


〈フレア〉で切断されて崩れる氷を飛び越えて攻撃することもできたけど、それでも決定打を食わせることは難しい。その上、ジェリアが使おうとする技が私が思ったことが正しければ、他にしなきゃならないことがあった。


 剣に魔力を集中する。作り出す魔力は『万壊電』。物質を崩壊させる特殊な雷を剣に巻き、さらに圧縮していく。


 その工程を完了する頃、崩れた氷の山が爆散し、氷雪になって一点に集中された。


 視界が晴れて向こう側から剣に魔力を集中するジェリアが見えた。渦巻く『冬天』の魔力が氷雪になって剣を包んでいた。


 ジェリアは私の姿を見て少し驚いたように声を流した。


「君……」


「ちょうど天空流にも似たような技がありまして」


 ジェリアの顔に激しい笑みが浮かんだ。手を読まれたよりも、似たような技で正面対決を狙うのを面白がるように。


「面白いぞ。一度……」


「私が言いましたね。貴方……」


 お互いを睨み合いながら同時に足を曲げる。


 狙うルートは正面。小細工など全部捨てて、ただ一撃で勝負を終えるために私たちは地を蹴った。


「ぶつかってみようか!!」


「魔力を使うのが下手だって!!」


 二つの刃が交差した瞬間、嵐のような魔力が解放された。


 ――狂竜剣流、『冬天』専用技〈暴食の歯〉


 ――天空流〈紅炎〉


 解放された魔力がぶつかって、第三練習場全体をまるでミキサーのように猛烈に粉砕していく。


 二つの嵐は一歩も退かずにお互いを取って食おうと暴れた。魔力量もほとんど同じで、特性もお互いに同じレベルだったので、どちらかが一方的に圧倒することは不可能だった。


 制御能力が同じだったら、ね。


「ふぅっ!」


 気合を入れ、剣を握った手に力を込める。


 私の意思に呼応した嵐が一瞬小さくなって収縮した。そしてまるで槍で茂みを刺すようにジェリアの嵐に食い込んだ。私はその魔力を爆発させ、ジェリアの嵐を内側から霧散させた。


「うっ!?」


 慌てたジェリアは残りの部分にさらに魔力を加え、また攻撃を放った。それに対抗して私は嵐の表面にもう一度魔力を加え、激突の瞬間それを爆発のように炸裂させて一気にジェリアの嵐を吹き飛ばした。


 魔力の激突で台無しになった地面を蹴飛ばして接近。あっという間に目の前まで近づいた私にジェリアが剣を振り回したけれど、逆に私の方からそれを上へ殴りつける。剣同士がぶつかった瞬間、爆発した魔力がジェリアの重剣を大きく弾き出した。


 衝撃でバランスを崩して倒れるジェリアに一閃。空っぽの胴体に向かって斬り下ろした剣がジェリアの肩にそっと触れる瞬間、私は剣を止めた。


「……ボクの負けだぞ」


 ジェリアはそう呟いて、剣を下ろして前髪を乱した。


 静寂。戦いの騒音だけでなく、他の音も何一つ聞こえなかった。


 練習場の中には私とジェリアだけだけど、外から見物中の見物人の声すら聞こえなかった。


 しかし、それはただ驚きすぎて固まっただけだった。それを証明するように、少し遅れて声が上がった。


「な……何だ!? 今何が起こった!?」


「ジェリア様が負けた……! 入学したばかりの時に一度負けただけで、先輩たちさえ大量に倒したあのジェリア様が!」


「ありえない、正体は何だ!? オステノヴァ公爵家って研究者一族じゃなかったのかよ!?」


 ……瞬間一発殴られたと思った。うわぁ、耳が痛い。


 しかし、ジェリアはそのような驚愕の歓声など知ったことではないと言うように、ただため息をついて肩をすくめた。


「ああ、まったく。オステノヴァに剣術で負けたフィリスノヴァとは、これは大騒ぎだな。悪い意味でフィリスノヴァの歴史に残るぞ」


「あら、それでは貴方が屈辱を受けないようにするには、私がもっとすごい人にならなきゃなりませんね」


「心配するな。その前に君に勝つからな」


「頑張ってくださいね」


 近づいて手を差し出すと、ジェリアはためらうことなく私の手を握って立ち上がった。


 その後に手を放そうとしたけれど、なぜか彼女は私の手を放さなかった。なんだかんだで握手する格好になったわね。


「素晴らしいな君。ボクだってすべての手合わせや模擬戦で勝ったわけではないが、三歳も幼い子に負けるとは思わなかったぞ」


「生きていればこんなことも一つぐらいはあるものでしょう」


「気楽に話してもいいぞ。ボクは強い奴に敬語を使ってもらうのが嫌いなんだ。強い奴とは近く交流した方がいいからな。いいライバルは傍に置かないと。そうじゃないか、友よ?」


「聞かずに勝手に何を言ってるのよ。……って言いたいけどまぁ、それでは好意を受け止めてみようかしら」


 気兼ねのないアプローチが少し呆れたけど、特に否定はしなかった。するとジェリアはもっと気に入ったかのように豪快に笑った。


「はは! そうしないとな! 気に入ったぞ!」


「ところで服ごめんね。なんだかんだでたくさん破ってしまったの」


「何、騎士科はもともと制服の予備をたくさん用意しておく方なんだぞ。大丈夫だ。それよりいったいどれくらい手加減をしたのかよ? 傷が浅いぞ。ちょっとチクチクするがな」


「全力を尽くさなかったのは貴方も同じでしょ?」


「どうせやっても勝てなかっただろ」


 ジェリアは私が背中にかけた二剣を指した。


「天空流の主力はもともと二剣流じゃないか? それで一本だけ使った時点で本気じゃなかったのだろ。結界まで自力で展開したし」


「結界は貴方も一緒だったでしょ?」


「ふふ、バレたのか」


 私たちは同時に第三練習場を見回した。


 すでに原形なんて跡形も見当たらないほどめちゃくちゃに壊れていて、練習場全体をかすかな光の膜のようなものが包んでいた。最初の激突の瞬間、私とジェリアが同時に繰り広げた結界だった。


 これがなかったら練習場の結界だけでは〈竜の咆哮〉や〈流星撃ち〉を使った時点で見物人に死傷者が出ただろう。


 ……いや、それよりあの見物人たち、もう自分たちだけで大変になって誰か一人くらいは下敷きになりそうだけど。


「とにかく面白かったぞ。新入生は今日入学式だけして終わりだから入学式が終わった後に会おう。さっき言った通り、お茶でも飲もう。いい場所を紹介してあげよう」


「楽しみにしているわ」


 そのような会話をした後、小走りで出口に向かった私は、すぐに結界を解除した。


 すぐに人が押し寄せたけれど、声が入り混じって何と言っているのか分からない。それでもあまり近づかないのは、私が公爵家の令嬢だからだろう。


「皆様、落ち着いてください!」


 必死に人々を落ち着かせようとするロベルとトリアは可哀そう。そろそろ手伝ってあげようか。


 私は騒々しい中でもよく聞こえるように声に魔力を込めて挨拶した。


「朝からお騒がせして申し訳ありません。私はオステノヴァ公爵家のテリア・マイティ・オステノワと申しますの。申し訳ありませんが、少し落ち着いていただけませんか? 下敷きになる人が出てくると大変なことになりますわ」


 正直ちょっと難しいと思ったけれど、幸いにもみんなすぐに落ち着いてくれた。まだひそひそという音は多いし、妙に熱気が感じられてはいたけど、少なくともその熱気を外に吐き出した勢いは減った。


「ありがとうございます。私はもう入学式に行かなければならないので、失礼してもよろしいでしょうか?」


 特に誰かに向けられた言葉でもなかったので、答えは曖昧だった。そして私を防いだり積極的に話しかけようとする人も特にいなかった。


 私は大丈夫だと判断して足を運び、人々はいったん道を譲った。通りすがりに再び声をかけようとする人もいたけれど、私は格式ばった対応で適当に断ってその場を抜け出した。


 ロベルは人と離れるやいなやため息をついた。


「お嬢様、いったい何ですか? 急に相談もなしに戦いをして、いきなり勝ってしまって」


「何だよ、ロベル。お嬢様は勝ったらダメ?」


「いいえ、そうではなくて……」


「お嬢様、輝く勝利おめでとうございます。急に戦いをした時は私も驚きましたが、勝利は心から嬉しいです」


「姉貴ずるい! 一人だけこっそり抜け出して! 見ている時は僕よりもっと文句を言ったじゃないですか!」


「うるさいよ」


 言い争う姿を見ると思わず苦笑いが出た。


「二人とも落ち着いて。それより私、十分目立ったのかしら?」


 瞬間、二人は同時に同じ表情で私を見つめた。というか、額に「このバカが今何の戯言を言った?」と書かれているような表情だった。


「まさかそこまでして目立たないことを願っていたわけではないでしょうね?」


「お嬢様、人が何を言おうと程度というのがあるものですよ……」


 ひどい! そんなこと言うほどじゃないじゃない!!


 ……そんなに抗弁しようかと思ったけれど、見るまでもなく非難されるに決まったのだから止めた。


 まぁ、それでも気持ちはいい。むしろ私の目的は二人の言葉とは逆に目立つことだったから。それにジェリアの興味を引くことも成功したしね。


 これからやるべきことは多いけれど、少なくとも初日の成果としては完璧だ。


「入学式は中央講堂だっけ? 行こう。時間がずいぶん経ったの」


 足を早めながら、私はこれからのことについて考えた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

初バトルかっこいい! とか、これからの活躍が楽しみ! とか、とにかく面白い! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークを加えてください! 力になります!

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ちょいちょい日本語がおかしかったり会話が不自然だったりしてる
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