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傀儡 -カイライ-

 夕焼けの強い日差しを背に伸びる影法師。

 その頭が重なるマニア城の玄関口に、人影が一つ。

 背格好から少年のようで、服装は夏らしい風流な着物を着ている。


 少年は、玄関から先を中々踏み越えようとせず、じっと立ったままだ。

 姫奏は、来客の案内をしようと少年へ挨拶をする。


「こんばんは、誰にごようですか?」


 千雪も釣られてその少年に挨拶をしようと顔を見た時、千雪の表情が一瞬固まった。

 振り返った少年もまた、千雪の姿に顔を上げた。


「千雪よ、よりにもよって、マニアの城に居候しているとは、お前は何を考えているのだ」


 勢いで姫奏の背後に隠れた千雪が思いがけないことを言う。


「お兄ちゃん……なんでここに……」

「お兄ちゃん!?」


 少年は、一歩踏み込んで横外向きに構えて言った。


「お前に、兄と呼ばれる筋合いはない。千雪よ、御徒雅穂を返しに貰いに来たぞ」

「御徒雅穂ってちゅきの傘だよね、ちゅきにお兄ちゃんいたんだね、初めましてマニア城の八祇間姫奏です」


 千雪の兄と呼ばれる男に自己紹介をする姫奏だが、少年は姫奏を無視して千雪との会話を続ける。


「御徒雅穂はどこだ?」


「えーっ、ちょっと、この人何なの? ちゅき!」


 強烈な無視っぷりに怒り心頭の姫奏だが、千雪を見ると明らかに動揺しているのがわかった。


「傘は……なくしたよ、どこにもない」

「ちゅき?」

「なに? 無くしただと? クククッ……ハーッハッハ!!」


 傘の所在を隠そうとする千雪に、少年は双眸そうぼうを大きくみはり、大口を開いて肩を揺すり笑い出した。

 呆気に取られていると、笑いは唐突に止まり、少年は殺意に満ちた顔に変貌した。


「相変わらず嘘の付けない女だ、友人と宿を貸した恩人共が殺されても文句は言えまい!!」


 少年が弾き出すように着物の袖を振り上げると左親指にはめたリングが輝いた。


「姫奏ちゃん! 逃げて!!」


 血相を変えて姫奏の手を引き駆け出す千雪。


「ちょっとちゅき、あんなやつから逃げること無いよ! わたしがやっつけてやる!」

「だめ……姫奏ちゃんの魔法は……お兄ちゃんには効かない……」

「え……」


 指輪の光は、遥か上空まで届き、その光が再び光芒となり降り注ぐとその中から巨大な何かが出現する。


「そういえば、今日千雪の学校を見学したのだが、その時面白い出し物が見れたぞ、贋作といえよく出来ていた、所詮は贋作だったがな」


 千雪とともに駆け出す途中、振り向いた姫奏が見たもの、それは――。


「鎧の騎士……!?」


 あの漆黒の騎士に似た巨大な騎士、しかし今日見たそれよりも更に大きく何より神々しい威厳のある風貌だった。


「御徒原家は、魔力を持たぬ一族、その一族が神より与えられし力の一つ、“傀儡かいらい!!”」



 白い陶器に似た艶のある流線型のボディーに、蛍石を思わせる燐光を放つ目。

 手には光り輝くレイピアのような剣を持ち、白金の翼は銀色の光を放出し宙に浮いていた。

 姫奏が今まで見たどんな生物や機械とも似つかない異質な存在。

 それは正に人の力を超えた神より創造され壮烈な美を象った天使。

 城外での騒ぎを聞きつけ、マニア城の人間が駆けつけてくる。


「うおっ、こいつぁたまげたなぁ……、本物の天使様じゃねーか」

「美競刃、こいつ知ってるの?」

「まぁな……でも説明してる暇はなさそうだな、飛んで来るぞ」


 滑空する鋼鉄の天使。

 旋風を巻き起こし、レイピアの鋭い切っ先が襲い来る。


「ホーリーライト……ッッ!!?」


 素早くホーリーライトを打ち込む姫奏だが、聖なる体をもつ天使の傀儡にはダメージは吸収され無効化されてしまう。


「俺が食い止める、姫奏は城に戻ってけてマニアを呼んでこいッ! いけっ!!」


 姫奏を庇い、急降下してくる敵の一撃を受け流す美競刃。

 受けた衝撃で両足をつけたまま後方に5メートル程弾かれる。


「美競刃……!!」

「ちゅきさんは俺が守っておくから、任せろ……あいつは多分、けてマニアでしか対処できんぞ……早くいけ」

「う……うん!」


 戸惑いながらも、信頼する仲間である美競刃が、かみやふくべえの力を頼るべきと判断したことが、今がどれだけ緊迫した状況であるのかを暗示していた。


「マニア城の人間か、千雪よ、お前がくだらん嘘を付くせいで無関係な人間が死ぬのだ」

「あん? 誰が死ぬって?」


 美競刃は両手で短剣構え、中腰、前かがみの姿勢をとる。それは虎が獲物を狙う時のようで、防御より攻撃の姿勢だ。


「面白い……ならばこっちも“技”を持って相手をしよう……」


 傀儡の中に搭乗する千雪の兄の表情が、挑戦的な美競刃に対して嗜虐的に嗤う。


「お兄ちゃん……!! まさか……美競刃さん逃げてください!!」


 静止したような世界、傀儡だけが身動きを許されたような緩慢な動作……。

 傀儡の剣が徐々にスピードを増し、世界が動き出したと思うと、真空を切り裂く程の高速の斬撃が美競刃に殺到する!!


「御徒原神我一刀流“真空覇斬”!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」


 常人では全く見えない神速の斬撃、だがその攻撃と互角に渡り合う。払い除ける。

 神の領域に踏み込んできた、只の生身の人間に驚愕したのは、千雪の兄だった。


「バカな……!! 貴様……何者だ!?」

「マニア……だよ、まぁ……たまたま刃物の扱いだけはこの城で一番マシだっただけさ……」

「だが……、無事では済まなかったようだな? 既に立っているだけで限界だろう?」

「ちっ……ばれたか……反則なんだよ……体格差からしてもよぉ……」


 全身から血が滲み出し、出血の量が肉体の限界を超えて膝がガクガクと震えだす。

 天使の傀儡の体格はビルをも超える程巨大だ、人間の平均的な成人男性と変わらない大きさの美競刃が、小さな短剣2本で攻撃を退き、大地に立って生きているという事が奇跡。


「所詮マニアも人の子……と余裕を持っていたのが間違いだったな、いいだろう……アストラルパワーを持って貴様らを駆逐してやろう……!!」

「その力は、“表世界”で言うことは禁止されてるんじゃねーのかよ?」

「この場でいる人間で知らないものはいないと思ってね、そうだろう? 千雪」

「……………………」






 一方、城の中では、けてマニアかみやふくべえが既に待機していた。


「ユウユさんがお越しになっているみたいですね」

「ユウユ? ちゅきのお兄ちゃんの名前? ふくべえさんはちゅきの家族の事しってたの?」

「……はい、いまは美競刃さんが戦ってくれているのですね……うむ、姫奏さんは、津屍壊貴怒つしかかいきど君を起こしてきてください、彼の力が必要になります」

「え……壊貴怒君を……」

「ええ、“今の”姫奏さんの光ならば……彼を目覚めさせることが出来るでしょう……時は来たのです……急いでください」

「うん……!」


 姫奏はマニア城の内部にある格納庫に向かって走った。







 再び城外。

 千雪の兄ユウユは威圧に見下ろしながら、千雪に対して最終警告を告げる。


「千雪よ、御徒雅穂を返すのだ、戦う意思のないお前にあの傘を持つ資格など無い!!」

「私にだって……戦う意思はある……!!」

「ほぅ……以外だな、逃げることしか出来なかったお前に戦う意思があるだと?」

「ある……私だって変わったんだ……姫奏ちゃんと……出会って……」


 ――目を瞑ると、姫奏の背中をずっと見てきた記憶が千雪の瞼の裏に映る。


「ふむ……そうまで言い切れるなら、戦うが良い……この我とな!! さぁ……御徒雅穂を持って来るのだ!!」


 激しい口論を交わす二人の前に、かみやふくべえが間に立ち入り、ユウユに語りかける。


「ユウユさん、これはあなたのシナリオの一つなのですか?」

「来たか、けてよ……、お前は何を育てている? さっき城に逃げ込んだ女がお前の言うメシアだと言うのだろ?」

「そうです、姫奏さんはいずれ宇宙を照らす光となります」

「いずれか……とても、間に合うとは思えんがな」

「そうですか……」


 ユウユは千雪に体を向け叫ぶ。


「千雪よ、話は飲み込めたか? もう時間がないのだ、戦う意志があるというなら御徒雅穂を持って戦え!!」

「くっ……」



 決断を迫られる千雪、切迫と焦燥が、彼女の焼ける瞳の色を急かし続ける。







 マニア城の長々と続く廊下を突き当たり、地下に伸びる階段を下ったすぐの木製の扉。

 コックリート打ちっぱなしの無機質な内装の部屋に唯一存在する鉄製の椅子に座る大男。



 ――人造人間、津屍壊貴怒(つしか かいきど)



 かみやふくべえがマニアのすいを集める事で、光エネルギーをアストラルパワーに変換する技術を創造した、しかし光エネルギーをアストラルパワーにする変換効率は非常にシビアで、自然界に存在する光エネルギーでは、壊貴怒の眠りを覚ますことは出来なかった。

 そこで、かみやふくべえは光エネルギーを操作するホーリーライトの使用者である姫奏に試練という形で壊貴怒を託さすことにした。

 壊貴怒をホーリーライトの光によって目覚めさせた時が、姫奏にとって免許皆伝となる。



「起きて、壊貴怒……ホーリーライト!!」

「……………………」

「まだ……わたしのホーリーライトのレベルでは起こせないの……ホーリーライト!! 魔力増加!!」


 2種類のスキルの複合技を試す、その結果僅かに反応する壊貴怒。


「……………………!」

「動いた……? あと少し……!! こうなったら……」


 Jobレベルは既に50の聖職者マスターに到達している姫奏だが、様々な敵との出会いからスキルポイントを使用せず保留していた。

 スキルポイントは一度振り分ければ、二度と別のスキルを再取得することは出来ない。

 通常マスターレベルに到達するのは成人になる時と同時期で、姫奏の年齢で50のスキルを完全設定することは勇気のいる決断となる。


「迷うことなんかない、わたしはこの子の為に生まれてきたんだから!!」


 姫奏のホーリーライトが25になった時、それがこのスキルの最大レベルであると、携帯型個人端末を通して通知される。


「ホーリーライトはこれ以上上げられないの……!?」


 jobスキルの中には最大レベルが決まっているものが存在する、ホーリーライトをこれ以上強化出来ないという精神的圧迫を感じる。

 しかし、携帯型個人端末に表示される、姫奏のスキルを視覚的に表したスキル一覧のホーリーライトの下にnew_skillの文字が浮かび上がる。


「これは……新しいスキル? ホーリーライトが最大レベルになったから……? new_skillオーラーティオ……」


 かみやふくべえが『ホーリーライトを最後まで信じて上げてきた姫奏さんには天啓の力が与えられますよ』といった台詞を思い出す。

 姫奏はオーラーティオのスキル説明を見た時、その言葉の意味を理解した。


「凄いスキルだ……」


 蓄積杖を握る手が、汗ばむ。

 姫奏は早速、そのスキルを取得し、効果を実演する。


「オーラーティオ!!」


 壊貴怒に光の烙印が浮かび上がる。


「ホーリーライト!!」

「……………………ォォォオオ!!!!」


 ホーリーライトの光を完全吸収し、全身が光に包まれ錆びついた肉体が動き始める。

 そして、電化製品を初めて起動したような事を言い始める壊貴怒。



「時刻設定ヲ、行ウ……今日ハ、何日ダ……?」

「7月24日だけど……(なんだこれ、時間かかりそう……)」

「やけホ先カあネふわい月め9ムあ……」

「……?」


 謎の機械音声で発言する壊貴怒、初期設定を行っているようだ。

 姫奏もどう対処すればいいのかわからず、焦る気持ちを置いて話を合わせている。


「お前の名前はなんだ……?」

「姫奏だけど……?」

「基本言語、マスター認証完了、姫奏。これからは、お前がマスターだ、直ぐにでも命令に答えよう」

「もういいの? ちゅきのお兄ちゃんがやってきて滅茶苦茶してるから急いで止めてきて!」

「了解した、任せておけ」


 そう言うと、壊貴怒の足の裏からロケットエンジンのようにエネルギーを噴出し壁を突き破って飛び出していった。


「…………もうちょっとあの子には常識教えていかないとダメかも……」


 真っ黒の煤だらけにされて取り残されてしまう姫奏であった。





「千雪よ! 御徒雅穂を持って戦うのだ!! この星を……なんだッ!!」


 怒号を上げるユウユの前に、爆発とともに突如現れる壊貴怒。

 登場早々ユウユの傀儡を殴り飛ばす。


「ォォッ!? 何だ貴様ッッ!!」


 地上に叩きつけられ、土煙を巻き上げながら地面を滑るユウユ、壊貴怒は追いかけ追撃の一撃を振りかぶるが、傀儡は白金の羽から光を逆噴射し恐ろしい推進力で高速回避する。

 その推進力を空中で更に噴射し、大きく空振りし隙だらけの壊貴怒にレイピアを突きつける。


「俺は、津屍壊貴怒、けてマニアに作られた人造人間だ!!」


 レイピアの先端を片腕で捌き、勢いのまま突進するユウユをカウンターで殴り付けようとするが、圧倒的リーチの差によって壊貴怒の攻撃が届くより先に傀儡の流線的な足が壊貴怒の脇腹を蹴り飛ばし今度は壊貴怒が勢い良く弾き飛ばされ地面を抉って行く。


「さしずめ、マニア城の傀儡か……いいだろう、その実力しかと確かめてやろう!!」


 ユウユの傀儡が夕焼けを背に飛翔し、10メートル程上空で留まり、白金の翼が6つに開いた。

 すると六翼からプラズマが発生し、明滅する光が集まりだした。


「貫け――光の槍よ!!」


 その高エネルギーレーザー光線の槍は、姫奏のホーリーライトから全ての慈悲を捨てた破壊のみを目的とした攻撃的なレーザービームであった。

 それは、体勢を崩したまま逃げられない壊貴怒に容赦なく殺到する。

 触れたものに対して一瞬にして炉心溶融を引き起こさせるような恐怖の一撃に、片腕を伸ばす壊貴怒。


「馬鹿め、血迷ったか……ッ!! なにっ!?」

「フッ……ごちそうさま」


 種類を問わず、光エネルギーを自らの力として吸収出来る壊貴怒にとって、レーザー兵器といえども、無関係に吸収することが出来るのであった。


「なるほどな、光線は無駄というわけか……だが!!」


 鋼鉄の天使が更なる狂気を宿し、光のオーラは濃く、密度を増し始める。

 生暖かい風が異質なる空間を吹き上げる。

 危険信号を感知し全身で警戒態勢に入る壊貴怒。


 先ほどは六方向に広げられた翼が12翼に大きく広げられ、轟々と激しく鳴る風に周囲の木々が軋み、ユウユの頭上にエネルギーが集まっていく。

 風力は加速し、その勢いに生身の人間たちは吸い寄せられるのを必死で抵抗する、大気の渦となり全てが舞い上がっていく。


「美競刃さんも、ちゅきさんも私の後ろへ……」


「これが、神より授かれし天人の力だ! 御徒原神我一刀流!! 火球雷覇!!」


 圧縮された光が周囲の熱を吸収し、物理的なエネルギー体に変化し、人間界の物理法則を遥かに超越した光球に変貌する。

 殺到する光球を両の腕を広げ、全身全霊で受け止める壊貴怒。

 受け止める一撃に更に力を深め、後ろに下げている左つま先がめり込んでいく。

 灼熱の抱擁が全身を焦がし、苦痛という警告音を上げボディーが歪んでいく。


「ぐあぁぁぁぁあ゛あぁぁ!!」

「壊貴怒!!」「壊貴怒くん!!」



 数分間に及ぶエネルギーの炸裂を受け、辛うじて踏みとどまった壊貴怒だったが、全ての力を使い果たし立ちながら意識が消失していった。


「……すまな、い……姫奏、全力を尽くしたが……」

「……さしずめ、人間界の神、けての作り上げた傀儡……という訳か……」


 天空で浮遊しながら、壊貴怒の姿を最後まで見下ろしていた御徒原ユウユ、一部の欠損も無く、火球雷覇を受けきった事に彼ながら称賛を讃えた。


 その一部始終を姫奏は見ていた。


「ちゅき!!」

「姫奏ちゃん!」

「壊貴怒……っ、ホーリーライト!!」


 壊貴怒に光エネルギーを補充するため、ホーリーライトの光を当てる姫奏。


(あの傀儡を動かす動力源として選ばれたというわけか、確かにあれだけ物を動かす力は奴にしか扱えないだろう)



 その姿を見つめるユウユの双眸の奥に、己と千雪の姿が重なり運命の巡り合わせを感じる。


「姫奏といったな、お前たちの頼みの綱である傀儡もその様だ、その程度の力でまだ神に挑むつもりか?」


 両翼を規則的に羽ばたかせるようにして空中に留まりユウユは高圧的に説いた。


「それマニアであるわたし達に言ってるの? 答えは言うまでもない!!」


 姫奏は一歩踏み込み、舞い上がる重厚なる天使を見上げ、鋭く言い放った。


「くくく、だが聖なる属性を持つこの傀儡に、お前の光の力は通用しないぞ?」

「わたしのホーリーライトは、誰にも負けない……あなたにだって届かせてみせる!! オーラーティオ!!」


 ホーリーライトの力を信じて祈り続けた姫奏に現れた新スキル、ユウユの傀儡上に光の烙印が浮かび上がる。

 謎の刻印を付けられ一瞬目を見開いた驚きの表情を見せるが、すぐに引き締まる。

 しかし、姫奏の次の攻撃によって、その顔は驚愕に歪む。


「ホーリーライト!! 速度増加!!」

「な……!! にぃッ!! 光が光を……貫いただと!?」

「姫奏ちゃんのホーリーライトが……お兄ちゃんにダメージを!?」


 聖属性である天使の傀儡の光耐性は100%あり本来同じ光属性のホーリーライトの攻撃は無効化されるべきだった、しかし姫奏の新スキルオーラーティオはその全てを零にする力がある。


「くく、なるほどな、お前の力、認めよう!! だが千雪よ、お前に無くこの姫奏という娘にあるもの、気づいているか?」

「……………」


 逆境に立ち向かい、不可能と言われる難敵を勇気によって乗り越えた姫奏を真のマニアと認め、戦える力を持ちながらも引き篭もる千雪を厳しく叱咤するユウユ。


「答えられないなら見せてやろう、お前の目で見極めろ。いくぞ姫奏!!」


 先ほどの壊貴怒に放った力をレイピアに集中するユウユ、甲高い炸裂音と共に火花が散り、光すら歪むパワーが蓄えられていくのがわかる。

 力を開放し爆ぜるなら、この一帯は一瞬にして焦土と変わるだろう。

 だが、姫奏も負けていなかった。

 姫奏は、この状況で瞼を閉じ、精神を集中させていた。


(わたしにだって出来るはず……)


 姫奏は、今までホーリーライトの光を常識の中で昇華し、ここまで育ててきた。が、それは知識があれば誰でも出来る技であり、マニアの技では無かった。

 ホーリーフレームによって物理的に包まれるホーリーライトの光や、ユウユが壊貴怒に吸収できない光の光球を創りだすといった物理法則を超えた未知の世界。

 壊貴怒を覚醒させたことでホーリーライトを極め、マニアとして認められた今、出来ること。


「光を掴むんだ!! 姫奏!!」


 力を込め、重い瞼を開いた時、ホーリーライトは光剣となり出現した。


「これは……」


 視界に入ったソレは、姫奏のホーリーライトの光を究極に圧縮して出来た剣。

 ユウユの光剣と姫奏の光剣が交わる時、閃光が周囲を包み込み(さなが)ら光の洪水となった。




『―――――――――――――!!!!!!!!』




 光に埋没し全てを飲み込む純白の世界、ここが何なのか、自分が生きているのかどうかも錯乱する程の幻想的な空間に包まれ、二人は剣と視線を交えた状態で膠着状態になった。

 やがて、光は落ち着き勢いを弱めていくと、ユウユは傀儡から降りて姫奏達に向かい喋り出した。


「マニア共の実力は分かった、そしてお前たちの戦う強い意志も……だが、千雪よ、お前はこの戦いを見て奮い起こす何かを感じたはずだ、友人の命を掛けた勇気……次はお前が友の為に再現しなければならないのだぞ……」

「……………………」


 ユウユの忠言が心に差し掛かる千雪だった。

 剣を交えた姫奏は、なんとなくユウユは千雪を心配してやってきた人なんだろうと思った。


「今日のところは引き下がるとしよう、そしてマニア城の者達よ、無礼を詫びよう……、お前たちなら亡魔獣とも戦えるだろう、千雪が迷惑をかけるが今はかくまってあげて欲しい……ではさらばだ」


 ユウユは再び天使の傀儡に乗り込み2.3回羽ばたいて天に舞い上がって消えていった。


(ついに亡魔獣が目覚めようとしている……姫奏さんは十分に強くなれた、この世界ならば……勝ち越すことが出来るだろうか……)

この辺り、ベルゼリオスの元ネタって感じ

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