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幕間:上下さんと綿辺くん

 ◆町中のゲームセンターにて 



 上下がパンツ売りの前に時間つぶしでゲームセンターで遊んでいたとき。

 喧嘩が起っていた。

 どうやら格闘ゲームで負けた方がいちゃもんをつけているようだった。

 たまたま側にいた上下がつい一言言ってしまう。

「ゲームに負けただけでムキになっちゃって情けない男……」

 それを聞いた男が上下に怒りの方向を変えた。


「げ…地獄耳……」

「なんとかかんとかすところげろよん!」

 怒りで何を言っているのか分からないが凄く興奮して今にも殴りかかってきそうだ。


 そこに――喧嘩を売られていたゲームの勝者であろう少年が男に体当たりした


「やめろっ!」

「ぴっころきゃったらぴっころきゃー」(倒れている時にでた奇声)

 不意を突かれて尻もちをつかされ、負けた男は倒れながらも怒声をあげ続けている。

 すぐに立ち上がってくる前に少年は上下の手を引いて逃げだした――。

 負けたほうの男が追いかけてきたが、運悪くゲームセンターのスタッフにつかまってしまったらしい、助かった。


「ここまで来れば……ごめんね……なんか余計な事言って邪魔しちゃったかな……?」

「ううん……こっちこそ……助けられたのは俺のほうだよ…あのままだと殴られてた(泣)」

「そうかな……結構勇気あるっぽいし、なんとかなったんじゃ……って泣いてる……」

「うぐっ……うぐ……安心してきたらなみだでてきちゃっだぁ~……」

「あはは……」


 ◆ゲームセンターから離れた公園


「おちついた……?」

「うん…あ…自己紹介するよ…俺は綿(めん)(なべ)同居人からはデブって言われてるよ」


 綿辺くんは年齢は上下より年上の高校生の少年だった、ちびでぶだったので同級生位だと思った上下は驚いてしまった。


「あ…あたしは上下ハル、デブって酷いね……(デブだけど)ゲーム強いんだね、あのやってたゲーム結構難しいんじゃなかったっけ?」

「うん!上下さんよく知ってるね、あれは30年前からある古い対戦格闘ゲーム機で、操作性にクセがあって初心者にはまったくコンボがつなげれないって言われてるんだ。けど……あのゲームうまくコンボをつなげた時の打撃音がすごくかっこよくてね…俺は気に入っているんだ~それでさっきの奴はゲームは強ければいいんだそんなコダワリ意味がないとか言い出してさ~それでかっこいい打撃音で倒したら今度はそんなふざけた闘い方で俺が負けるはずねーとかいいだして切れてさ~……それで」


「あ~はいはい……わかったよ~そうなんだー」

「あ……俺好きな事になるとつい夢中で語りだしちゃって、ごめん……」

「あ……いや いいんだよーそれより、ゲームの打撃音?そんなかっこいいんだ~(適当に受け流し~…」

「超かっこいいよ!! 聞いてみる?!」

「え……あーうん(ヤバっスイッチ入れちゃった?)」

「さっきのゲーセンは…しばらく寄れないよね…隣の駅のゲーセンまで行ける?」

「え? このへんにまだなかったっけ?」

「隣駅のゲーセン最近機械調整してスピーカーが新しくなっているんだ♪ めっちゃいい音でるんだよ!」

「あー…そなんだー(パンツの予約客何時に待ち合わせだったっけなー…」

「いこいこー」


 うきうきの綿辺に連れられていく上下 到着まではめんどくさくゲームの音に何の興味もなかったのだが、いざゲーセンに到着しコインをいれCPU相手に華麗にコンボを奏でていく綿辺に今は心を掴まれていた。


 彼がゲーム上で作り上げた音は、音楽を趣味とする上下でなくとも本来ならば魅了するレベルのハーモニーだった。

 それほどに芸術的で・・素晴らしいものだった。


「どう……?上下さんかっこいいで……しょ……」

 上下を見た綿辺は驚いた、上下が泣いていたのだ……その涙は感動から来るものだと分かった。

「すごい……これだけの限られた音で……なんでこんなすごい音楽が奏でられるの……」

「う…上下さん」ドキドキ


 綿辺にとっても初めて自分の趣味を真剣に聞いて理解してくれる少女の涙にもらい泣きしてしまう。



「ほんとすごいね……感動して泣いちゃった(笑)」

「俺のプレイで感動してくれたの上下さんが初めてだよ…」

「うそ~っ! めっちゃすごいじゃん! だれもわかんないの?!」

「ははは……かなりマニアックだしね」

「私も音楽やってるから凄いのわかるのかな……?」

「上下さんも音楽を?」

「うん、吹奏楽でサックスしてるんだ」

「そうなんだ」

「いまは学校の楽器でやってるけど、自分のサックスを手に入れて、いつでも好きなだけ演奏したい……」


「うん……欲しいのあるの?」

「あ……ちょうどそこの楽器屋で売ってるんだみてこ?」

「うん!」

「これね……」

「うわ……高い……30万……」

「これ買うためにいまお金貯めてるところ」

「へー、えらいね!」

「えへへ……というわけで……そろそろ稼ぎに行く時間なので今日はお別れね」

「うん……頑張ってきてね!」

「じゃーねー」



 ◆



 上下が去ったあと……。


(上下さん……初めて感動してくれたな…もっとかっこいいプレイで感動させてあげたいな…もうすこし練習してくかな)


 綿辺もまたゲーセンにもどった。



 ゲーセンにて


「やべ……夢中になってかなりやりこんじゃった…親に怒られちゃう」

(あれ…? あれ……上下さん……? ってえ?! パンツ……ぬいで……男に……あげ…た……? お金……!? え?!)

 上下がパンツを売っているところを目撃してしまう。


「今日はもう遅いからすぐ脱いであげるね…5千円まいどー」

「はぁはぁ……あってすぐに……即生脱ぎしてくれるなんて……はぁはぁ……」

 ほかほかパンツをわたしさっていく上下に興奮が抑えられない男。


「いま……スカートのなかは…はぁはぁ」

 上下に襲いかかりスカートに手を入れる

「ちょ……どこさわってるのよ」

「はぁはぁ……中等部女の子だ……はぁはぁ」

「やめ…て……」

「やめろー」

(蹴りっ!)

「ふぁふ~ん! びくんびくん……」

 興奮しすぎたせいで綿辺の蹴りで身動きが取れなくなってしまう男。


「上下さん走るよ!」

「あ……うん」

 夜の公園

「あ……ありがと……また助けてくれて」

 ノーパンでもじもじする上下。

「……上下さん……あれなにやってたの……」

 上下の思わぬ姿を目撃し怒りが抑えられない綿辺。


「あ……いや……パンツ売って……」

「上下さんのお金を貯めてるってこんなことしてお金貯めてるの!?」

「うん……」


「なにをやってるんだよ…こんな危険なこと…今のやつみたいに襲われるのあたりまえだよ! そんなこともわからないのかよ!」

「わ……わかってるよ……けど……楽器買うにはこれしか方法がなくて……」

「なんでだよ! こんな方法で稼いだお金で買ってそれでいいのかよ!」

「……あんたに何が解るのよ!あんたの価値観で物を言わないでよ!」

「ぐ……な……(何が価値観だよ……そんなの……」


「私は今すぐにでもあの楽器が買いたいの! 学校のサックスじゃだめなの!」

「な……なにが駄目なんだよ…今すぐ買わなくても……高校になってからでも……大人になってからでもいいじゃないか……!」

「今すぐ……あの楽器で…やらなきゃ……」

 泣きながら綿辺を睨み付ける上下。そして走り出して去っていく。

「あっ」

 思わぬ迫力に追いかけれず立ち止まる綿辺。


「くそっ……!」

 ガシッ! と遊具にやつあたりする綿辺。


 ◆


 次の日


「あのちびデブ男めぇ~……」

 イライラしながら楽器屋のショーウインドウの中に飾られる目当ての楽器をみにいく上下だが……。

「あれ……無くなってる……」

「そのサックスならさきほど買われて行きましたよ~購入予定でしたら取り寄せできますけど…生産注文なので年内には難しいです……」

「え……そうなんですか……」

 傷心のまま公園で座り込む上下。

「わたし……なんのために……」

 そこに……。

「上下さん……」

「!?な…あんな何しに……って……それ……」

 ケースの中に上下がほしがっていた楽器があった。


「楽器は……これで手にいれただろ……もうあんな事するの止めてくれないか……」

「……な…あんた……なんで!」

「楽器はあげるよ……だからもうあんな仕事しないで欲しいんだ」

「どうやって楽器を買ったの……?」

「あ……ゲームの優勝賞金とか……だよ」

「どうして……私なんかに……」

「それは……」


 それは…?

「上下さんが……俺のプレイを初めてまじめに聞いてくれて…感動してくれたから…。次は…上下さんが……演奏して俺を……感動させてくれないか……! って……いいたかったんだっ! う…う……」

「な…ないた……」



「……けど……私受け取れないよ……それに……私は……自分の力で……稼いだお金で……手に入れたかったんだ……」

「上下さん……」


「……」


「上下さん……いまどれくらいお金たまっていたの……?」

「え……? まだ1万……くらい……かな」

「じゃあ……差額分……これから……俺が……君のパンツを買い続けるからっ!! だからもう他のやつなんかに売るのはやめるんだっ!!」

 その声は公園内に響き渡った。

 上下の心にも響いた。

「うん……わかったよ///」

 こうして、上下と綿辺の青春は始まるのであった。

 おわり

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