表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

外の世界 ―夜―

 日が沈み、星々が瞬く夜…人々が寝静まり昼間とは違い強力なモンスターが目を覚ます。姫奏はそれを待っていた、まだ中等部の姫奏は遠くまで狩りに出ることが出来ない。

 狩りで行ける範囲は決められているのだ。もちろんルールを無視して出て行くこともできる、姫奏は滅茶苦茶やる時はやるが、基本的にはルールを守る真面目な子なのだ。


「さすがにちゅきにこんな危険を付き合わせる訳にはいかない……この時間は私一人で狩る……」


 街を離れるに連れて、昼間戦った敵もまた別の表情を見せる。


(プリモちゃんか……)


 昼間は出てきた瞬間に死んでしまうギャグ要因だが、夜は保存状態が良いのか、近づくまで崩壊はしない。


(夜は……すぐに死なないんだ……)


 だが、油断した姫奏の目の前で自爆するプリモちゃん。

「うわっ……汚いっ」


 結局自滅してしまうモンスタープリモちゃんだが、狙いは腐乱した肉汁の飛沫が飛び散る事で起こる【精神的ダメージ】なのだ。


「これから狩りに行こうとしてたのに……ひどい……」


 洋服にプリモちゃんの腐乱した汁がついて染みになりそうだ、ショックで泣きそうになっている。

 この世界における精神ダメージは魔法を扱う魔力値に影響を及ぼす。魔法をメインに扱う姫奏には普通に殴られるよりイタイのだった。


「帰って着替えてたら、また門番のおじさんがうるさそうだし…このまま今日は続けよ…もうプリモちゃんだけは出現したら速攻で倒す!」


 外に出るときに出入口を守る門番に「子供がこんな時間から出て行くなんておじさん許さないよ!」と怒られて対応にだいぶ手間取ってしまったのだ。



 ◆



 鬱蒼とした森の中までやってきた姫奏、月明かりも届かない闇の世界だ。

「ホーリライト……」

 ポウッ……と光の粒子が集まり姫奏の周囲を照らす。

 〈ホーリーライト〉の中に眠る可能性…光の粒子を研究し姫奏はホーリーライトを空中に留める技を身につけていた、もちろんこの技術は公には知られていないスキル、マニアとして目覚め始めた姫奏が初めて身につけたホーリーライトの応用技である。

 この光を頼りに敵を探す、そしてこの光に寄って来た敵を倒す両方の狙いがあった。

「これで、バナナと焼酎と砂糖を混ぜた液体があればカブトムシいっぱいとれるきがする、ヘラクレスよりネプチューンオオツノカブトのほうがわたしは好き」


 ホーリーライトの光に虫が寄ってくるので、ついでに珍しいカブトムシも見つけたい姫奏さんだった。

 だが、やって来たのはモンスターだった。昼間と違い夜はモンスターとの遭遇率がかなり高いらしい。


「独特の息遣い……デュロックか」


 〈デュロック〉は、豚人間型モンスターでオークとも呼ばれている。牙と豚のような鼻を持っていて、人間よりも巨体で怪力の怪物だ。

 棍棒や、斧をもつデュロックが、振り回しながら姫奏を襲う。


『グォォォォ!!!??』


 その攻撃を姫奏は簡単に回避していた。

 背後から不意打ちをしたはずなのに攻撃を交わされ、ショックをうけるデュロック。


『ナゼ……カワセタ……?』 『ウシロカラコウゲキシタノニ……』


 ちなみにデュロックの言葉は人間には分からないデュロック独自の言語なので姫奏にはひたすら『グォォ!』『ギャァァ』などと聞こえている。


「速度増加の強化魔法だよ」

 〈速度増加〉の魔法によって素早さが上がっていたのだ。支援職である姫奏は本来味方のために使う支援系の魔法を全て自己強化にまわしていた。

 支援系魔法には〈速度増加〉の他に〈魔力値増幅〉〈バリア状態〉などがある。


「さて……数も強さも丁度いいモンスターだし…ちょっと試しておこうかな……」

 〈ホーリーライト〉などの魔法を使うために必要な十字架の装飾の付いた魔法の杖をしまい、拳を構える姫奏。

 格闘戦でどれくらい自分がやれるのか実験をするつもりである。

 デュロックは弱いモンスターだが、それでも狩りが初めての完璧初心者が一人でこの様なことをするのは自殺行為である。


(自分の今の強さを知りたい……そのためには実測値を正確に知りたい)


 ●デュロックの数…5体!! 棍棒タイプ3…斧タイプ1…弓タイプ1


 囲まれたらあっという間に蹂躙される可能性があるが、姫奏は試したかった。

 まずは、自己強化でどれだけ自分が攻撃をかわせるのか……。

『グォォ!』

 デュロックが飛びかかってきた。姫奏はその動きにとっさに反応し、ヒラヒラと攻撃を受け流す……が、戦い慣れしていないまだまだ普通の少女である姫奏、しだいに動きに無駄ができる。

「んっ……やられた」

 攻撃をうけるが、バリアの魔法を予めつかっていたのでダメージはない。


「1回……」

 弓を使うデュロックが姫奏の心臓を狙う、がバリアのおかげでダメージは無い。

「2回……」


 攻撃を交わすだけでなく、近くにいるデュロックを殴って自分の力をみる……。


『グフフ……ナンダソノパンチハ』

「ダメージなし……か~、まぁそんなもんかなぁ~」

 肉体を強化しているとはいえ、元々力を鍛えていない姫奏ではデュロックの分厚い筋肉にはダメージは与えられないようだ。


 ――フルスイングで斧を振り回してきたデュロックの攻撃にバリアが破壊された。


「おっとぉ……バリアの耐久力は3回……か、十分かな」

 杖を取り出し、十字架の装飾が輝き出す。


「次はわたしのホーリーライトの威力試させてもらうね……ホーリーライト!」

 聖なる光がデュロックを包む。


『グォォ?! ナンダコレハ』


「1回め……もういっかいホーリーライト!」

 再び光がデュロックを包む。


『グゥゥ……ヤラレター』


「ホーリーライト2回か」

 斧タイプのデュロックが力尽き倒れた。

 自分の攻撃回数がどれくらいで倒せるのかの実験、〈ホーリーライト〉一つしか“武器”がない姫奏にとって、確殺数を把握することは重要なのだ。


「デュロック一体で……約3秒……くらいかなぁ……」

『グォォ? オノガヤラレタゾ』

 仲間を倒され怒り始めるデュロックがまとめて飛びかかってくる。


「お……まとめてきた。じゃあ……次はどれくらい範囲を拡げれるか試させてもらおうかな~」

 光の粒子を調整し、範囲をひろげる。だいたい範囲4~5メートル位の光の円が出来上がる。


「ホーリーライト!」(1回……まだまだ余裕でせまってくる……)

 怯まず棍棒を振りかざすデュロック。


「ホーリーライト!」(2回……もうすこしかな?)

 今の攻撃でだいぶ弱らせることが出来たが、まだ足りない

「ホーリーライト!」(3回……おわりっと♪)

 棍棒タイプ3体をまとめて倒すことが出来た。


(範囲を広めると、それだけ粒子の数が拡散し威力が落ちるのかも、まだ実用的でないかな)


 残りは、弓タイプ1体……

『グ……ヨクモッ!』

 残り一体で、姫奏はまた一つの試してみたいことが頭に思い浮かんだ。


『シネェ!』

 弓デュロックが姫奏に岩石で出来た矢を打ち付ける。姫奏なら余裕で回避出来る距離だが、なんとこの攻撃を避けずに受けた姫奏だった。


「ツッ――……!」

 姫奏の脇腹にデュロックの矢が突き刺さる。

 突然人間が攻撃を止め、無抵抗になった、デュロックは好機と見て一気に矢を連射する。

『シネッ! シネッ! ガハハハ!』

「くッ……(あと20くらいかな)」

 ザクザクと弓を受けながらカウントダウンをしていく姫奏、自分がどれ位攻撃を受けて倒されるのか計っているのだ。

「ヒール!」

 ダメージを受けつつ、ヒールの回復量も測る。一人で戦闘していくにあたって、回復と攻撃を全て自己管理していく必要があるからしていることだが、はっきり言って異常である。

 相手の攻撃と、自分のヒールの回復量のばらつきを何度も繰り返し自らの身体で計算していく。

 また、HPという数値により自分がどれだけのダメージを受ければ死ぬのか数値化されてはいるが、姫奏はそれを信用していなかった。

 ダメージを受けることでの“痛み”その痛みによって生じる様々な現象を身体で覚える。

 マニアとして、自らが納得するまでとことん追求していく……攻撃をする側のデュロックの方が姫奏の狂気に怯えだしていた。


『グォォォ! コレデトドメダァァ!』

 渾身の弓引きで姫奏に止めを刺そうと弓を放つデュロック。

「そろそろいいか……」

 光の粒子を限りなく圧縮し放ってみる……。

「ホーリーライト!!」

 弓のデュロックが、攻撃を放ち姫奏に届く前に、光速の矢はデュロックを貫いた。

「これなら1回か……」


 光の粒子を深く把握することで、ホーリーライトの威力を調整したり、範囲変えたり出来るようになっていた。だが、実戦でどれだけ使えるのかを試しておくことに意味がある。


「うん、やっぱり外の世界は面白いかも」

 今回の実験は概ね満足行く結果だったようだ。


「けど、まだまだ威力が足りないんだ…多分このへんの敵は範囲を広げた状態のホーリーライトでも一撃で倒せれるようにならないと話しにならない気がする……」


 (粒子量だ……レベルをあげると、自分で作り出せる粒子の数が増えるんだ。だからホーリーライトはレベルが上がると明るくなるだけの魔法って言われていたのか……これからは、レベルを上げて行こう……)


「もっとモンスターと戦いたいなぁ~」


 ――そう思っていた姫奏の耳に、怪しげな戦太鼓とともに歌が聞こえてくるのだった。


『ドンドンドッチャ♪ ドンドンドッチャ♪ ドンドンドッチャ・レ♪ ドンドンドッチャ・レ♪』


「この歌は……デュロックが村ごとで戦うときの戦歌だ」

 上級冒険者でも、この歌を一人で聞いたら逃げて仲間を集めると言われる程の戦慄の宴を開幕するという合図。


「面白くなってきたかも、今日でホーリーライトの力をどれだけ育てられるかな~」


 弱いデュロックでも(おさ)クラスならば格段に強くなると聞いたことがある姫奏はこの歌が聞こえたということは必ず長もいると確信した。


 姫奏はその後朝まで一人でデュロックの村で狩りを続けレベルは急速に成長していた。アドレナリンが止まらず朝まで眠らずにレベルアップを続ける。


 睡眠で得られるものは体力の他に魔力を扱う精神力の回復につながる。

 ホーリーライトはもともと魔力消費が少ないので、寝て得られる恩恵は体力の回復である。姫奏はヒールが使えるので、体力の回復は自己回復できる。

 もともと、食欲などの人間が持つと言われる三大欲が姫奏には薄かったせいもあり、姫奏が「じゃあ寝なくても大丈夫だ」と思いつくのはそう長くなかった。

 その後、姫奏は人々が寝ている時間寝ずに狩りを続けることが日課となった。

 自分のレベルが明らかに他の同級生と開きがあると感じる日はそう遠くなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ