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魔王様は落第寸前!~本当は俺が魔王だけど青春学園生活のためには正体を隠すしかない~  作者: 深水映
4.魔王様と氷の女王様

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24.魔王様はお金が欲しい

 「ヒールします。一回100ゴールドでーす。いかがですかー」


 神殿に集まった人の周りをウロウロする。だが集まった人たちは俺に見向きもしない。


「こんなの儲かるのかな。レノルの奴、適当言ってるんじゃねーだろうな」


 ブツブツ言いながら「ヒールします」という手書きの看板をチラリと見る。


 そう、武器屋で見つけた邪王神滅剣を何としてでも手に入れようと思った俺は、以前レノルに聞いた方法で、こっそりとアルバイトをすることにしたのだ。


 リスクはあるが、それもこれも邪王神滅剣を手に入れるため。仕方のないことだ。


 だが、看板をかかげ数十分教会の前をウロウロするも、中々客は現れない。


「はぁ。今日はこの辺でやめるかぁ」


 諦めて帰ろうとした所へ、不意に若い男から声をかけられる。


「おーい、俺にヒールしてくれ。こんなに混んでるとは思わなかった」


 足に包帯を巻いた男が手を挙げて俺を呼ぶ。やった。いよいよ最初の客だ。


「いいですよ」


 男の横にしゃがみこむ。傷の様子を見てみると、血はかなり出ているが、歩けるところを見ると骨は折れていないのかもしれない。これなら簡単だ。


「ヒール」


 暖かな光が男の足を包む。

 傷口はみるみるうちに塞がっていった。


「おお、ありがとよ!」


 男が大声でお礼を言うと、さらに今度は年配の女性がやってきた。


「この子が手を火傷して」


 子供の火傷を治していると、その後ろにも人が数人が並び始めた。


 初めは半信半疑だった患者たちが、俺が男と子供、立て続けに治している所を見て決心したらしい。


 教会は薬草での治療と魔法での治療を併用しているのに対し、俺が使うのはヒールだけなので怪我しか治せないが、それでも立て続けに六人の治療を済ませる。


「ふぅ、少し疲れたな」


 六人目の治療終え汗を拭う。

 と、患者のおばちゃんが俺の方を指さした。


「あら、あなた投影機が光ってるわよ」


 慌てて首からぶら下げた投影機に手をかざす。光が大きくなり、半透明の人口精霊・アレクサが現れた。


「おめでとうございますー。レベル4になりましたー」


「えっ、レベルアップした?」


 俺が驚いていると、おばちゃんが拍手をしてお祝いしてくれる。


「あらまぁ。おめでとう!」


「おめでとう、飴ちゃん食べる?」

「あらぁ、おめでたいわね!」

「レベルアップ、おめでとう!」


 ワラワラとおばちゃんたちがやってきてお祝いしてくれる。


「ありがとうございます」


 俺は呆気にとられながら大量のお菓子を受け取った。


 でもなぜ敵を倒したり戦ったりしていないのにレベルが上がったのだろう。


 俺はしばらくその場で考え込んだ、


「……ひょっとしたら、魔法を限界まで使ったからか?」


 俺は魔法化学の授業で習ったことを思い出した。


 教科書には、MPは、魔力総量と魔力経路の耐久値によって導き出されていると書かれてあった。


 魔力総量は、その名の通り魔力の総量で、よく水の入ったバケツに例えられている。

 つまりどれくらいバケツに水が入るか、バケツの容量が魔力総量という訳だ。


 対して魔力経路はバケツから水を組み上げるホースやポンプに例えられることが多い。 


 俺は今まで、復活したばかりで、この魔力経路が不安定だった。


 そのため例え魔力の総量が多くても、魔力を上手く魔法に変えられなくて魔法の威力も弱いし連続して魔法を使えなかったのだ。


 それが限界まで魔法を使うことで魔力経路が強くなり、その結果MPも増えレベルアップした、ということなのだろう。


「何だ、このアルバイト、良いことずくめじゃないか」


 レベルも上がってお金も稼げるなんて、最高だな。流石レノルの考えた作戦。


 結局、この日は10人を治療して1000ゴールド稼ぐことができた。

 このペースで行けば一ヶ月後には3万ゴールド溜まるだろう。


 頭の中で計算をし、ニヤニヤする。


 よし決めた。俺はこれから毎日このアルバイトをするぞ。





「ふう、やっと授業が終わったわね」


 ルリハが伸びをする。


 模擬ダンジョンが使えなくなってからというもの、レベル10以上のものは外のクエストを受けに、そして俺やルリハのようにレベル10に満たない者は座学の補習を受けさせられていた。


「疲れたな」


 俺も真似して伸びをすると、バキボキと肩がなった。一日に何時間も座学を受けるというのも中々に疲れる。


 だが今の俺には生きる希望があった。


 授業が終わると、急いで鞄に教科書を詰める。


「どうしたの、そんなに急いで」


 ルリハがビックリしたように俺を見上げる。


「うん、ちょっと行くところがあって。じゃあね、ルリハ」


 ルリハには悪いけど、こんな所で授業を受けている場合じゃない。バイトをして、早くお金を貯めて、俺の相棒、邪王神滅剣を手に入れなくては!


「あ、ちょっと!」


 急いで教室を飛び出し生徒玄関口へと向かう。


 空き教室の前を通り過ぎると、生徒たちが集まっているのが見えた。


 妙な予感はしたのだが、急いでいたので気にせず通り過ぎようとすると、不意に怒鳴り声が聞こえてビクリとする。


「てめー、こんなはした金じゃ足りねーって言ってんだろ!」

「もっと金を持って来いっつっただろー!?」


 ……何だかヤバくないか、これ。


 ひょいと教室を覗きこんでみると、一人の気弱そうな男子生徒を四人の男達が囲んでいる。


 国で最難関のエリート校のはずなのに、カツアゲをするような不良がいるなんて驚きだ。


 どうする? 先生を呼んだ方がいいかしら。それとも――


 戸惑っていると、こんな声が聞こえてきた。


「こんなんじゃ、魔王様の復活資金には全然足りねーんだよ!」


 ……ひょっとしたら、こいつらが「新魔王軍」とかいう魔王崇拝者なのか?


 唖然としていると、教室ではいつの間にか殴り合いの喧嘩が始まってしまった。


 やばい。


 ここはやはり先生に……いや、生徒会か!?


「こらーっ、貴様ら何をしている!」


 騒ぎを聞きつけたのか、他の生徒たちの通報があったのか、生徒会長と副会長、カナリスの三人がやってくる。


「やべっ、逃げろ!」


 不良たちのうちの一人が逃げ出そうとする。


「はっ!」


 カナリスは不良の腕をつかみ足を引っ掛けると、地面に投げ飛ばした。


「く、クソっ!」


「だあっ!」


 副会長も、もう一人の不良の腹に突きを食らわせる。


「フン」


 最後に生徒会長が杖を振ると、残りの二人がカチンコチンに凍りついた。

 

 こうして、あっという間にカツアゲに喧嘩騒ぎとやりたい放題だった不良たちは鎮圧されたのであった。


 良かった。どうやら無事に事態は収まったようだ。


 俺がその場から去ろうとすると、バチリと生徒会長と目が合う。


 ヤバい。


「おい、お前――」


 生徒会長が何か言いかける。


 だが俺は、反射的にその場から逃げ出した。こんな事をしている場合じゃない。


 俺は金を稼がなくちゃいけないんだ!

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