2
岡本先生は生物の先生であり、進路指導の先生でもある。そのため、俺は進路指導の部屋に案内された。その後、先生の口が開いた。
「なぁ、黒瀬。なんで私がお前に話があるかわかるか?」
「いや、わかんないです。」
「なぁ、お前一年間の抱負という言葉の意味がわかって書いたよな?」
岡本先生は、前々から美人で有名だからこちらを見られるとドキッとするのだが、先生は怖いことでも有名であったから今は違う意味でドキッとする。
「え、ええ、知ってますとも。抱負とは強い希望や意思は感じられるものの、決めたことを達成するために実際に行動を含むとはかぎらないという意味ですよね。」
「ああ、事細かな説明ご苦労様だ。だが、そこまで抱負という言葉の意味を理解しているのならば何故君の提出したプリントにはその言葉の意味とかけ離れた文章が書かれているんだ?」
「いやこれは青春が如何に愚かなものか説明するためでして…」
否、面白半分で書いたものある
「ほぉ、それの何処が抱負だというんだい?」
パキッパキッ
その、先生の小さな手から(俺から見たらだが)恐ろしい威嚇音が鳴った。
「ひっ」
俺は、自分でも聞いたことの無い声を思わず出してしまった。
「お前、何か今までの高校生活であったのか?困っていることがあったら言ってみろ。」
「い、いえそんなことはないですよ?いたって普通の男子高校生として過ごせています。」
「はぁ、君の一年の時の担任から君は少し変わっているとは聞いていたがここまでとはな」
「でも、そこまで今回俺悪いことしてなくないですか?先生の押し付けもいいところだと…」
「何?何か言ったか?」
そういうと、先生の目は鋭くなりギロッと俺の目を見つめる。
「い、いえセンセイハキレイダナッテイッタダケデスヨHAHAHA」
「そ、そうか///」
いや、照れるなよ!何故そこで照れるんだ!?
「ごほんっ、まぁとりあえずこのプリントは書き直しだ。わかったね」
それでも、俺は一応人生で一番元気な時期の真っ最中だ。少しぐらい抵抗してやろうと思った。しかも俺には少しぐらいプライドがあった。
「返事は?」
「……」
時間が経つにつれ先生の目つきが鋭くなっていく。
「んー?どうした?返事がないぞ?」
「……いや自分はですね」
反抗しようと伏せていた顔を上げると、般若。そこに般若がいた。
「おぉ、そうか。そうか。じゃあ奉仕作業もしたいの……」
「はいっ!!書き直しますっ!!」
即答だった。自分にプライドなどなかった。
そのまま、俺はプリントをインターネットのコピペで書いていた。プリントが徐々に埋まっていくごとに日は少しずつ沈み始めていた。
そして、とうとうプリントを全て埋めることができた。
「先生、出来ました。」「どれ、…うん。今日は帰ってよろしい。また、明日元気に登校してこい。さようなら。」「ありがとうございました。さようなら、…失礼しました。」
そういって進路指導部の部屋を後にした。
あたりは既に綺麗な茜色が空を埋め尽くし普段の学校での下校時間もとうに過ぎ6:15に差し掛かろうとしていた。
「あっ!!」
指導室に自分の抱負のためのコピペ作業で使っていた携帯を置き忘れていたことを突然下駄箱で思い出し進路指導室に急いで戻った。
だが、何故いないんだ。
それが進路指導室前に着いた時の俺の最初の感想である。
中はまだ電気がついているが鍵がかかっていたので何処かに出かけているのだろう。
しかも、最後までいたのは岡本先生だったので鍵は恐らく先生が今持っているのだろう。
くそっ俺のゲームが遠のいていく…何処にいるんだろうそう思いつつ歩いていると「咲森、だからだなぁ…」少し近くで先生の話し声が聞こえた。
ここは二階の階段近くなので恐らく下の階だろう。
恐らく鍵を持っているのは最後まで自分のために待ってくれていた岡本先生なので部屋を開けてもらおうと思い急ぎ足で階段を降りようとした。
「先生、すい…」
キュッ階段を踏み間違えてしまった俺はそのまま尻餅をついた状態で階段を降りた
「うわっ!?うわっ!?」
ガタガタガタッ
目の前にちょうど先生と話していた生徒と目があってしまう。
クスッその女子生徒は思わず笑ってしまっいて、俺はそのとても可愛らしい笑い方で見惚れてしまった。
「いてて」
痛みを堪えつつ立ち上がり
「よいしょっと、あの先生進路指導室に携帯を忘れてしまって、部屋を開けてくれないでしょうか?」
だが、先生は答えない。
なぜなら、何故か女子生徒を見て先生の顔は一瞬のうちに驚いた顔に様変わりして表情が固まっている
「あ、あの先生?」
「はっ!?」
先生は女子生徒を見てぼーっとしていたのかもう一度の声掛けのおかげで正気を取り戻した。
「黒崎、」
「何ですか?」
「お前今から、時間あるか?」
「えっ何でですか!?」
「…進路指導室は開けてやるから、話があるんだ。」
「いや今日は時間が…」
「じゃあ、明日はどうだ?」
「今のところは大丈夫ですけど…」
「よし、じゃあ明日の放課後に進路指導室で」
半ば強引に予定を決められその後、携帯を取り戻して念願のゲームを買いに行った。