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07話『為替とハンターランク』


「あの、ところで」

「あぁ、はい。なんですか?」


「これってお金の話から脱線してない?」

「え? あっ……」


 いかんいかん。どうも考えに熱中すると余計なことまで考えてしまう。

 紙とペンは欲しいが、節約も大事だし……そのためにはここの魔石の値段設定については知っておかなくては。


「じゃあ話を戻すけど、魔石には大きさに違いがあり、大きいほど値段が高い。そこまでは分かりました。ですが、あの食堂のように数を固定しておく利点は何でしょうか?」


「ええっと、さっきも言ったと思うけど大きな魔石を手に入れるには強いエモノを狩らないといけない。

 でも……例えば、だけど狩人(ハンター)として生きていこうって思ってる人がいたけどその人が森で薬草を採ったり、弱いエモノしかとれないとしたらどうなると思う?」


「どうなるって……そうなると手に入る魔石は小さくなるわけで支払われる報酬が極端に減ることになりますよね」

「うん、だから数を固定しておくことでそういう人達も落ち着いて買い物ができるようになるってわけ」


 なるほど……紙幣や硬貨を利用した制度が根付いていない故の考え方というわけか。

 強い者たちは大きな魔石を利用することで効率よく買い物が出来て、逆に弱い者たちは小さな魔石を指定数用意することで買い物ができると。

 決められた個数のみで許されるのは狩人(ハンター)として弱い者たちを助けるためでもあるってわけだ。


「ん? あれ、でもそうなると数を指定している店には小さな魔石が多く集まることになるから、その店が成り立たなくなる可能性とかありませんか?」


「あぁその辺は大丈夫だと思うよ。そういう店って基本的に私達みたいなハンター相手の時はちゃんとこっちを見てるからさ」


「見てる? それってどういう……」

「私達ハンターはコレ、着けてるだろ?」


 そういって彼女は腕に身に着けているハンターバンクルを見せつけるように構える。


「コレは色でどれだけ強いかランク分けされてるんだけど、分かりやすく表すなら──」



ハンターランク

 灰色――低い

 青色

 赤色

 黄色

 白色

 黒色――高い



「──こんなかんじだ。ランクが高いやつにはギルドから直接依頼を受けるようになるからその分儲けてるか、()っきな魔石を持ってるから店側は客を見て天秤か個数指定かって分けてるって話だ。

 あぁもちろん皆に個数を指定してるってところもあるけど、そういうところは逆に客がたくさん来て儲かってる店だね」

「なるほど」


 つまりケースバイケース。

 客を見て店側も上手いことやりくりしてるってわけだ。

 量り売りか、値段を固定するか、そのさじ加減による店同士の競争なんかもありそうだな。

 個人的には天秤による量り売りで統一してしまった方が楽な気はするが……。


「よし、ついたよ。ここが鍛冶屋だ」


 そういって辿り着いたのは先程の大通りから外れ、しばらく歩いた場所。

 木製の建物が目立っていた街並みとは異なり、鍛冶屋といぅけあってその建物の外壁はレンガによって作られており、少しばかり重々しい雰囲気が感じられた。

 街を囲む外壁を背にしている事も大きいのかもしれない。


 どうやら中にいる人は作業を行っているようだ。

 リズムよく鉄を叩く音がこちらにまで響き、人一倍大きな煙突からは煙が立ち込めている。


「あら?」


 街並みのものと比べ、一回り大きな建物の出入り口。

 『スミス・コークス』と掲げられた看板の下に用意された玄関へ向かわず、裏側へと回り込むと両開きとなっている扉の一方を開けようとレムリーズがノブに触れるが、どうやら鍵が掛けられているらしく開かないようだ。


「おーい! おやっさんいるんだろ? 開けてくれ!」


 レムリーズは叫び、力強く戸を叩く。

 当然ながらインターホンといった便利なものはなく、そもそも電気なんてものはこの街には通っていないのだ。

 店を訪れるときなんかには少し戸惑ったものだ。


「おーい! コークスさん。いるんだろ? おーい!!」

「うるせぇぞ!! 朝っぱらから、まだ開店前だ」


 鉄を叩く手を止めることなく聞こえてくる低い怒号。


「というか、表から入って来いよ! 店の方ならミレーヌが準備してっからよ!」

「はーい! ……だってさ」


「だってって……何で入り口から入らないんです?」

「いやぁいつもはこっちからで問題なかったし……それに私の武器が当たっちゃって何回かドア壊しちゃった事もあったからさその対策?」


「はぁ……なるほど。では今回はぶつけないよう気をつけて入ってください」

「うん!」


 こうして少しばかりゴタ付きながらも俺たちは鍛冶屋『スミス・コークス』へと入店したのだった。


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