表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

06話『為替レート』


「えっと、どこまで話したっけ?」

「天秤を使うことで魔石の大きさ、重さから商品の値段が決まる。ってとこまでですかね?」

「あーそうそう。それで……ん〜、でもある程度は言っちゃったかな? 何か質問とかある?」


 料理を提供する屋台の通路から外れ、俺たちは野菜や果物といった食材を売る店が並ぶ通路を通っていく。

 男たちが多く、賑わっていた屋台通りとは違い、こちらでは主婦らしき女性や呼び込みをする店員の声が飛び交い、それなりに賑わっている。


(すごいな……)


 軒先に商品を並べるなど、地下で暮らしていた時にはなかった光景だ。物珍しさもあるし、もう少し見ていきたいところなのだが……。

 

「少し、気になるので聞いてもいいですか?」

「うん! なんでも言ってみてくれよ!」


「あの、どうして腕を組んでくるんでしょう?」

「あぁ、これは私が組みたいって思ったからだぜ?」


「組みたかったから、ですか?」

「うん!」


 そんなバカな話があるか?

 初対面の相手に、しかも男相手にだぞ? 

 まぁ、少なくともこんなところに来てまでハニトラって事は無いだろうが……それゆえに意図が分からん。


 やはり逃げられないようにするためなんだろうか。

 正直、この高速が解けたところで最早この場所から逃げ切る自身はないんだよなぁ。


 あの狼を斬り伏せられるほどの力を持ち、声を張り上げるだけで奴らを撤退させるほどだ。

 力もそうだが、しっかりとした筋肉の付き方を見るに恐らく脚力もかなりのものだろう。

 よく考えるまでもなくそれなりの実力者ってことだ。


 それに、仮にここから逃げられたとしても宿の場所が割れてるんじゃ明日、明後日もつきまとわれるだろうしなぁ。

 ……うん、こうやってハッキリとした頭で考えれば考えるほど逃げるのが無理だって分かってくるな。


「はぁ……」

「ん? どうした?」

「あぁ、いえ。大したことはありませんよ」


 ここは大人しく従うしかないか。

 助けられたことには感謝するが、本当なんでこんなことになってしまっているんだろうか。


「あの、もう少し聞きたいことがあるんですが、よろしいですか?」

「うん、何でも聞いてみて?」


 ま、後はもう聞けるだけのことを聞くしかない。

 レムリーズの言う鑑定を行う場所がここから後、どれどけあるのかは分からないが、まずはお金──魔石についてもう少し聞くとしよう。


「魔石はその大きさから天秤で値段を決める。また、数だけが指定の数揃えることでも値段が決められる。こうした2つの支払い方法があるのは何故ですか? 経済的に成り立つものなのですか?」

「あー……経済とか詳しいことは私には分かんないけど、何で2種類あるのかってなら答えられると思うぜ」


「お願いできますか?」

「うん、分かった。それじゃあさっき魔石には大きさに違いがあるのは話したよね?」


「はい。モンスターの種類によってとれる魔石の大きさが違うんですよね?」

「うん。でね、このアルミラージとガルムの2つだとガルムの方が大きいんだけどどうしてか分かるか?」


「すぐに思いつくとすれば、肉食か草食かの違いでしょうか?」

「あー確かにそれはあるかも。でもアルミラージは雑食だからちょっと違うのかな?」


「え? あれ雑食なんですか?」

「ん? うん。例えばアルミラージは草原でよく草を食べてるんだけど……時々ガルムとはナワバリ争いをしてることあってね。その時仕留めたガルムを食べてたっていう報告もあったから。多分肉食でもあるんだろうな」

「なるほど……」


 あの時、仕留めた数に対して捕まえられた数が合わないと思ったが……奴らが咥えて持っていったからなのか。

 となると奴らは共食いをするのか?

 ううむ、野生の動物というものを見たことないのでよく分からんが……奴らにとってそれは生き残るための手段というかそうせざる負えないということなのか?


「それで? どうしてこちらの魔石の方が大きいのでしょうか?」

「あー……えっと、大きな魔石を持ってるエモノってその大きさの分だけ身体も大きいんだ。で、逆を言えば弱いエモノ、大人しいエモノは小さな魔石しか落とさない。それこそ捕まえたのが子供だと魔石が完全じゃなくて砂粒程度だったって言われてるんだ」


「なるほど……やはり成長の過程で魔臓──いや魔石は作られていくのか?」

「だと思うけど……」

「ふむ、なるほど」


 成長により魔臓が作られるのであれば、人の体内にも同じように生成されていると考えていいのだろうな。

 色々問題があるし、保護法により勝手な人体の解剖は許されないのでマトモな研究結果は無いが……もし、人の魔臓の位置が特定でき、それを摘出することができれば人々から魔法という力を取り除くことができるのではないか?


 魔臓は化け物どもが魔法を使うための源だ。

 それを安全に取り外すことが出来れば、その研究を発表することが出来たなら、俺があの国へ帰ることも出来るかもしれない。

 あぁいや、だがしかし、アルミラージから魔臓を抜き取った際の経過観察では何故か全て衰弱死してしまったのだったか?


 草食だとばかり思っていたのでそれによる栄養失調……いや、検査ではそういった結果は出なかったはずだ。

 数匹を同時に観察した際も共食いなどの研究結果は得られなかったし……やはり魔臓から身体(しんたい)に関する何らかのエネルギー元素が生成されており、それが不足したことによる衰弱だとみて間違いはないのか?


 あぁ、クソッこれらを今すぐに記録しておきたい!

 だが、端末が無いんじゃ──いや、せめて紙とペンがあれば……どこかに売ってないか?


 キョロキョロキョロキョロ、と。

 周りを見渡すその姿は端から見れば完全に不審者であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ