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第86話 『二重詠唱のひみちゅ』

思えば召喚士アリサとの出会いは偶然だった。


俺とヒナがアレスの塔の文献を探している時、同じくそれを探していたアリサは図書館の本のページを破って持ち帰ろうとした所を俺に見つかり、いつの間にかパーティに引き込まれたといういきさつがあった。


召喚士が稀なジョブであるにもかかわらずアリサは三体もの召喚獣を従えていることがわかり、俺は勝手にアリサを壊れキャラ認定していた。


そして今日ハッキリと自覚する事になる

やはりアリサは壊れキャラだったのだと……








紫炎のドラゴンを前にしてリンカのテンションは上がっていた。


「私の通る道にドラゴンは屍すら残らない!」


ドラゴンスレーヤーのリンカさん、まだ倒したのは一体だけどね。しかもアレスの塔で出現したバーチャル風味のドラゴンだけど……


今、俺達の前にいるのはカイニバルが変身した紫炎のドラゴン。しかし奴の能力は倒した敵の力を完全にコピーするらしい。


「タケル、カイニバルって奴は紫炎のドラゴンより強いって事になるよな」


グライドが俺に話しかけた。ドラゴンの強さが想像以上なら実際グライドは、戦力として頼もしい。


「まあ倒したんならそうじゃないかな。それとも何か卑怯な手を使って倒したなら別だけど……」


カイニバルの兄、ワイニバルはかなり卑怯な奴だったとメルのおばあさんミレシアから聞いている。だったらこいつも紫炎のドラゴンを何かの罠に嵌めた可能性があるのだ。


「タケル、私も攻撃に参加するよっ。カーニバルとの因縁に決着を付けなきゃいけない気がするんだ」


カイニバルな、メル! お祭りじゃないから……

カッコいいセリフ台無しだよ!


「わかったよ。止めてもやるんだろ」


「うん、ありがと、タケル」


メルは、何かの魔法の詠唱を始めた。


正面から突っ込むグライドに対して俺は、リンカにテレパシーで左右に分かれて攻めようと伝える。頷くリンカ、狙いは両目だ。


もちろんグライドはおとりだ、言ってないけど。

紫炎のドラゴンは何かを吐き出そうと大きく口を開けた。


光の粒がドラゴンの中で球状に膨れ上がり、最早それが紫の火球である事が予想できた。

やばいよ。いくら『グライドおとり作戦」でもあれは駄目だ……


「タケルっ、カッコいいとこ見せるからな!」


グライドは、どこでスイッチが入ったのかドラゴンの正面に突っ込んで行く。

既に火球の準備は整い、今にも吐き出される気配を感じる。


流石に身の危険を自覚したのか、あっと声を漏らすグライドだが避けきれぬ程、距離を詰めており回避が間に合うかのかさえわからない。


「タケルっ、なんとかなんないかな?」


今さらのグライドのセリフ。


なんねーよ! しかしこのままだとグライドがYABAIZE


遂にドラゴンの口から火球が放たれ、グライドを呑み込んでいく。


火球は城の中庭の地面をえぐり弾けた。そしてグライドの姿はカケラさえも見当たらない。


「う、嘘だろ、グライド!」


カイザルの街で再開したグライドは鼻歌を歌っていた。そして魔王城であったグライドも鼻歌を歌っていた。そんな鼻歌ばかりが懐かしく脳裏に浮かぶ。


鼻歌が似合う男、グライド、消し炭になってしまったのだろうか?


「お兄様、問題ない!」


「ア、アリサっ」


アリサは、中庭の左側の壁を指差した。


「は、ははっ」


俺は、壁に突き刺さっているグライドの姿を見たのだ。ホッとして笑いがこみ上げてくる俺。


そして次の瞬間驚いて目を見開いた。


二重詠唱……


目の前には金色に輝く鎧姿の巨大な召喚獣がいたのだ。


「ライハルトゲルマターク、アダ名はライちゃん」


アリサは、防御魔法と同時に召喚獣を呼び出していたのだ。そしてアダ名は必要だったのか!?


グライドは、この巨人姿の召喚獣にハタキ飛ばされて助かったのだろう。壁にめり込んでピクピクしてる様子は助かったとは思えないのだが。


ともかくアリサのお陰で鼻歌は瞬殺を免れたのだ。良かったな鼻歌!


「ライちゃんは、雷属性の魔法が出来る子。そして殴り合いが得意」


「お前、二重詠唱って」


「二重詠唱は、二つの詠唱呪文を異なった音階で交互に唱える。説明しても出来る訳ではない。絶対音感が必要なのです。お兄様」


つまり「おはよう」「サヨナラ」と言う二つの言葉を「お・サ・は・ヨ・よ・ナ・う・ラ」みたいな事なのか。さらにそれぞれ別のオクターブで唱えるなんて……


俺はアリサの底知れなさに驚き、壊れキャラの予想が間違っていなかった事をあらためて確認したのだ。


妹にしたいくらいだぜ、アリサっ!


「ば、ばかああああっ!」


とてつもない無数の氷の刃がドラゴンと俺に襲いかかる。


いくつかはドラゴンの身体を切り裂き、俺は必死に避ける。光の鎧の効果もありなんとか無傷の俺。ヒナか!? どうして?


「お、お兄ちゃんの妹は私だけなんだからっ」


ああ、そうでした。指輪を外した俺の声はダダ漏れでした……


「するとは言ってないだろ! でも、そうだよな、妹はヒナだけだよ。あとは大切な仲間だ」


俺は、本当にそう思った。心の声もズレてないはずだ。


「そしてお嫁さんのメル」


おいっ、俺そんな事思ってねえよ。勝手に代弁するんじゃねえよ、メルっ!


と、とにかく仕切り直しだ。

今度は全員で攻撃するんだ。


ドラゴンは牙を光らせながら再び口を大きく広げていた……

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