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第83話 『ないしょの話ですか?』

ザナックスが剣を振り下ろすとともに青い炎が大きな三日月状の刃となり俺に襲いかかった。


「や、やばっ、受け切れるか」

魔法の詠唱など間に合わない。もとより俺は防御魔法を知らないのだ。

自分の味方、王女までも巻き込むような馬鹿げた攻撃なんてザナックスは、おかしくなったのだろうか?


「右手を!」

誰かが叫んだ! マシュか⁉︎ 右手だって⁉︎


その瞬間、青い炎が俺を包んだ……


「お、お兄ちゃん!」

「タ、タケルっ!」


ヒナと仲間の誰かが叫んでいるのが聞こえる。だったら俺はまだ生きてるようだ。

ザナックスの青い炎はかき消えて俺の姿もそこには無かった。


「……………………」


静まり返った中庭でただひとりマシュだけが言葉を放つ


「いけーーーーっ!」



ザナックスの頭上に姿を現した俺は、油断していた彼の剣を弾き飛ばした。

剣は、弧を描いて中庭の離れた地面に突き刺さった。と同時にそれはこの闘いの終わりを示していた。


「そこ迄です!」


王女クラッカルが高らかに終了の合図を告げた。


俺の仲間達は、我に返り俺のもとに集まろうとしたのだがいち早く駆け寄り俺に抱きついたのは誰あろう王女クラッカルだった。


「ち、近いよ! 王女様」


クラッカルの微笑んだ顔が俺の間近にあった。

大げさだと思われるかも知れないけれど近くで見ると更にその美しさが眩しくて眼を開けていられない程だった。


「あわわわわわっ、お、おおおお、にちゃん」

もはや言葉になっていないヒナの叫び……


「タ、タケタケタケ……」

笑い袋かよ! メルっ!


後のふたりは言葉も無く剣を構えるのと詠唱を始めるのはやめて欲しい。

俺は、殺気立った仲間達に危険を感じてクラッカルを少し引き離そうとした。


「待って!」

クラッカルは、俺を止め耳元で囁いた。


「タケル、あのザナックスの魔法の斬撃をどうやって防いだのですか?」


何故か皆には聞こえない程の小さな声で俺に問い掛ける。他から見るとまるで内緒話をしているような様子だ。


そんなクラッカルにつられ俺も自然に小さな声で話すことになった。


「はい、吸収したんです。俺には魔力がありませんが人の魔力を吸い取って利用する力があるんです。でも自分の意思で吸い取ろうとした事がないんで上手くいくかはわかんなかったんですけど……」


「やっぱりね。ウィザードキラーの能力。あの伝説の勇者と同じ力……」


「王女様は、ウィザードキラーの事をご存知なんですか?」


「いいえ、詳しくは知らないけど、この国の古い予言書に『その者、虹色の光を身に付け魔を打ち消す力を秘めし勇者なり、この世界に厄災おとずれし時、その者はすべてを救うであろう』とあったの、みんなはお伽話だと思っているけれど私はずっと信じてた。いつかこの国も救ってくれると。地下の魔法陣の部屋にいた時、遂にその人は現れたわ。どれほど私が嬉しかった事か。そしてその人は今私の目の前にいる……」


「わわっ、何だっ」

俺は、無理やりクラッカルから引き離された。

勿論、お馴染みの仲間達の仕業だ。


「お兄ちゃん、王女様にだ、抱きつくなんて失礼でしょう!」

いや、違うだろ! 俺じゃないじゃん!


「タケルは、あたしという者がありながら」

そんな関係だったかメルよ!


「私はそんな軟弱なタケルに育てた覚えは無い」

いや、軟弱なスイーツ食べに来いって言ってたよな、リンカ!


「お兄様は、私という妹を大事にすべきデス」

妹じゃねーだろ、アリサ、あと何でカタコト⁉︎


とにかくワイワイと騒がしい。それぞれが同時に話続けている。

みんなには闘いの勝ち負けなどどうでも良かったのだろう。

俺にとってもそうであるように


「はいーっ! 整列っ」

イルカス(ドルフィーナさん)が正式な作法に則り、指示を出した。整列ってふたりしかいないんですけど。


俺とザナックスは槍を持ったドルフィーナさんの前に向かい合わせに並んだ。


「タケル、すまなかった。取り乱して王女様を危ない目に合わせてしまった。この失態の責任は後で取るとしてお前が止めてくれて助かった。礼を言う」

ザナックスは、今は冷静さを取り戻していた。

その潔さは王国の騎士に相応しく思えた。


「いえ、ただ俺の運が良かっただけです」


俺は、この闘いで命のやり取りをしなくて済んだ事にホッとしていた。


「勝者、タケル!」

イルカスが槍先を俺に向けて勝ち名乗りを上げた。槍先を向けられるのはあまり気持ちの良いものではないのだがこれも正式な作法なのだろう。


そして今度は、ザナックスに槍先を向けて……



イカルス、いやドルフィーナさんはそのまま槍をザナックスの胸に突き刺したのだ。



ザナックスの胸から鮮血が飛び散り辺りを赤く染めた。突然の事に俺達は、何が起こったのか理解出来なかった。



ただドルフィーナさんのその時の魔族の冷たい表情が俺の眼に妙に焼き付いていた……

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