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第74話 『守りたいもの何ですか?』

俺達は、ワイバーンに乗ってグライドの故郷であるバルセイムに向かっていた。

ここからバルセイムは、近くに位置しあともう少しで到着するだろうと思われた。


グライドは、珍しくワイバーンに乗って来ており、先頭を切って飛んでいた。俺は、グライドとふたりでそのワイバーンに乗っていた。


「しかし、よく俺達の居場所が分かったな、グライド」


「ああ、ヒナの行き先は常にチェックしているからな、当然だ」


それが本当ならストーカーだぞ、お前、後でヒナに通報しておこう。





「なあ、グライド、敵は魔王軍なんだろ、顔を晒して大丈夫なのかよ」

ヒナは、メルに死神の仮面を借りる予定なのだ、 グライドだけが平気な訳はない。


「大丈夫じゃないさ、だけどあいつらはやっちゃいけない事をやったんだよ。それにもう顔はバレてるからな」


「やっちゃいけない事?」


「ああ、魔王軍は王族を殲滅する為にやって来たんだ。僕との約束を破ってな」


「ど、どう言うことなんだ。話によるとバルセイムは、魔王軍との和解がなされているはずだよな、今更攻撃だなんて」


「和解なんてもんじゃないさ、当時、魔王軍は一方的な取引を持ち掛けてきただけなんだ。定期的に食糧と物資を納める事と魔力の高い者を魔王軍に差し出す事をな……」


「おいっ、それってまさか」

俺は、息を飲んだ。


「そのまさかだよ」


「ドルフィーナさんが……」


「おいーーっ、ちげーーだろっ、僕だよ、僕、このグライドだよ。ドルフィーナは、明らかに魔族だろっ」


グライドは、ツッコミを覚えた。俺は、彼の成長を嬉しく思い少し口元を緩めた。



「くっ、まあいい、幼少期より高い魔力を秘めていた僕は、すぐ魔王軍に連れて行かれたんだ」


どうやらグライドは、自分の意志で魔王候補生になった訳ではなかったのだ。魔王軍との取引材料として引き渡された、つまり人質のようなものだった。


「じゃあ、お前は自分の故郷を守る為に敢えて魔王軍に身をゆだねたって言うのかよ」


「ああ、当時の俺にはそれしか選択が無かったんだ。王女様の命もかかっていたからな、しかし魔王軍は、その約束をほごにして王国に侵攻を始めたんだ」


「あの魔王が、そこまであの王国にこだわる理由は無いよな。だったら誰が何の為に」


「タケル、誰が企んでいるのかわかるよな」

グライドの言葉に奴の姿が浮かんだ。

薄々は気づいていた。魔王軍を裏で操る冷酷な影、争いにはいつもその姿がチラつく



「ドルフィーナさんじゃないよね……」


「おいっ!」

グライドが、ツッコんだ。絶好調だ。


裏で糸を引いているのは、恐らくシュベルトだろう。それは、今までの流れから俺にもわかる。だがどうしてシュベルトは、それ程あの国にこだわるのだろうか。


「驚くなよ、タケル! 黒幕はシュベルトだ」


「そうだな」

俺の素っ気ない返事にグライドは、ぷるぷる震え出した。


「お、お前、ちょっとアレだぞ、言い方あるだろうよ」


「そうだな」


がっくりと肩を落とすグライド。だが俺はシュベルトの狙いを真剣に考えていた。ここに争いの鍵が隠されているような気がしてならないのだ。


「なあ、グライド、他の国には無くてお前の国にしか無い物ってないか」


「はっ!? なんだ突然っ」


「大事なことなんだよ、きっと何かあるはずだろ」

シュベルトの本当の狙いは、バルセイムという王国ではなく、そこにしかない何かだと俺は睨んでいた。


「そ、そうだなあ、バルセイム煎餅、バル蒸籠まんじゅう、バルセイムタペストリーなんかがお土産に喜ばれているようだが」


「いらんわ、そんな情報! もっとあるだろう、歴史的価値のある物だとか」


「はっ! あれか時計台の置物、これは大事な物を忘れていた」

殴っていいですか、この野郎!


俺のジト目に気付いたグライドは、慌てて付け加えた。


「ち、違うんだよ、タケル、僕が言いたかったのは、時計台に隠された魔導書の事なんだよ」


「魔道書だって!?」


「ああ、時のグリモワール、その名の通り時を操る魔法を収めた魔道書だ。魔力の高い者が持てば世界すら手に入れる事はたやすいとされている」


「 時のグリモワール……」


シュベルトの狙いは恐らくそれだ。そしてメルの母アメリアが守ろうとしていた物と考えれば辻褄があう。


そんなやり取りのうちに時計台の王国、バルセイムが見えてきた。俺は戦火により立ち昇る煙を遠目に見ながら避けては通れない戦いを予感していた。

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