第73話 『これってパーティじゃね』
「おいおい、それお前のひいばあさんだぞ、メル」
メルは、幼女にしか見えないレイラを抱っこしていた。
「だって可愛いんだよ」
メルに頬ずりされたレイラもまんざらではなさそうな様子だ。心なしか喜んでいるようにも見える。
「メル、お前はタケルを選んだのだな」
「うん、あたしはタケラーなんだよ」
何だよタケラーって! メルが選んだのは俺のパーティってだけだからレイラも話をややこしくするのは辞めて欲しい。
「なあ、グライド、お前の言ってたこと、詳しく話してくれないか」
俺は、さっきの話が気になっていたのだ。こいつが誰かに助けを求めるなんて只事ではない。
「ああ、その事だが……もぐもぐ……僕が貴族の出だと……もぐもぐ……言うことは……もぐもぐ……知って……もぐ……」
「ええーーーーいっ、もぐもぐうるさいぞ! お前少しは食べるの止めろよ!」
グライドは、肉料理を口に頬張りながら話をしていたのだが、俺の我慢も限界だった。第一貴族の食べ方じゃねーし
「もごっ、ゴクリっ、ああ済まない。僕の故郷での伝統的な貴族の食べ方なんでな」
ええーっ、それ正式なやつだったの!
「騙されないでお兄ちゃん!」
ヒナが怒ったようにグライドを見た。グライドは、慌ててタケルに謝罪した。
「お前、本当に大変なのかよ。冗談言える余裕があるじゃないか」
「いや、悪かったよ。不思議な事に、この料理が僕の故郷の物とそっくりでつい食べ過ぎてしまったんだ。まあ回復して僕も少し冷静になったんだと思う。大変な事になっているのは本当なんだ、聞いてくれ、タケル……」
グライドは、故郷に起こっている事態の状況を説明した。それからあらためて俺に助けを求めた。
「僕の故郷バルセイムを救って欲しいんだ」
「グライドっ! お前今なんて言った! バルセイムだって……」
「ああ、僕の故郷時計台の王国バルセイムだ」
バルセイム……メルの母親アメリアが命を落とした王国の名だ。偶然にもグライドは、その国の貴族だったのだ。
「タケルっ、あたしは付いて行くから」
メルは何故だか母が護ろうとした王国を自分も護りたいのだと考えているのだろう。しかし、俺が行く前提になっているのが気にはなるのだが……まあ行くんだろうな俺。
「私も行くわよ、お兄ちゃん」
「しかし、グライドの話だと魔王軍との戦闘になりそうだけど良いのか、ヒナ」
「大丈夫! メルちゃんに仮面貸して貰うから」
仮面ってアレな、死神のやつね
「私も行く! グライドには何度か世話になっているからな」
リンカの騎士道に火が付いたようだった。
「お兄様、私も出かけたい!」
旅行じゃ無いから、アリサっ
「わかったよ。行ってこい、みんな」
「「「「「おいっ!」」」」」
全員に突っ込まれた……
という訳で俺達はバルセイムに向けて出発する事になったのだ。
出る前にメルはレイラになにやら話掛けられていたのだがすぐ終わったようで俺達の元に戻って来た。
今までと違い今度は、俺達が魔王軍に立ち向かうのだ。偶然でも無く、巻き込まれた訳でも無い、自分達の意思でそう決めたのだ。それは俺達が本当の意味でパーティと呼べるものになった瞬間でもあった。




