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第70話 『本当の名前は』

「良し! これで私の勝ちだな!」

レイラは勝ち誇ったように薄ら笑いを浮かべた。最早小さくガッツポーズまでしている。


「ふふっ、じゃあこれで」

そんなレイラに対し俺は、何事も無かったかのように白の駒をパチリと置いた。


「ぎゃああああああーーーーっ!」

レイラの悲鳴がダンジョン内に響いた。

そう俺とレイラは、マシュを賭けてオセロで勝負をしていたのだ。30階層まで辿り着いた俺としては、ご褒美としてカイゼル・ソウルを仲間に出来るものだと思っていたのだが何故か最終決戦なるものを強いられる事になったのだ。


「お、おい、タケル卑怯だぞ! 駒が全部白に変わってしまっただろ!」


幼女は足をバタバタさせて悔しがったのだがそもそもオセロで勝負を持ちかけてきたのはレイラ自身なのだ。


「俺の勝ちですね。マシュは預かります」


「ま、待て、タケル、お前は確かに勝負に勝った、しかし、しかしだカイゼルがお前を選ぶとは限らんだろう。よし、こうしよう、カイゼルがお前を選ぶか私を選ぶか賭けようじゃないか」


もはや、勝負ではなく賭け事になっていた……


「さあ、はった、はった! 丁か半か」

いったいここは、どこなんだよ! ピンポイント過ぎるだろ


「レイラさん、マシュは、俺を選ぶと思います。俺はマシュを仲間にしたいんです」

俺は確信したかのようにレイラを真っ直ぐに見つめた。


「ははっ、どうかな、私とカイゼルは長い付き合いだからな。しかし使い魔を仲間だとは変わった奴だな」


俺とレイラさんは、カイゼル・ソウルを間に距離を取った。カイゼルは、今はもう元の姿に戻っており2人を交互に見廻していた。さっきは、ああ言ったものの俺は内心ドキドキしながらカイゼルを見つめていた。もし、レイラさんの方に向かえばそれがカイゼルの出した答えになる。


カイゼルは、キュイと鳴いた後、俺に背を向けた。ああっ、やっぱりダメだったのか。カイゼルは、そのままレイラの前に進みそこで立ち止まった。


「カイゼルよ、本当にそれで良いのか」

レイラの問い掛けにカイゼルは、今度は自分の意志で姿を変えるつもりなのか、また光に包まれたのだ。


そしてカイゼルは、見たこともない少女に姿を変えていた。黒き使い魔とは、全く逆の白髪の少女へと……


呆気に取られている間もなく、さらに驚くことが起こった。カイゼルが言葉を発したのだ。


「レイラ様、申し訳ありません。私はタケル様と一緒に今の外の世界を見たいのです。タケル様は私を仲間だと言ってくれました。人の心が見える私にはこの言葉が嘘では無いと分かるのです」


「くくっ、やはりお前はタケルを選んだか、しかし短い時間で随分好かれたものだなタケルよ」

レイラには、結果が分かっていたのだろう、悔しがる様子もなかった。


「じ、じゃあ、マシュは、俺の仲間に……」


「仕方がないだろう、お前は勝負に勝ったのだから」


レイラの答えを聞いたマシュは、俺に駆け寄り抱きついた。


「な、ななな、何してるんだマシュ」


「はいっ、新しいご主人様に挨拶です。どうかこれから私を可愛がって下さい」


可愛い女の子に抱きつかれて嫌な気分になる訳がない! だけど誤解を生むような発言は、やめてー


「分かったよ、こちらこそよろしく。それから名前は、なんて呼べば良いかな」


「はい、ずっと私は俗称でカイゼル・ソウルかカイゼルと呼ばれてきました。でも名前はあるんですよ」


なるほどカイゼルには、ちゃんと名前があったんだ。俺が勝手に名前を付けて悪い事をしたな。今度からは、カイゼルを本当の名前で呼んであげよう


「本当の名前を教えてくれないか」

俺は、まだ抱きついていたカイゼルに問い掛けた。


「はいっ、私の名前はマシュです。大好きな方からもらった大切な名前です」


そう言ってマシュは、嬉しそうな笑顔を見せたのだった……

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