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第68話 『最下層の少女あるいは幼女』

「キュイ! キュイ!」

「やったーっ! やったーっ!」


喜びを分かち合う俺とマシュ、どうやら言葉を理解しているようだ。何だか気が合うね


「さて、行きますか」「キュイ」


さらに、下の階層に進んだ俺とマシュは、またも30階層までを全力で突き進んでいく。俺が敵を剣で切り裂けばマシュは、「キュイ」と応援し、俺が、魔法で敵を粉砕すればマシュが「キュイ」と励ます……。俺たちの息はピッタリだ。


「って、おいっ! お前さっきから『キュイ』しか言ってねーじゃん!」


マシュは、戦闘において全く、これ~っぽっちも役に立っていないのだ。う~~~~ん


「おいっ! マシュ、お前目からビームかなんか出ないのか?」


「キュイ!」俺の意図を理解したのかマシュは、力強く返事をした。


マシュの身体が、力を込めるように小刻みに震え出した。ダンジョンの下の階層で生存していたくらいだから、何か特別な能力を秘めていたとしても不思議では無い。俺の期待は、高まった……


丸いマシュの身体は、光に包まれ輝き出したのだ。光は形を変え膨らみながら飴細工のように伸び上がった。そしてしばらくすると輝きは薄れそこには黒髪の少女の姿があった。


「えっ、ヒ、ヒナなの……か?」


「キュイ!」


" 変身能力 "


どうやらそれがマシュの能力のようだ。

しかし、どうして見たことのないヒナの姿に変身する事が出来たのだろう? しかもメイドさんの格好とはわかってるじゃないか。でも本物の可能性もゼロでは無いよな。確かめるかっ


「よし! じゃあ早速」

俺は、マシュの頭を撫でてやった。

「!?」

ち、違う、ヒナの撫で心地と明らかにちがーう!


「お、お前一体誰なんだ!」

「キュー」


マシュに決まっていた。知ってたけどね。

こんな感じの茶番の後、俺は最終階層である30階層に足を踏み入れた。ドン!


どれほど強いモンスターが待ち受けているのか分からないがここまで来れば覚悟を決めるだけだ。


踏み入れた30階層は思いの外、狭い空間だった。

中央には丸いテーブルと椅子があり、黒いフードに身を包んだ小柄な何者かが足をぶらぶらさせて座っていた。

その様子は、どことなくメルを連想させたのだ。


「おめでとう、だが待ちくたびれたよ」

黒いフードは、俺に話かけた。


「女の子?」

その声は、幼い女の子のものの様に思えたが、話し方には妙に威厳があった。


「私は、君が来るまで本当に長い時を過ごしてきたんだよ。だから良かったのは、むしろ私の方かも知れないのだが」

フードを取って笑ったその声の主は、やはり幼い女の子だった。見た目は、ヒナよりも2、3歳位年下だろうか。


なるほど最後のダンジョンのボスは、この人だったんだな。俺は、その黒いフードの女の子に向かって言った。


「レイラさん、俺がここに辿り着いた時点でこのダンジョンをクリアした事になるんですか」


「なっ、なななななな、なんで、お、お前はわ、私のな、名前をしってるるるんだ」

いや、動揺しすぎだろ!


「あなたが創ったダンジョンです。最後にあなたが居ても不思議じゃ無いと思ったんですよ、それと俺の名はタケルです」


「くっ! 『私を誰だと思う?』と問いかけをした後、正体を名乗り驚いた顔を見るのを私がどれ程の長い時間楽しみにしていたのかタケルっ、お前にはわかるのかーーーーっ!」


マジギレのレイラは、俺にキレた!

取り敢えず遅いかもしれないがフォローしろ俺


「ええーーーーーーーーーっ! 冗談で言ってみたのにほ、ほんとだったんだ! う、嘘だろこ、こんな事ってあ、あなたがあの伝説のレイラさんだったなんて!!」


俺の演技にレイラは、ポカンとした顔をしている。やはり茶番だと気付かれるよな、これはもう、あれだ、謝るしかないや


「ふふふふっ、そうだろう、そうだろう、さぞかし驚いただろう、タケルとやら」


俺の予想に反してレイラは、満足げだった、チョロすぎるだろレイラ! むしろ驚いたの俺だよ


「クリアしたなら俺帰ります。仲間が待ってますんで……」

俺が、帰ろうとするとレイラが慌てて引き留めた。


「まてーーーい、タケルお前このダンジョンに何しに来たのか忘れたのかっ! ま、まあそこの椅子に座れすぐ座れ」


そう言えば、俺、黒き使い魔『カイゼル・ソウル』を探しに来たんでした、えへへ


「クリアしたからにはカイゼルを呼んでやるから待っていろ、全くしょうがない奴だな」


レイラは、カイゼルを呼び手をパンパンと叩いた。まるでペット扱いだ。


しばらくの間、沈黙とともに時間が流れた。


「あ、あれ、おかしいな」

レイラは、もう一度、同じ動作を繰り返した。


またしばらく待ってみたのだが、やはりカイゼルは、現れない……


俺とマシュは、椅子に掛けたままその様子を眺めていた。


「タケルっ」


「何ですかレイラさん」


「さっきから気になっていたんだがお前の横に座っている者は、誰なんだ」


「ええ、俺の妹に変身したマシュです」


「か、かわいい、妹だな」


「ええ、そうなんですよ、かわいい妹ですよ」


「しゃべるのか?」


「いえ、キューって鳴きますけど」


「それだーーーーっ!」

レイラは、テーブルをバーンと叩いた。


驚いたマシュは、ボンと言う音を立てて元の姿に戻った。


「おいっ、私をシカトしてるんじゃないよ」

レイラは、両手でマシュをギュウギュウに挟んだまま持ち上げた。


「キュー、キュー」

マシュは、苦しそうに鳴くより他に抵抗できないでいる。万力で挟まれているゴムボール状態。


「こいつが『カイゼル・ソウル』黒き使い魔なのさ……」

レイラは、手のひらにさらに力を込めるのだった。

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