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第63話 『勇者の証』

"手加減しているのだろうか?"

俺は、アレスの剣を受けた時そう感じたのだ。


アレスの剣は、さすが素早い、あの重そうな剣をまるで木の枝を振るうかの様に繰り出してくるのだ。しかし、俺にその剣の軌跡が見えないなんて事もないのが、どうにも腑に落ちない。


剣圧にしても、そうだ。圧倒的な存在であるはずのアレスの剣がこんなに軽い訳がない。


それとも、このクサナギの剣のおかげなんだろうか?


「何を迷ってるんだ、タケル! 手加減などしていないぞ」

アレスは、俺の思考を見透かした様に言葉を投げ掛けた。


「お兄ちゃん! 考えてる事ダダ漏れだよ」

ヒナの言った事で俺は、ハッと気付いた。

そう言えば指輪外したままでした、俺!


急いでテレパシーでの思考のダダ漏れを防ぐ為、指輪を付け直す俺だった。全くなんでまた俺にこんな能力が備わったのかわからんが、唯一の特殊能力でもあるのだ。


「アレスさん、手加減している様に思えるんですが、これは、唯の消化イベントなんですか!」

楽に勝たせて貰えるなら、それに越した事は無いと思う反面で俺の中に湧き上がってきた感情……


"本気のアレスを超えたい"


だって男の子なんだもん。


「タケル、君は自分が強くなっている自覚は、無いのかい。私は、手加減なんてしていないのだが」


「!?」

俺が、強くなっているだなんてどう言う事だろうか? 仲間の中でも俺は最弱なはずで……


アレスは、構わず剣を打ち込んできた。

しなる様に見えるその剣先をかろうじてクサナギで受け止めた俺は、さっきのアレスの言葉を思い返した。


"やれる……のか?"


俺は、剣を横にして居合の構えをとった。

クサナギは、本来片手で扱える剣ではあるのだが俺は両手で柄を握りしめた。


「居合スラッシュだっ!」

メルが叫んだ!

いや、そんな恥ずかしい名前つけてないだろ! やめてくれーっ


「ほう、居合スラッシュとは、なかなかカッコ良いじゃないか、ならば私もアレスペシャルを解禁しなけばならない様だな」

やはり血は争えないようだ、アレスの感性は、メルに引き継がれていた。


一旦距離を取ったアレスは、コキコキと首を鳴らした後、剣を構えた。


「き、消えた……」

アリサが、呟いた時には、アレスの姿は無く、ヒュッと一陣の風が舞った。


「タケルっ、アレスペシャルが来るぞ!」

リンカが、叫ぶのとほぼ同時に目の前に剣を振り降ろさんとするアレスの姿が現れた。


「お兄ちゃん‼︎」


だが俺の剣は、既に解き放たれ横一閃に振り切られていた。


「アレスさん、やっぱり貴方は手加減してましたよね。どうして魔法を使わなかったんですか?」


俺の剣先は、わずかにアレスの胴体を捉え、その動きを止めたのだ。


「魔法を使わなかったのはお互い様だろう。私の動きが見えていた様だね、タケル、君の勝ちだ!」


そう言ってアレスは、膝から崩れおちた。


「お、俺のか……ち……」


アレスは、俺を見て微笑んだ。


「元々マグナスシザーを倒して鍵を手に入れたのであればその資格は、充分にあったんだよ。いいかい決して自分を低く評価してはいけない。君は、今まで強い敵と闘って来たのだろう、それは全部力になっているはずなんだよ」


アレスの身体は、少しずつ光の粒に変わり始め、程なくして最後の光までもその色を失った。


代わりに塔の床に残された物は、小さなペンダントだった。


「これが"勇者の証"なんだろうか」


ペンダントは、虹色に輝いており、メダルの様な丸い形をしていた。


俺は、それを拾い上げ首に掛けた、なんとなく勇者になった気がするのは、アレスの言葉のおかげかも知れない。


「本当はもっと、たくさん教えて欲しい事があったんだけどな……でも、ありがとうございました、アレスさん」


俺は、消えてしまったアレスの思念体に深く感謝した。


それからメルを見て言った。

「ごめんな俺のせいでアレスさんが、消えてしまった」


「あたしは、もう少し、ひいおじいちゃんと話をしたかったなあ。でも長い間待っていたんだから、これで良かったんだと思うよ、タケル」

そう言ってイイねをするメル


メルは、優しい奴だ。俺に気を使ってくれているのが、痛い程伝わってきた。


俺は少し気が楽になってメルの頭をなでなでした。メルは、恥ずかしそうに眼を伏せていた。


他の仲間たちを見るといつの間にか一緒にイイねをしていた。


おいっ、お前らもかよ!


俺は、全員の頭を撫で回したと言うとなんだか語弊があるが、まあ、やっている事はその通りです……


「ぎゃーーぁああっ」

突然メルが、悲鳴をあげた。


「あ、貴方は、さっき消えたはずですよね!」

俺が振り返った時には、メルを抱え上げてぐるぐる回しているアレスの姿があった。


「何やってんですか⁉︎ あんたは!」


「いや、まだやり残した事が、あったようで消える訳にはいかない様だね、ははっ」


ははって、随分軽いな、おいっ!


「ひとつは、タケルにこの塔の真実を伝えなければならない事だが……もうひとつは……」


アレスは、大事な事を言わんとしているのか少し間を空けた。


「ついでにメルをぐるぐるする事だ!」

アレスが堂々と言い放った。

いや、確実に後者の方が優先順位が上だよな!


アレスは、俺たちを見てついでにだろうが塔の真実を語り始めたのだった。

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