第46話 『あふれるちから』
俺のパーティの仲間達は、商店街の『パンデミックス』というカフェに集まっていた。
アレスの塔の件の報告ともうひとつは、エルフの森で手に入れたチートの実をどうするか決める為にみんなに集まってもらったのだ。
エルフの街では、グライドにも手伝ってもらったので今日は、ヒナと一緒に呼んであった。
「みんな、エルフの森では力を貸してくれてありがとう。おかげで運良くチートの実も手に入ったし、アレスの塔の手掛かりも掴む事が出来たよ」
みんなに嬉しそうに俺の話を聞いている、グライドさえも満足そうににやけていた。
「よかったね、お兄ちゃんっ」
ヒナが、とびっきりの笑顔で微笑んだ。
この笑顔には、兄の俺ですらキュンとなる。さすが魔王キラーなだけはあるよな。横にいるグライドまでポーッとしているのは大いに気になるのだが……
「ありがとう、ヒナっ」
俺もタケルスマイルを返した。もちろん誰も得はしない。
「「「よかったね、"タケル" "あなたっ" " "ご主人さま"」」」
なにか余計なフレーズも聞こえたようだがとにかくみんながこうして無事な姿で喜んでくれているだけで俺は、満足だった。
「ええっと、チートの実だけど3個あるんだよ、半分ずつ分けるっていうのはどうかな」
最初から決めていた事だった。俺達全員で勝ち取った勝利の証なのだから、誰ひとり欠けていてもタージリックを封じる事など出来なかっただろう……
貰った実だけどね。
「タケルは、アレスの塔に挑むのだろう、だったらタケルが、すべてチートの実を食べるべきだと私は、思うのだが」
リンカの言葉にみんなが頷いた。
「いちばん弱い奴が、食べるべきだろ」
グライドまでが、そんな事を言った。
まったく、しんみりさせやがるぜ
「あれ、ちょっとまて、それは俺がいちばん弱いということを遠回しに言ってるんじゃ……」
みんなが、うなずいた! 息はぴったりだ。
「じゃあ今のレベルを測ってみるから……それから決めてもいいよね」
俺は、半泣きで力無くみんなに言った。
そして、お馴染みのレベル測定器の前に来たのだ。エルフの森では数々の強敵を倒してきたんだ。少しぐらいレベルが上がっていてもいいよね、てか、たのんます、マジで!
みんなの前で測定器に10ウェンを入れた俺は、右手に力を込めた。
いけええーーーーーーっ、俺!
どっかあああーーーーーーーーーん‼︎
レベル測定器は、爆発して粉々になった。俺の右手の魔力が暴発したせいだった。
あまりの出来事に俺達が、固まっていると店の中から先日のヘラクレスのような、おっさんが出て来た。
先ほどまでレベル測定器があった場所に何もないのを確認すると落ち着いた口調で言った。
「大丈夫か?」
あれっ、優しいぞ、ヘラクレス
もしかして見逃してくれるんじゃね
「300万ウェンの弁償の金」
大丈夫って、そっちかよーっ!!!!
「いま3000ウェンしかないんですが」
いまタケル史上最大のピンチだ。どこかにお金持ちがいれば。
いたっ!!!!
「グライド殿下、お金かしてくれさい」
ついに魔王軍の奴からお金を借りようとする始末だった。
グライドは、懐に手を入れて財布を取り出した。開いた財布にはクレジットカードしか入っていなかった。
あるのかよクレジットカードってこの世界に……て感心してる場合じゃないよ。
俺は、何かないかとポケットを探った。ポケットに入っていたのは、パンデミックスのポイントカードと財布、あとチートの実だけだった。
「おいっ、そこの手に持ってるのチートの実じゃないか」
ヘラクレスは、俺のチートの実を見て目を輝かせた。
「いえ、ク、クルミです。ハート型のにてますよね、あはははは……」
結局チートの実は、レベル測定器の弁償代として取られることになった……
「ゴメンね、みんな」
俺は、ア然とする仲間達に謝った。
「プッ、クククっ」
グライドの笑い声にみんなもつられて笑った。
「「「「あははははっ」」」」
俺もつられて笑った。
「やっぱり楽して強くなっちゃダメだっていうことだよ、お兄ちゃん」
俺は、ヒナの言葉に救われたような気がした。
アレスの塔の手掛かりについては、ヒナに説明してガブリエルさん達に手伝ってもらうことになった。空から光を辿れば場所はすぐにわかるはずだ。
「じゃあ、また今度頼むなヒナ」
「うん、わかった」
その後、ヘラクレスのおっさんのレベルが60になったとか、ならなかったとか風の噂で流れたのだった……ちっくしょう!




