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第3話 『魔王募集してますよ』

  "今は、まだ帰れない"とヒナは言った。一体何があったのだろうか。あいつが飛んで行った魔王城に行けばわかるのだろうか。


   俺は、朝からケインズの仕事を手伝っていた。手詰まり状態で気を紛らわせるのに体を動かすことはちょうど良かった。

  ケインズは、武具の販売や修理を生業としていた。


  俺は、修理の方法を教わりながら黙々と作業をこなしていった。

  防具などの傷んだ箇所に特殊なパテを塗り傷をふさぎ焼き付けをした後、表面にヤスリをかけ磨き上げて完成だ。


  傷んだ防具がピカピカになっていくのは見ていて嬉しいものだ。


「タケルは筋がいいな」

 褒められた俺は少し嬉しく思った。

 ケインズには子供がいない。奥さんに先立たれてからは、ずっと一人で暮らしているようだ。


「ここにずっといていいんだぞ」と言うケインズの言葉に俺は少しホロリとした。


   昼食を食べた後、俺は町の様子を観察することにした。そして今は、町の商店街に来ていた。ついでに買い出しを頼まれたからだ。

 たくさんの露店が並んでおり、いかにもと言う感じだ。


 俺が買い出しのメモを見て周囲を見廻していると……


「チョコレートないですか?」

 聞き慣れた声がした。


「おい、ヒナっ!」

 俺は、反射的に叫んだ。

  ヒナは、一瞬驚いていたがこちらに駆け寄り俺に抱きついて来た。


「チョコレートが食べたいの!」

 台無しだった……。


「お前どうして、この前逃げたりしたんだ?」

「だってガブリエルを切ろうとしたから慌ててたんだよ」


  ガブリエル? ああ、あのワイバーンのことか。だがガブリエルさんは、神様側の人だぞ、妹よ


「ヒナ、なんで帰れないなんて言ったんだ」


 "あたし魔王になりたいんだよ"


   俺は、混乱してよく意味がわからなかった。

「ヒヒヒ、ヒナっ! おお、落ちついてじ、じ、じぶんの言ってることが、わか、わか、わかってるか?」

「お兄ちゃん落ち着け‼︎ わたしは、至ってまともだよっ!」


  妹から事情を聞いた俺は、その事実に驚愕した。妹は、実は、俺より1ヶ月程前にこの世界に来ていたらしい、理由は分からないのだが。


 魔王城に直接飛ばされたヒナは、転送されて来た魔王後継者と間違えられそこで生活する事になったのだ。後継者は、7名おりその中で一番功績を挙げた者が最終的に魔王を継承する事になるそうだ。


「魔王は、なぜ後継者を探しているんだ?」

「あのお爺ちゃんは、もうダメだよ。すっかりまるくなっちゃって私のことも孫みたいに可愛がってくれてるよ。買い物も自由にできるし。」

 なるほど、後継者選びは周りの幹部連中が進めているらしい。そしてその先にある本当の目的……


「きっと魔王は、お前が美人だから可愛がってくれてるんだろうな。」

 俺は、なにげに言った。

「………」

「なんだヒナ、顔が赤いぞ、熱でも……」


「お、お兄ちゃんは、い、妹にそ、そんなこと言ったらダメなんだからあーっ‼︎」

 なぜか怒られた。


  俺たちは、魔王軍の真の目的を阻止する為、お互いのやるべきことを確認し合った。


 しかしそんなことを計画しているなんてただごとじゃない!

 俺たちだけの問題じゃないのだ。


  俺は、ヒナと別れた後、露店で買ったネギを振りかざし

 "俺は、勇者になる"

 と決意したのだった!

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