第38話 『チートを求めて』
「コンテストって今やってるの?」
ヒナから根本的、抜本的な質問が来た。
やってる前提でしか考えていなかったんだけどやってなければ帰るしかないのだ。
温泉の効果か、みんな肌もツヤツヤしてるしアレスの剣も手に入れたし結構満足感は、あるような気はしている。
やってないならもう帰るのもアリかと……
「だいじょうぶだよ、コンテストは、ずっとやっているみたいだよ」
メルが、ガイドブックを見ながらにこやかな顔をして言った。
そう無邪気な顔をされると本当に困る
「だけど地元のチャンピオンが、ほとんど優勝してるみたいだな」
なるほどリンカの言う通り確かにエルフの街の住人が優勝者に名を連ねていた。
「やっぱりそう簡単に手に入らないようにできてるのかな、まあとにかくエントリーに行ってみるか」
運営委員会は、街の大通りを抜けたところにあるらしい。
ちょこちょこ見物をしながらそこに行ってみることにした。リンカと俺は、ミスなんとかの剣を探すと言う目的もあったからだ。
「おい、タケルあそこに武器屋らしき建物があるぞ」
確かに剣の形の看板が出ていた。
店の扉を開けると美味しそうな匂いがした。
美味しそうだって?
「よし、3個下さい!」
リンカは、剣を型取ったアレスサブレを手に入れた……よし、じゃねえよ
「タケルっ、また武器の看板が出ているぞ」
やれやれ、今度は、何サブレだろうか。
「タケルっ、これは凄いぞ!」
「なにいっ」
エルフの男が、喉から剣を出していた……
大道芸だろうがあぁぁぁぁっ
凄いけど……。
そんな報われない時を経てやっと運営委員会に辿り着きました。
「私が運営委員のメリット・ランケットです。聞きましたよ、聞きましたよーっ、なんと、なんと、あのマグシザを倒した、そうじゃないですか」
早速、めんどくさい人が現れた……。
マグシザってなんだ。
「いや、それほどの事ではないよっ、ウオッホン」もちろんメルだ
ランケットは、俺たちを見廻したがグライドに気付くと驚いた顔をして動きを止めた。
「こ、これは、殿下もいらっしゃいましたか」
王冠の呪いの効果は、絶好調だ。
まがまがしくもキラリとした光を放っている
「ポッキーニ伯爵は、お元気でしょうか」
あれっ、なんだか様子がおかしい⁉︎
ポッキーニ? おかしみたいな名前だけに……
「その事は、口にするんじゃない」
グライドは、迷惑そうな顔をするとピシャリとランケットをたしなめた。
なんちゃってねーっ、嘘だよん……と言うセリフがある流れじゃないのかよ、これって
「失礼しました、ポッキーニ・グライド殿下!」
そう言って、ランケットは、ひざまずいたのだった。
沈黙が、まるで針の様に喉に突き刺さる。
誰もが、言葉を忘れたかのように愚鈍な体をなして時が過ぎていく。
ガラスを滑る霜露のようにゆっくりとした汗が滴り落ち床の石畳に色を添えて吸い込まれていった。
やがて張り付いた喉を剥がすように振り絞った声がする……
「「「「「マジでっ!」」」」
「はは〜〜っ」
メルはひざまずいていた、早いな、おいっ!
巻かれるの
「グライド殿下、ジュースをおごってくれさい」
「殿下っ、クレープが欲しいのですが」
「殿下、その場でジャンプして下さい、あ、小銭の音がしましたね」
グライドは、たかられていた。
最後のは、カツアゲだよな
「お前ら身分が分かったらもっと敬うところだぞ」
グライドは、キレて怒鳴ったが、どこか嬉しそうでもあった。
しかし、なんでアイツは、魔王軍にいるんだろう。ランケットの様子から相当な家柄だと思えるんだけど……
エントリーを済ませた俺と仲間は、颯爽と会場に乗り込んだのだった。グライドのおごりのクレープを片手に持ちながら……




