第37話『欲しがり屋ダメっ』
カニは、生でも美味しいが、焼いても美味しい。俺たちはいまバラバラになったマグナスシザーの破片を片付けていた、というか食べていた。
浴場は、ちょっとした炊き出しのようになっており自由に出入りできるように解放されていた。
近隣のエルフ達も古代種のマグナスシザーが気になるのか浴場には結構な人が集まり賑わっていた。
「タケルっ、ありがとう、えへへ」
メルは、魔法を使わずにすんだ事がよほど嬉しかったのかこのセリフを聞くのも5回目だ。
今は、美味しそうにカニを食べている。
しかし、美味しいのかなマグナスシザー、あれだけ大きいとかなり、おおあじの可能性は、あるよな
「お兄さま、お詫びにカニを持ってきた」
アリサが、焼いたカニを持ってきてくれた。
「あ〜ん、お兄さま」
えっ、お前が食べるのかアリサ!しかも、あ〜んってなんだ。
しょうがない、俺は、カニをつまんでアリサの口元に持って行った。まるで鳥に餌をやっている感じのアレだ。
アリサが、口を開けてパクッとやろうとした瞬間、光の筋がカニを撃ち抜いて消失させた。
「何奴 ⁉︎」
お前は、サムライか、アリサよ。
「カニムニエルのメルです、バーン!」
ソムリエな、小脇に抱えたカニの束は、なんなんだ。
「こちらは、30年物の赤ガニになります。ジャーン」
確実に腐ってるよなソレ
「あ〜んは、ゆずるわけにはいかない、ドンッ!」
効果音いらないし、そんなにかっこよくもないから
メルがカニの束を俺の口にブチ込もうとした。
「はい、タケルっ、あ〜ん」
さすがに、あ〜んの量ではない、窒息して、ち〜んとなる気がする。
カニの束が目の前に迫った時、鋭い斬撃でそれは切り落とされた。
「危なかったな、タケル、私が小さく切ったカニを持って来たから安心してあ〜んしてくれ」
リンカ、お前もかよ!むしろさっきだろ剣使うのは
リンカのカニの切り身は、確かに小さかったが、剣に刺してあった。手元が少しでもブレれば血だらけぐらいでは済まないだろう、どうやら相当な自信があるようだ。
「タケ、タケルルル、ああ、あ〜ん」
ブレまくっていた……
これは、ひどい!あと変な声出すのやめろ!
おいっ、リンカ目をつぶって剣を差し出すのやめろっ、やめろっ。
その瞬間突風が起こりリンカを吹き飛ばした。
ヒナかっ‼︎
「いや、俺だ!」
グライドだった、ドンッ!
あれっ、流れ的にヒナの番じゃ……
ヒナは、向こうでカニをほじっていた。
「おいっ、お前達、チートの実を盗りに来たんじゃないのか」
そうだ、そうだった、でも"とる"の漢字違うから、多分……ね
「それでは、第1回、チートの実確保の為の作戦会議を行います」
「議長っ!確保の方法を教えて下さい」
「良い質問だね、メルくん。チートの実を手に入れるには、盗む以外では、各コンテストの優勝者にならなければならない、その副賞としてチートの実は、与えられるんだ」
「お兄ちゃん、コンテストってどんな感じの」
「コンテストは、知力、体力、運をそれぞれ競うものに分かれているそうなんだがエントリーしないと内容は、わからないらしいんだよ。去年の体力は、長風呂ガマン大会だったらしいよ」
「まあ、だったらやってみるしかないな」
リンカの体力には、少し期待している。
とりあえず、戦力振り分けをしてみた
知力……ヒナ、アリサ
体力……リンカ、グライド(仮)
運……タケル(仮)、メル
こんな感じで俺たちは、コンテストに挑むことにしたのだった。
ストーリーを進める予定でした…本当に…。
その予定だったんですよ…本当に…。




