第35話 『なでて育ちますよ』
魔力値がマックス状態の時、メルの髪は、いつもの銀色からひかり輝く金色に変わる。これがスーパーメルだ!嫌でも期待が高まってしまう。
しかしメルは、封印の魔法なんか使えるのだろうか……
メルは静かに考えていた、危機的状況を打破するためどうするかを……。そうだろうメルっ
「タケルっ、髪の色と水着の色のどうかなっ、おかしくないかなっ?」
おかしいのは、お前の頭だ!メルよ
「よく似合ってるメル、というか何でも似合うなメルは、これで封印の魔法ができればさらに似合うんだろうけど」
メルは、照れてもじもじやり出したが、残念そうに言った。
「あたし封印の魔法は、できないんだよ」
「「「「「「ええーっ!」」」」」」
これには、俺たちと状況を見にきていた管理人さんまでが驚いた。
今の流れなら完全にできる子のはずだろう。
しょうがない、別の方法は……
「アリサっ、あいつに魔法攻撃は有効なのか?」
「ガイドブックによると……」
いや、載ってませんから、それ……
「出たとこ勝負かっ、やるしかないか」
マグナスシザーは、大きな爪を振り上げて温泉の天井を破壊し出した。
天井が崩れて大きな穴が空き、石のカケラが浴槽に降り注いだ。
マグナスシザーの上にもバラバラとカケラがあたり背中の平らな部分にもいくつかの破片が残っていた。
やつの体もどうやら石を溶かす程の高温では無いらしい。
「ヒナっ、あいつに氷の魔法を打ってくれないか、出来れば足元を狙って」
「わかったっ!お兄ちゃんっ」
ヒナは、俺の考えを察したのか高速で氷の魔法を放った。
「アイス・キューブ・ストリーーームっ!」
ヒナの手からキラキラとした氷の結晶がマグナスシザーに向かって放たれ足元を中心にして凍らせていった。
これで少し時間が、稼げそうだが残念ながら体を凍らせることはできないことも同時に確認できてしまった。
「よくやったヒナっ!ありがとう」
俺は、ヒナの頭を軽くなでてやった。軽くね
「フリージング・ハァーーーートっ」
召喚獣が暴走した……アリサだけと…
フレシールの放った魔法は、マグナスシザーを一瞬凍らせたがそれだけだった。
やつの体温でそれはすぐに溶け去ってしまった。
アリサが、物理攻撃を得意とする召喚獣を使えたなら別の方法もとれるのだが……
アリサは、しょんぼりした様子で俺に謝ってきた、召喚獣が叶わなかったこともショックだったに違いない。
「気にするなよアリサっ、あいつが異常に強すぎるんだよ」なんせ古代種だしね
俺は、ついでにアリサの頭もなでてやった。
嬉しそうにしているのは、きっと気のせいだろうと思いながら俺は、何気なくアリサの胸ではなくそこに張り付いている封印プレートを見た、封印プレートをね。
「あれっ、こんな文字書いてあったかな」
プレートの下の方に文字というか記号が書いてあった。矢印とひし形の様な……
ガガーーーガガーーーーっ
やばいぞ、また暴れ出したのか!
リンカと管理人が、台車みたいなもので中に残っている人を運んでいる音だった。
ありがたいけど、紛らわしいぞ
ガリガリーーーっ
今度は、本当に暴れ出した様だ、また天井を破壊しながら近づいてきている。
これはもう露天風呂になる勢いだ。
「タケルっ、あたし何とかできると思うよ」
メルが何やら覚悟を決めた人が、いうようなかっこいい感じのセリフを口にした。
「たけどお前、封印の魔法はできないんじゃなかったっけ、えっ、ま、まさかあれを、あれをつかうのか」
俺も負けじと脇役の人が盛り上げる為に言ったりするような感じのセリフを口にしてみた。
「うん、使いたくないから迷ってたけど、やってみる、これなら封印も魔法攻撃が効かないとしても問題ないからねっ」
あれっ、なんか本気っぽいんですけど……
「何をやろうとしてるんだよ、メル」
何だかあまりいい予感がしない。
「あたしが使うのは、時を戻す魔法だよ」
ただごとじゃないだろう、それって…
メルは、誰よりも仲間思いな奴だ、他の方法で何とかならないものか迷っていたのは本音のところだろう。いったいこの魔法にどれ程の代償があるのだろうか……
ー だけど聞かない訳にはいかないよな ー
「その魔法を使ったらメルは、どうなるんだ、命に関わることじゃないよな」
メルは、黙って頷いた。
しばらく魔法が使えなくなるとか、体が動かなくなるとかそういうものだろうか。
「じゃあ、いったい……」
「うん、……2歳若くなる……」
俺は、かなり驚いた……




