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第30話 『エルフ温泉につれてって④』

 エルフの街は、想像していた通り芸術溢れる美しい街だった。建物は、嫋やかな曲線を帯びそこに細やかな彫刻が施されていた。街中の小川を流れる水は、限りなく透明で優しい日の光を受けきらきらと反射していた。

 赤い石畳の広場には、いくつかの英雄とおぼしき彫像が見られこの街の古い歴史を物語っているようだった。


 というのがガイドブックに書いてあった……


 俺のボキャブラリーでは、赤っぽいいい感じの街だった、という説明になるだろう。


 いや、俺にとって街の説明なんかどうでもいいのさ、やさぐれてなんかいないのさ。


「さっきから、お兄様は、ひとりごとが多い、暇なら私の頭をなでて欲しい」

 いや、そこまで暇じゃないから、召喚獣よ


「タケルっ、あっちでデジカメ撮ろうよ」

 おいおい、デジカメなんかないだろう、この世界に……


「わたしが、持ってるよ、お兄ちゃんっ」

 どこからか、可愛い声がした。あれっ、あれは、ヒナじゃないか、どうりでかわいい声のはずだ。だって俺のかわいい妹なんだから当然だろう。


「タケル、さすがのあたしでも引くわー、それ」

 えっ……なんだメルっ

「なんというか、ちょっと、キモいぞ、タケル」

 えっ…リ、リンカ


 向こうでヒナが、真っ赤になって顔を手で覆っていた。


 ええーっと……


「というのが、ガイドブックに書いてありました……」


「「「ないわっ!」」」


 俺は、さっきの検査で外していた指輪をそっとはめたのだった……

 しかし、ちょくちょくはめるの忘れるよな俺、もとの世界で指輪なんかしなかったからなぁ


 しかし、ヒナのやつ、あの時のデジカメ持って来てたんだ。充電なんかどうしてるんだろ……

 きっと不思議な力でという設定だろう。


 ともかく、なにやらシュッとしたスタイルの人の石像の前で写真を撮る事になった。


 カメラマンは、もちろんグライドだった。

 これは、別に意地悪じゃなくて本人が写真を嫌がったせいだ。

 なんか魂が、吸い取られる気がするらしい。


 撮った写真を再生するとなかなか良く撮れていた。他にも向こうの世界の写真が何枚かあった。ヌメヌメしたやつとか……


「おいっ、これはっ‼︎」

 写真を覗き込んでいたグライドが、驚いて声を出した。


「どうしたグライド、ヌメヌメの正体がわかったのか‼︎」


「何だ、ヌメヌメって、違うだろ!この人影の事を言ってるんだよ!」


 それは、俺とヒナがこちらの世界に来るキッカケになった人影だった……

 あの時ヒナは、驚いてシャッターを切ったのだろう。


「これは、シュベルトだ!ぼやけているが間違いない」

 グライドは、なぜか緊迫したようすだ。


「まるで音楽家みたいなやつだが……」

 一方、よくわかっていないのんきな俺。


「そうだ!音楽家だ!」

 音楽家なのかよっ!俺が言ったんだけど


「それは、聞き捨てならない、お兄様っ」

 横笛のアリサが言った。あと張り合うとこ間違ってるから……


「ただし、こいつは、闇の音楽家だ!」


「どういう事だよ、危険なのか、こいつ」


「ああ、こいつは、音で敵を殺す、ドラゴンですらな」

 ええーっ、どうすんのこれ、ヤバいじゃん!


「お前たち、こいつに会って良く生きてたな、今は、調査活動で城にはいないが、昔、俺はこいつに殺されかけた事があるぞ」

 グライドですら、叶わないらしい。


 ヒナも初めて見たようだ。すごく不安そうな顔をしている。

 よし帰るぞ、向こうの世界に、ヒナっ!


「どうやら、お兄ちゃんの倒すべき敵が見えてきたね」

 ヒナは、俺を期待するような目で見ていた。


「わかったよ、俺が倒すよ、心配はいらない」

 仕方ない、兄は、妹に弱いんだよなあっー


 そして、ヒナのさっきまでの不安そうな表情は笑顔に変わったのだった。

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