第28話『エルフ温泉につれてって②』
いよいよ、エルフ温泉もといエルフの森に行く当日を迎えた。
移動手段は、もちろん天使のようなワイバーン、ガブリエルとミハエルだ。
ヒナは、ガブリエルに乗りながらゆっくりと降りてきた。
もう一方のミハエルに乗っているのはグライドだろう。
ヒナが降りてこちらに駆け寄ってきた。
そして、グライドも降りて……
「あっ、王子様だっ」
メルが、叫んだ。
貴族の服装に呪いの王冠を付けたグライドは、もはや王子様にしか見えなかった。
「良くお似合いですよ、王子っ」
俺の言葉にグライドは、詠唱を始めた。
慌てて謝った、調子に乗りました。
「まったく、お前たちは、長生きしないぞ」
あれっ、まだ詠唱が……
「闇に潜みし黒き魂よ寂寥の鎖を解きて
大いなる力を我に示さ……」
それダメなやつだろ!俺は、慌ててアリサを止めた。
「一応紹介するよ、これがグライド王、グライドだ」
「こっちが、リンカ、アリサ、メルだ」
「わたしが、グライド・スレーヤーのリンカだ」
ええーっと、随分ピンポイントのスレーヤーだよね、リンカさん
「わたしは、アリサ、横笛のアリサだ」
思い付かなかったんなら言うなよ
「メルだよ、タケルのメルだよ」
誤解を招く言い方は、やめろ!タケルパーティのだろ!
3人から睨まれてるよ、俺
「お前、タケルだったのか」
グライドは、今、俺の名前を知ったようだ。
そういえば夢で名乗っただけでした。
「わかった、お前達に危害を加えない事は約束する、今日は、よろしく頼む」
「いいだろう」
何で偉そうなんだ、メルっ
「それでは、毎回揉めるので今回はどっちに乗るかくじ引きで決めるな、それと俺とグライドだけは、同じとこに乗るから」
「ええーっ!」
今回は、お前たちの意見は聞かない。
早く出発したいからだ。
「タケル、お前毎回こうなのか」
なぜかグライドだけが気の毒に思ってくれた
結構いい奴に思えてきた……
俺は、紙に線を描いて当たりを一個入れた部分を折り曲げた。
それぞれが、自分の選んだ線の上に名前を書いた。シンプルで公正なくじ引きだ。
俺は、くじを開いた。
「やったあーーーーーーーーーーっ」
喜びすぎだろ!メルが当たりを引いた。
メルは、喜びながらガブリエルの背中に飛び乗った。
さあ、出発だっ!
「まったあーーーーーーーーーーっ」
メルが叫んだ、と言うか吠えた。
「おかしい、おかしいですよ!裁判官!」
誰が裁判官だ!
ガブリエルには、4人が乗っていた、俺とグライド以外の……
メルが移動し、他の3人は、渋々ガブリエルに乗ることになった。ガブリエルさん本当にすいません。
今度こそ出発だっ!
2体のワイバーンは、大空高く飛び上がった。幸いに空は晴れ、絶好のエルフ日和だった。
メルが背中にくっ付いてくる度に3人の痛い視線が飛んで来た。それをグライドは、嬉しそうに見ていた。
移動中に少しだけ魔王城の話をした。どうやらグライドは、魔族ではなく人間らしい。高い魔力を持っていたグライドは、ヒナと同じくスカウトされたようだ。他の奴らは、魔族だから俺のように甘くないとも言っていた。
そして、ヒナは、相当、魔王に可愛がられているらしい。さすがは、俺の妹だ。
そんな話をしているとようやくエルフの森が見えてきた。
スゲー!大きな森の中に街が作られている。
俺の想像をはるかに超える規模のものだった。
さすがに、グライドとメルも驚いていた。
エルフの街の真ん中にひときわでかい木が、生えていた、あれが精霊樹だろう。
俺達は、ついにエルフの森にたどり着いたのだ。




