第24話 『偉大なる冒険王』
「いいか、お前ら、俺達は今日公園には行ってない、そして何も見ていない、すべてはまぼろしだったんだ。わかったなっ」
「「「はいっ、監督!」」」
俺の部員たちは、聞き分けが良かった。
俺達は、公園の近くのアリサの家に来ていた。
表現力の乏しい俺は、人物や周りの様子の描写が非常に苦手だ。
大抵誰かの家に行ってもテーブルの椅子に座っている事になっている。
という事を踏まえながら説明すると俺達は、いま、テーブルの椅子に座っていた。
あえて付け加えるなら白い大きな丸テーブルにオープンカフェ風のチェアが5脚セットされており、俺のすぐ右隣には、アリサ、リンカの順、左隣には、魔女っ子が座っていた。
アリサは、いつものフチに黄色いラインの入った白っぽいフードローブを着ており今は、フードを取って栗色のショートヘアを晒していた。幼い可愛らしい顔立ちはアリサの妹キャラにマッチしていた。
その隣にいるのがリンカだ。戦闘モードの時以外のリンカは、極端に女の子らしい格好と振る舞いをする。今日の服装も白にレースをあしらったカジュアルドレスを着ている。それに合わせて髪もいつものシュシュではなくて白のリボンで上にまとめ上げていた。背筋をピンと張って座っている様子はどこかのお嬢様のようだった。
そして、俺の右隣にいるのがメルだった。いつものメルだ。安定のメルだ。
次に室内のようすは……
「ちょっと待てーーい!」
メルだった。
「何であたしのは、短いの、あたしだってお気に入り着てきてるのにっ!」
メルは涙目になっている。
あれっ、どうもおかしい、俺やっぱり声に出していないよね、今の……
「お兄様は、最近無意識にテレパシーを使っている。面白いから内緒にしていた」
アリサがさらりと重大な事を言った。
ええっ、まさか聞こえてたの俺の心の声っ!
「聞こえていた。これ以上は、メルが傷つく事になる」とアリサ
「何であたしが傷つく前提なのよっ」
マジか!会話が成立している!
アリサは、席を立って別の部屋に行き小さな箱を持ってきた。
そして箱を開けるとそこには指輪が入っていた。
なぜか、アリサの顔が赤くなった。
「こ、これは、お兄様が考えているような婚約指輪では、ありません」
俺の心は、ダダ漏れだった……
アリサは、指輪をはめるように言った。俺は、素直にそれに従った。
「これでメルは、大丈夫」
アリサは、にっこり微笑んだ。
「何であたし限定っ!」
どうやらテレパシーをカットする魔道具のようだった。
「タケルっ、あたしもほめて欲しい」
魔女っ子は、ついに強要してきた。
「そうだなぁ、メルの今日のワンピース黒くてとてもよく似合ってるよ。胸のところに『魔』って書いてあるし」
普通にしてれば、可愛いんだけどなメルは……あっ、今の聞こえて無いよな……
「やったあ、タケルにワンピほめられたーっ」
「良かったね、メル」リンカが言った。
どうやら今ので、この指輪の効果が確認できたようだ。
しかし、これだけで随分時間をかけてしまった。おかげで謎がひとつ解けたけど。
俺は、さっきからアリサに聞きたいことがあったのだ。
「アリサ、今日はアレンさんは居ないのかい」
「今日は、いない。何か父に用か」
「ああ、アレスの塔の事を知ってるかなと思って」
「それなら、奥の書斎に本があったかもしれない、良かったら案内する」
俺達はアリサに案内してもらい奥の書斎に入った。
「えっ、これもう図書館だろ!」
奥の書斎には、膨大な数の本が並んでいたのだった。




