第17話『妹成分たりてます?』
「わたしは、アリサ。あなたは誰」
フードを取った女の子が感情のこもっていないような声で言った。
「こんにちはアリサ、俺はタケル。こっちは妹のヒナだ」
「そうですか、認識しました」
アリサは、静かに言った。
図書館ではお静かになのだろう。
「あの、あなたが読んでいるアレスの書なんだけど少し貸してもらえると嬉しいんだけど」
「わかった少しだけならいい」
「ありがとうアリサ」
ヒナは、アリサから本を受け取ると開いているページを確認した。
もとのページに戻して返す為だ。
「あれっ、このページって」
「どうした、ヒナ」
「うん、右と左のページ数が飛んでるみたいなんだ、お兄ちゃん」
妹の言葉に俺は本を覗き込んだ。
「どれどれ、ほんとだ誰かが綺麗に破いたみたいだな」
「わたしは、こう言うの結構許せないんだよね」
「さ、最初から無かった」
アリサは、平坦な口調で言ったが明らかに動揺している。怪しい!
俺とヒナは、アリサをじっと見た。アリサは、俺たちと目を合わそうとしない。
「ほ、本を早く返して欲しい」
アリサは、目を合わさない。
ん!何だ!アリサのフード付きのローブの右袖に筒状に丸めた紙が見えた。
はは〜ん、なるほど……
俺はメモを取るために借りたペンをアリサの足元に転がした。
「あっ、しまった。アリサ悪いけど拾ってくれないか」
「わかった、お兄ちゃん」
アリサ、それは年上の人に対するお兄ちゃんという意味でいいんだよな⁉︎
アリサが、足元のペンを取ろうと右手を伸ばした時、ストンと筒状の紙が滑り落ちた。
「あっ!しまった」とアリサ
俺とヒナは、ジトッとアリサを見た。
「ここに、あったよ。お兄ちゃん」
アリサは、筒状の紙を持ち満面の笑みを浮かべた。さっきまでの無機質キャラはどこいったんだよ!
あと、お手柄みたいな設定にならないからな!
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
アリサは、素直に謝った。
どうやら、妹キャラではあるらしい。
「本のことはいいわよ、でもお兄ちゃんをお兄ちゃんって言わないで!わたしのお兄ちゃんなんだから!」
ヒナが興奮して怒鳴り込んだ。
本のことはいいみたいだ。
さっき許せないって言ってたような……
「ヒナ、もういいよ」
「だって、だって……」
ヒナは、言いかけて周りの人達の視線に気付いた。
そしてこれが本当の妹だ、とばかりに小さい声で言った。
「ごめんなさいっ、お兄ちゃん」
図書館ではお静かにだった……
全くの偶然かもしれないがアリサが破いたページは、黒い使い魔に関して記述している部分だった。
俺は、どうしてこの部分が欲しかったのかアリサに聞いてみた。
「うん、どうしたら使い魔になれるかと思って……あと黒いし」
使い魔は、ここでも大人気だった。
しかも色関係あるのか!
「わたしもわかるよ。やっぱり黒だよね」ヒナ、お前もか!
ひとまず俺たちは、文献に目を通す事にしたのだった。




