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第16話『アレスの書』

 俺達は、古文図書館に足を踏み入れた。入り口の金属製の柵でできた扉を開けるとすぐ図書館の木の扉があった。


 その扉を押して中に入るとすぐに受付があり壁がわの本棚にはギッシリと本が並んで詰められていた。膨大な量だ、目的の本を探すのはとても無理だろう。


 ひとまず、受付のおば、お姉さんに聞いてみよう。


 受付には妙齢の眼鏡を掛けたお姉さんがいた。いかにも図書委員と言ったところだ。

 このミス・ブックなら瞬時にして目的の本を探してくれるに違いない。


「あのーっ、アレスの本を探しているんですが」


「はあっ? 私に言ってるんですか」

 あれっ、なんかイメージと違う。


「はい、アレスの本を探したいんですよ」

 そう言うとミス・ブックは、クスクスと笑い始めた。


「あの、なんか変な事言いましたか?」


「だって私はここの職員じゃないから」


「えっ⁉︎」


 俺とヒナは、検索用の水晶玉の前にいた。さっきのミス・ブックに教えてもらったのだ。もちろん丁重に謝罪したことは言うまでも無い。


 ともかく早速検索開始だ!

 水晶に手を置いてアレスとつぶやいた。『図書館ではお静かに』だからだ。


「お兄ちゃんなんか出てきたよ。」ヒナが水晶玉を覗き込んで言った。

 いくつかの候補が浮かび上がっていた。


 ①ケアレスミスの無い魔法レシピ

 ②あれっスッと治る四十肩

 ③ひとりで出来たよ、ファイア・レスキュー

 ④さあレストランは、森の中

 ⑤アレスの書

 ⑥アレン・スペンサーの使える小話


 検索結果はこんな感じだった。


「お兄ちゃん、ひどいね」

「ひどいな、これ」


 水晶玉の検索精度は改善されるべきだと思う。マジで!

 しかも⑥に至っては全くの別人だった。誰だよアレン・スペンサーって……


「ちなみに④もアレンさんが書いてるみたいよ、なんかサバイバル・マニュアルみたいね」

 どうやら水晶はアレン押しのようだ。


 該当するものは、ひとつだった。


 "アレスの書"


「ええっと、この本の場所は……」

 水晶は、棚番号ではなく閲覧用のテーブル番号を表示していた。


「これってもしかして、誰かが借りてるってことかな」ヒナが、館内を見廻しながら言った。


「そうかもしれないな。貸し出し中じゃないだけまだマシか」


 俺達は、水晶が表示した7番テーブルに向かった。


 7番テーブルには3人が座って本を読んでいた。

 ひとりは、雑誌を読んでいた。魔法グッズなんかの広告が見えた。


 もうひとりは、小さい子で絵本を読んでいるようだった。タイトルの一部にマジギレと見えたのでおそらく大魔法使いレイラの絵本だろう。


 最後に、フードを目深に被った人物が古びた書物に目を通していた。


 俺とヒナは、目を合わせて頷いた。おそらく"アレスの書"だ。


 ヒナが声をかけた。

「あのう、すいません。今見ているのはアレンの書ですか」

 アレスな! サバイバル必要ないから!


 その人物は、フードを取って俺達を見た。栗色のショートヘアの女の子だった。

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