第14話『黒き使い魔』
「その昔、マドラスティック・ジメントリオル・ギャラベラス・レイラと言う大魔法使いがいたわ。彼女は、全盛期の魔王に匹敵するほどの戦闘力を持っていると言われていたのよ」
俺たちは、黙ってミレシアの話を聞いていた。俺の魔力"ゼロ"のことに関係する話らしい。
大魔法使いが出てくる時点であまり関係のある話ではなさそうだけど……
「その戦闘力と激しい気性に対して人々は、彼女の名前の頭文字を取ってこう呼んだわ。マ・ジ・ギ・レ と……」
えーっと、この世界にそんな言葉は無いですよね
「マジギレのレイラは、世界を滅ぼせる程の力を持っていたのだけれどある時からパッタリ表舞台に出てこなくなったのよ」
なんかレイラの方が魔王っぽいような……
「どうしてそれほどの魔法使いが!まさか魔王軍に」
「恋の魔法にかかったのよ!」
えっ、ここでそれっ!
「レイラは、ある男に恋をしてひとりの女の子を産んだわ。
それが、わたしミレシアなのよ。
レイラは、世界の事よりひとりの男との愛を選んだんだわ」
「すごく素敵な話ね。おばあちゃん」メルが感動して言った。
俺も泣きそうだ、だってカスってもいないよね魔力"ゼロ"の話
「それでおばあちゃん、タケルの話なんだけど……」
おっ、いいぞ!メルっ
「まだ、早いっていうか……」
おいっ!ちがうだろー
「そうね。まだあなたには時間があるものね。じゃあついでにさっきのタケルの魔法の話をしましょう」
遂に話が核心に進んだ、ついでだけど。
「レイラが恋に落ちたその男が"ゼロ"の勇者 アレス、私の父にあたる人よ」
"ゼロ"の勇者、いったいどんな意味があるんだろう。
「アレスは、タケルと同じく魔力が"ゼロ"だったの、でも彼は、強力な魔法を使いこなしていたわ。魔力のない彼がどうやって魔法を使えたか、それは借りていたからよ」
「借りていたって、魔法をですか?」
「いえ、借りていたのは蓄積された魔力よ。つまり近くに魔力の高い者がいればその魔力を一時的に吸収して自分の魔法として打ち出すことが可能なのよ」
「つまり、魔力の高い敵の魔力を奪って攻撃することも出来るわけですか」
「そういう事になるわ。だから"ゼロ"の勇者はウィザードキラーでもあるのよ」
「ウィザードキラー……」
「だから魔力値が高い者が集まるところでは魔法は強力になり、逆に魔力値がほとんどない者しかいなければ魔法は使えないでしょうね」
そう言えば!俺は、この前リンカと討伐に出た時のことを思い出した。
「じ、じゃあアレスさんは、ひとりの時は、魔法が使えなかったんですか?」
「そうでもないわ」そう言ってミレシアは、ニヤリと微笑んだ。
何だか俺の質問を見透かしていたようだ。
「アレスは、いつも黒の使い魔と一緒だったから……」
「く、黒の使い魔っ!」
メルが驚いてイスから立ちあがったのだった。




