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第142話 『上質の証明』

「ええっ! ホサマンネンさん!?」


「隊長殿、このホサマンネンどうやら持ってるようですな。このシリアルな状況に駆けつけるなど正にプロフェッショナル、いやヒーローとしか思えません!」


それを言うならシリアスだよ! むしろアンタからはプロテインの臭いしかしねえ!


とは言え、ホサマンネンさんに続いて続々と魔法陣から抜け出してくる味方の兵士達は、実際頼もしかった。


これで数の不利は、完全に解消されたのだった。


「いやはや、エルフの森で魔族の残党を探していたら魔法陣を使って逃げる輩がいるではないですか。追いかけて見ればこのありさまで……」


シュベルトが用意していた伏兵達は、奴が唱えた魔法陣で城内への転移を試みた様子だがそこをホサマンネンさん達に見つかったのだろう。


場の状況を把握する為かキョロキョロと辺りの様子を探っていたホサマンネンさんだったが、その内に何かを視界に捉え言葉を詰まらせた。視線の先にあるものは例の"虹色の天使"だった。


「タ、タケル殿、あ、あれは……もしや!?」


「ホサマンネンさん、アレが何か知ってるんですか!?」


「い、いえ、しかし……あれほどの輝き……さぞかし上質な筋肉オイルを使っているのでしょうか。ああっ何という神々しい光沢でしょうか!」


ああっ、じゃねえよ! 真面目に聞いた俺が、馬鹿だった……

確かに肌の色も髪の色も虹色だけど脂ぎってねえから!


「ホサマンネンさん、そんな事は(どうでも)いいんで魔族の兵士達の相手をお願い出来ますか?」


「あ、ああう、も、もちろんですとも!! ゴホッ、ゲホッ」


虹色天使(光沢)が気になりながらもドンと胸を叩くホサマンネンさん。叩き過ぎてせき込んでるけど。


しかし相変わらずシュベルトは、余裕の表情で辺りを眺め回していた。余程味方の戦力を信頼しているのかそれとも……





「はぁああああーーーーっ!」


一方、アンデッドと剣を交わしていたリンカが、吠える。金属音とともに辺りには激しい火花が散る。


リンカは、刀身に更に魔力を注ぎ、炎は、蒼く輝きを増した。恐らくそれは、浄化の効果の込められた炎色でこの戦いに決着を付けようとする彼女の意志を示しているのだろうと思われた。


警戒するアンデッドは、間合いを取り剣の打ち合いを避けるよう魔法での攻撃に切り替える。連続で撃ち放たれた漆黒の矢は、リンカを捕らえんと追尾する。


機動力を削り取るかの様に足元へと狙いすまされた魔力を帯びた矢を避けながら間合いを詰めるリンカ。


「それじゃつまんないよ、剣での撃ち合いじゃないんだね」


その言葉をきっかけにアンデッドの懐に入り込んだリンカの剣は、蒼炎の軌跡を残して振り払われた。


断末魔を上げる暇も無く分断されたアンデッドの身体は炎に焼かれやがて消失した。


「やったぞ! リンカ!」


「ええ、もう少し骨のある奴だと思ったんだけど結果オーライだね!」


リンカは、親指を立て俺の方へ突き出す。

いやむしろ骨しかないんじゃね、アンデッドだし……


これでようやく2体の強敵?を打ち倒した事になるのだが、チンアナゴ風の魔物を相手にしていたヒナとグライドは、大丈夫か?


「私は、もうちょっと炙った方が、香ばしいと思うよ」


「そうだな、確かにヒナの言う通り生焼けじゃ小骨も気になるかもしれない」


道理でさっきから香ばしい匂いが、漂っていた筈だ。

もはや結果は、言うまでもないが3体目撃破っ!


魔法陣から転移してきた魔族兵士達の数もホサマンネンさん達のお陰でみるみる減っていく。

さてと後は、虹色の天使、そしてシュベルトだ。


「お兄様、アレは私に任せて欲しい」


普段あまり主張しないアリサだが何故か虹色の天使には強い関心を見せた。


「珍しいな、お前が、そこまでこだわるなんて」


「はい、お兄様。あれは全属性の魔力を備えた精霊姫『フィジーク』です。愛称はテラテラだと聞いてます」


愛称はいらねえだろ! フィジークもどうかと思うがテラテラって付けたの誰だよ!!


「全属性って……強敵じゃねえのか? 倒せるのかよ!?」


「お兄さま、倒すのではなくアレを我が掌中に収めたいのです!」


完全にキラキラ(テラテラ)しているから欲しくなったに違いない。案外召喚士は、脳みそが振り切ってる奴が多いから相性は良いのかもしれないが……


「つまり召喚獣として契約したいってことか?」


「ええ、でもそれにはアイツに勝たなければなりません。私本人(……もしくはパーティメンバーのリーダー……)が勝たなければなりません!!」


「そうか、なんだか途中は良く聞き取れなかったが、とにかく勝てば良いんだな!」


「そ、そうなんです、お兄さま。勝てば良いんです!」


何故かエヘヘという感じの笑みを浮かべるアリサに悪い予感しかしない俺。


「しかし、精霊姫って言うからには強えんじゃねえのか?」


「だから手伝って下さい、お兄さま……ダメ……ですか?」


目をうるうるさせながら俺を見るアリサ。

コレ、良くあるやつだ。チョロい主人公が結局助けちゃうやつ……だがそんな都合の良い考えなんて俺には、すべてお見通しだぜ。


「ま、まあチョッピリなら……」


ここは厳しくあくまでほんのチョッピリの手助けだ。断じて俺は、チョロくないはず……だ。


ぱああっと笑顔に変わるアリサの表情。


「ちょっとだけだからな!!」


「ありがとう、お兄さま!」


「ああ、うん、しょうがない奴だなぁ」


テラテラに対して全力で剣を構える俺。


「チョ……ご主人様、お気を付けて」


「ああ、任せとけマシュ……って!?」


アレっ、なんだ今の『チョ』って?


「お願いします、お兄チョロ」


おい、隠せてねえだろ、アリサっ!


とは言え、この精霊姫を倒さなければ先に進まないのも事実だ。しょうがねえ。


テラテラは、俺の動きを敵対行動とみなしたのか目の前に作り出した鋭利な光の魔弾を射出した。それは俺のスピードでもやっと避けられる程の高速弾となり城の壁に炸裂した。そしてどこよりも頑丈な造りの王の間の壁を破壊して大きな風穴を空けた。


「マジ……かよ!!」


「タケルっ! た、大変だよ!!」


風穴を指差し青ざめた顔のメル。


「どうしたっ! メルっ!」


「あわわわ、こりゃあ、とんでもない額の弁償だよ!!」


一体いつから戦闘に弁償要素が追加されてんだよ!

いやこの城に来てからずっとあるよな……


「そう言えばお前のビームで空いた穴の弁償もな」


「うぎゃあああああああーっ!」


頭を抱えて床に崩れ落ちるメルの姿。


弁償という新たな足枷を掛けられた俺達は、ジリジリとピンチへと追い込まれるのだった……






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