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第13話『魔法の限界』

俺は、メルと一緒に森の中を歩いていた。

 メルのおばあさんである大魔法使いミレシアのところに向かうためだ。

 メルは、おばあさんへのおみやげにリンゴを持っていた。

 しまった俺も何か持って来れば良かった。

 森をキョロキョロ見廻していると手頃な棒切れが落ちていた。


 メルにおばあさんの杖にどうかなと聞くとおばあさんは冗談が通じない人だよと言われた。

 ですよねー。


 諦めた俺は、捕まった囚人の様にメルの後に付いて行った。


 しばらく森の中を進むと大きなお菓子の家が見えて来た。

 魔女の家は、みんなお菓子の家なんだろうか?


 家の扉の前に着くとメルは叫んだ。


「おばあちゃん、こんにちは、メルだよ」

 ギギーィ、重い音を立てて扉が開いた。ゴクリ


「ぎゃーあ!」そこには悪魔がいた。俺は、驚いて叫んだ。


「やったね!大成功だよ、おばあちゃん」

 おばあさんらしき人は、ガッツポーズを取っていた。

 そして、ふうっと言ってヤギの様なマスクを取った。


「あれっ、おばあさんだよね」

 俺はメルに聞いた。

「そうだよ」

 ミレシアは、とてもおばあさんには見えなかった。髪の色と顔立ちはメルに似ておりメルのお母さんかそれより若い歳に見えたのだ。

 そして行動までメルに似ている、

 いや、メルが似たのだろう。


「遠いところよく来たね、さあ中に入りなさい。」

 俺とメルは、家の中に入りテーブルの椅子に座った。


「はい、おばあちゃん、おみやげ」メルがリンゴを渡した。

 俺もポケットの中のものをダメ元で差し出した。


「あら、これはアビスンの目ね。ちょうど欲しかったのよ、ふたりともありがとうね」

 首の皮一枚で繋がるという言葉が体感出来た瞬間だった。


「ケインズさんのところでお世話になっているタケルと言います」

 俺はあらためてミレシアに挨拶した。ケインズの名前を出した時、軽く舌打ちをしたのは気のせいだろう。


「さっきは、盛大に驚いてもらってわざわざ呼んだ甲斐があったわ」まさか、その為だけに呼ばれたのだろうか。


「実は今日来てもらったのは、この子の手紙の件なんだけど……」

 やっぱりその事が理由だったようだ。俺は、少し緊張した。


「この子の手紙のあなたの名前の前にいちいち『あたしの』って付いているんでどんな人か気になって……」おいっ!メルっ


 メルをにらむと、でへへという顔をしている。これは、怒りづらい


「そしたら、あんなに驚いてくれるいい人だなんて……メル、いい人を見つけたわね」

「でしょ」

 でしょ、じゃないだろ!評価の基準がまったくわからん


「あの、その手紙に書いてあったと思うんですけど俺の魔力"ゼロ"の事なんですが」


「そう言えば、そんなことが書いてあったような」ミレシアは遠い目をした。

 これなら怒るタイプの人だった方がマシだったかもしれない。


 ちょっと待ってと言ってミレシアは別の部屋に行った。

「どうなんだろう、メル」

「あたしもわからないけど、おばあちゃんは、知らない時は即答だから何か思い当たる節があるみたいだね」


 ミレシアが持って来たのは水晶玉だった。

「もう一度、魔力値を測ってもらえるかしら」


 俺はまた水晶に手のひらを載せた。同じようにピピと音が止まるとやはり数値は、ゼロだった。

 メルの家の魔力計が壊れていたわけではなかったのだ。


「今度は、魔力計に手を載せたまま、魔法を使ってみてくれるかしら、そう水の魔法がいいわ」どうしてそんなことを?


 俺は、あまり使ったことの無い水の魔法を詠唱し床に向かって解き放った。


 ダッパンっ、床は一時的に水で溢れた。まるで洪水の時のように


「そういうことか、ふふふっ」

 ミレシアは、楽しそうに笑った。


「メル、あなたは、本当に素敵な人を見つけたみたいね」


 メルは、でへへという顔をするのだった。

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