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第126話 『ムチムチですね』

「始めっ!」


メルが開始の合図を告げた。

てか、お前の役目じゃないだろ!


それを嬉しそうに目を細めて見ている魔王もどうかと思うが……


ともかく対戦が始まり互いの姿が消え……

えっ、消えてない!

向かい合ったキュレリアとちび魔族は、そのままの位置どりで微動だにしていないのだ。


「ふむ、これは超高速の残像ですな、タケル殿! しかし、この私の動体視力を持ってしても追うのが難しいとは!」


ホサマンネンさんの動体視力は、蝶々並みだろうが、俺の目にも追えない程の高速移動は、驚きだ!


「ちょっと、あんた動きなさいよ!」


痺れを切らしたかの様なキュレリアの声。


あれ!? これってもしかして……

動いてなかったんじゃね!

ホサマンネンさんの言葉を間に受けた自分を穴に埋めていっそモグラとして暮らしたい!


そんな俺のショックを知る由もなく戦いは続いていた。



「私は、ローゼンダーク。あんたという名ではありませんわ。怖さで待ち切れないなら先に攻撃してもらって構わないのよ」


「くっ、いちいち感にさわるチビだわね! どう料理してやろうかしら!」


その瞬間、キュレリアの姿が消えた。恐らく速さだけを見ればバルセイムの兵士の中で最速の機動力を誇るのだが言動はちっとも誇れないのが残念だ。


畳み掛ける様にローゼンダークに攻撃を仕掛けるつもりに違いない。トントンと地面を震わせるリズミカルな音だけが遅れて響いてくる。


その直後にローゼンダークの姿も消え、トントンという音はステレオとなる。



やがて姿を現したキュレリアは、右手に皿を掲げていた。


「どうかしら? フルーツの盛り合わせよ!」


「ええーーっ!」


おいっ! トントンって包丁の音かよ!!

どうかしら、じゃねえーよ!


遅れて姿を見せるローゼンダーク。

また、キュレリアに毒舌を浴びせる予感しかしないが、むしろそうして欲しい気持ちでいっぱいだ。


「ふふ、こちらはお刺身の花盛りよ」


お前もかよっ!!

ローゼンダークの皿には、バラの花びらの様に美しく刺身が盛られていた……


マジかよ、料理してやるってそのまんまじゃん!


「こ、これはローゼンダークの方がポイントが高いようだな! タケルっ!」


何度も言うがポイント勝負じゃ無いからな、リンカ!


「かはっ、私の負けな……のか!?」


キュレリアは、しなっと床に座り込む。


「キュレリアーーーーっ! これは料理勝負じゃ無いんだぞっ!」


俺の叫びにハッと我に返るキュレリア。


「そうでした。私としたことが……くっ、ふぁああああああぁっ!」


我に返ったものの逆にようすがおかしいよ!!

どうにも恍惚の表情を浮かべて震えるキュレリアの姿がまともではない。


「キュレリアは、この戦いで結果を出せばタケル様に褒めてもらえる。良くやったと頭を撫でてもらって、それから……ああぁーーっ、なんて事を考えて身悶えをしている、お兄さま」


ちょっ、いつからそんなに具体的に人の心が読めるようになったんだ! アリサっ!



「隙だらけね……」



ローゼンダークの声が響き、キュレリアの服のキクラゲ(フリル)がズタズタに斬り裂かれていく。スカートももはや超ミニ、足もあらわとなり、目のやり場に困るんだが。


「タケル、私達もズタズタに……」


リンカの声に振り返るとメルとアリサのスカートも短く切り裂かれていた。


「…………そうか、それは困ったな……」


棒読みで答える、俺。


完全に自分達でやったに違いないのだが、いちいち面倒くさい。お陰で俺の目のやり場は完全に閉ざされ、魔王と目線を合わせるしかなくなったじゃん!


「タケル、よくもかわいい孫の服を!!」


「いや、俺じゃねえーーーーよ! 魔王様、アンタ見てたじゃん!」



キュレリアは、防戦一方になりながらも致命傷は避けているのか動きに衰えは見えない。

初戦に続きまたも物理攻撃中心の魔族の攻撃となり、魔法での撃ち合いを想定していた俺の考えは覆された。


ローゼンダークの武器は、短めの双剣で速さで間合いを一気に詰める自信があるのだと、うかがえる。


キュレリアもまた同様の武器を携えて攻撃を防いでいた。


「もう何なのよ! 鬱陶しい! こうなったらタケル様の為にと思っていたんだけど……」


ピシッ!


キュレリアの一振りは、ローゼンダークとの間合いを一気にひろげた。


「ど、どうして!? 隙は与えなかったはずなのに? 何故だかアイツのスピードが上がっている!」


ローゼンダークは、ポーカーフェイスを崩し、身に付けたワンピースの胸元をぎゅっと握る。


「そ、そうか身軽な胸のせいか……」


「ち、ち、ちがうわよ! ふざけた事言ってんじゃないわよ!」


慌てて反論するキュレリアだがその右手にはバラの蔓を模したイバラのムチが握られていた。


タケル様の為にって……ムチで俺をどうするつもりだったのか、小一時間問い詰めたいっ。


「ローゼンダークだったかしら? 私の速度が上がったのはあなたのおかげよ。この衣装は動きにくくてしょうがなかったから」


ツッコミ所はあるものの、要は足が解放された為にキュレリアが動きやすくなったって事か!?


「くっ、この腐れゴスロリ! なんて腹立たしいのかしら」


「無駄口を叩く暇はないわよ」


まるで生き物のように鞭を振るうキュレリアの反撃が、いよいよ始まったのだ。






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