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第122話 「タケルの苦難」

もうあまり時間が無い、確実に真魔王と名乗るまがい物は、着実にその体制を整えていたのだ。


「シュベルトは、エルフ族が作る優秀な武器や武具が反勢力の手に渡らないようにしたのかもしれない。お兄さま」


アリサは、視点を変えた考え方のできるやつだ。

しかし面と向かって話しているのに特にお兄さまとつける必要はないと思ったのだがそこは敢えてスルーする。


「だとしたら、シュベルトは、魔族以外とも事を構えるつもりなのか?」


「お兄さま、私の考えだとお兄さまの現在所属しているような王国軍、つまり隊長格のお兄さまのような実力者もしくはお兄さまが持っている勇者の証を持つお兄さま勇者を敵対勢力として想定しているのではないかと思っている、お兄さま」


すごいよ、お兄さま推し!!

どんだけお兄さまなんだよ! いらないよね、最後のお兄さまとか!


「なるほど、それでお兄さまとしては、どうすればいいと思う、アリサ?」


「ププっ、自分の事を『お兄さま』って何だか滑稽な感じがする、お兄さま」


お前が何回も言ったんだろうがーーーーっ!!!

全く俺のパーティにはまともに話の出来る奴がいないのだろうか。


ちなみにリンカとメルにも一応、一ミリ程の期待を込めて意見を聞いてみたのだが、あの二人の結論は、エルフの森を焼き尽くすだった……


「丸焼きだよ、タケルっ!」


物騒だろ! メル!


それこそ何百年も生きるエルフの恨みを買いそうな予感しかしない。第一にメルのおばあさん、ハーフエルフのミレシアさんがおこになるだろう。


「取り敢えずエルフの森の事は、後で考えるとして、まずは魔王軍との対決のメンバーを急いで決めないとな」


メンバーは、志願した兵士の中から選ばれるのだが、おおよそのリストアップは、終わっているのだろうか?


俺は、状況を確認する為にバルセイムの国王カヌレルの元へ向かう事にした。


城の謁見の間への途中に耳障りなハミングが聞こえてくる。グライドに違いないのだが心なしかバラードの様な物悲しいメロディーだ。


ふん、ふふーっ、ふふふふーっ、ふんふーーーっ


「よう、グライド、どうしたんだ? タマゴ饅頭を鼻に詰まらせた様な冴えない鼻歌だぜ」


「いや、タケル! 大変な事になったんだ! てか、ねーだろ鼻に饅頭詰まる可能性は!」


タマゴ饅頭は、こんぺいとうを大きくしたような形のこの世界の饅頭でお祝い事には欠かせない。


「なんだよ、大変な事って?」


「そうだよ、ヒ、ヒナが、ヒナが……かえったんだよ」


「鼻の中のタマゴ饅頭でヒナが孵ったのか!?」


「ちげーよ、そうじゃねえっ! ヒナが帰ったんだよ! 鼻で饅頭温めてねえし!」


面倒だからグライドには、黙っていたが、既にヒナは、ワイバーンのガブちゃんと共に魔王城に向かっていた。ちゃんと見送ったしな。おおよそクラッカルにでも聞いたんだろうな。


「ああ〜っ、もうどうしたらいいんだ!」


グライドは、お菓子を買ってもらえなかった子供のように床をゴロゴロ転げ回った。一応バルセイム王国軍の副隊長なんだが……


「副隊長殿、それは新しいトレーニングでありますか!?」


言わずと知れたホサマンネンさんだ。いつもと違い鎧も付けず普段着でいるのは珍しい。背中に何やら大きな袋を背負っている。


「魔王軍との決闘、ホサマンネンさんも立候補したんですよね」


俺の問い掛けに少し戸惑った様子のホサマンネンさん。何か様子がおかしいのだ。


「はあ、それがその……実は、自分は今回の戦いを降りようかと思っておりまして……こうして家財道具をまとめて来たんです……」


まさかの返答に驚いた俺は、その理由を聞かない訳にはいかなかった。この国で、いや、俺の知る中で最もバイタリティのある男、ホサマンネンさんが、リタイアするなんて事は考えられなかったのだ。


「ど、どうしてなんですか!? 」


「ははっ、自分など魔王軍に簡単に負けて醜態を晒すだけです。それに敵は魔族です。無事に帰れる保証もありません」


いや、今まで醜態を晒さなかった事の方が少ない気がするが……


それでも初めて見るホサマンネンさんのショボくれた顔は、無理に戦いに駆り出すことをためらわせた。


「ホサマンネン、戦わないのは勝手だが、このまま指をくわえて見ているだけならこのバルセイムだけじゃなく、人間は、滅ぼされてしまうだけだからな!」


黙って聞いていたリンカは、極論を突きつけた。でもなんで上からなんだよ!


「はっ! 私が逃げれば世界が滅んでしまう……のか……」


あんたにそこまで大きな期待をしてないですから!


「そうだ! 吠えろホサバンケン!」


「うおおおおおおおおおおおおーーーーん」


煽りすぎだろ! リンカっ!


動物のような雄叫びをあげて勝手に燃え上がるブレインマッスル。


いいね、したまま俺にウインクするリンカ。

いや、それ頼んでないから!


「ヨシ! そうと決まれば早速、特訓ですな!」


ホサマンネンさんは、背負っていた袋から鎧を取り出し慣れた手つきで装着し出した。


「覚醒装着! ビック・ホサマンネンっ!」


普通に鎧つけただけなんだが……

というか、あんたの家財道具が鎧だけなのが逆にビックリだよ!


「タケル隊長殿、もう大丈夫です! ご心配かけ申した! して、副隊長のこの訓練は、何という名ですかな?」


相変わらずゴロゴロ転がっているグライド。

ああもう、色々心配だらけでならない。


「敢えて名前をつけるならダダッコかな……」


見たまんまだけど……それ以外にしっくりくる言葉が思い当たらない。


「おおっ! ダダッコとは、なんとも己の意志を貫きそうな力強い響き!」


大体あってるが、違うよ、ホサマンネンさん……


そんな俺の心の声などお構い無しに自分も床をゴロゴロと転がるホサマンネンさん。


そして俺の目の前には、二人のだだっ子がゴロゴロ転がり続けるのだった……





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