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第112話 『スパーク ガール』

「魔王城ってなんだか思っていたのと違うのだな。私はもっと闇のオーラを放っているものだと思っていたのだが……」


初めて魔王城を見たリンカが拍子抜けしたかのように門構えを繁々と見ている。


「私ももっと無骨で陰気臭いゴミがうず高く積み上げられた悪臭漂う汚宅を想像していた、お兄様」


リンカは、ともかくアリサの想像は、失礼すぎる、それだとただのゴミ屋敷のイメージでしかない。


しかし、他のメンバーもぽかんとした顔で魔王城を見上げている。今や魔王城は色とりどりの光でライトアップされ、パステルカラーの石畳に塗り替えられていた。おまけに庭園にはキャラめいた造形の樹木が所々に配置されている。

以前、俺とメルが来た時にはここまで残念な事にはなっていなかった……


「魔王ランド……みたいだね……」


小声でつぶやくヒナ。


どう考えてもお前のせいだろ、ヒナ!


以前から魔王城の改装に取り組んでいたヒナは、遂にやらかしてしまったのだ。


「タ、タケルっ、入場料取られないかな?」


「取られんわっ!」


メルが、余計な心配をしイラッとさせる!


門番の巨人らしき魔族が、俺達の侵入に気付いて近づいて来た。というか顔を近づけて来ただけだが……


「顔でかっ! メジカル様よりデカイわ」


キュレリアは、巨人にもメジカル様にも失礼な発言をする。いや、比べるほどデカくないだろ、メジカル様……


「多分、1000メジカルくらいありそうだよ」


何でメジカル様が顔の大きさの単位になってるんだよ、メルっ!


「お前達、ここに何の用事があって来たんだ? ああん!」


巨人は、威嚇するような声と顔で俺達をにらみつけた。


「待ちなさい! 皆は、私の友人です。ここを通しなさい、巨人たん」


まだ巨人たんって呼んでたのかよ! ヒナ!


「はっ、ヒ、ヒナ様。お帰りでしたか!? そしてお客様までお連れとは、流石でございます」


「何っ! お客様だと、巨人たん。丁重にお通ししろ」


門番であるもう一人の巨人が慌てて近づいて来た。もちろん顔だけなんだけど。


「ささ、どうぞこちらで入場券をお求め下さい」


おいっ! いるのかよ! 入場券っ!


「初めてのお客様ですし、ヒナ様のお連れの方でしたら、ええと、3割引き、あっ30% オフにさせて頂きます。エヘヘ」


無言で見つめる俺を気まずそうに下を向いて視線を逸らすヒナ……。

どうも商売の匂いしかしない。30%って大きい数字に言い直したのがとてつもなく胡散臭い。


「タケル、払いましょう。今日は交渉に来たのだから魔族の流儀に合わせましょう。しかも3割引を30%引きにしてもらったのですよ」


クラッカルの言葉にバルセイム城の財政状況が不安になる。


「ひとり1000ウェンなので700ウェンとなりますが年間フリー券だと1万ウェンでお得ですよ」


グイグイくるな魔王城、来ねえだろ年間通して!


「マジで! どうするタケル!? 年間だって……あたしは50ウェンしか持ってないよ」


メル……そもそも、入れないよ、お前……


「待って! 皆さんの分は、私が払います!」


突然の声に皆の視線がレイザービームのように集まった。


「ド、ドルフィーナさん!」


突然、現れたのは漆黒の蝶の翼を広げたドルフィーナさんだった。


「こんばんは、タケルさん。ここは私に任せてください。それくらいのお金なら……」


ドルフィーナさんが懐から取り出したのはブタの形をした貯金箱だった……


ええーっ、それコツコツ貯めた感がハンパないんですけど!


ドルフィーナさんは、貯金箱を振り上げると一気に……


「ドルちゃん、やめてえーーーーっ!」


ヒナが目を潤ませて叫んだ。だが既に貯金箱は、ドルフィーナさんの手を離れ地面へと吸い込まれていく。


パリーン!


目を閉じ顔を伏せるヒナ! 自らが犯した罪の重さをあらためて痛感しているようだ。


「ボリッ、ボリッ、美味しいよコレ!」


メルが、オヤツのアレスサブレを食べていた。

パリーンってその音かよ!!


「紛らわしいだろっ! メルっ」


俺は、両手でメルの頭をグリグリした。


「いたたたたたっ! あたしはお腹が空いたんだよ……」


ちょっと待て! じ、じゃあ、貯金箱は、どうなった!?


「ふふっ、どうですか? タケル様」


声の主の方へ振り返ると今にもはち切れそうな胸のキュレリアがいた。幼児体型の彼女の胸が急に腫れ上がるなんてことがあるわけない。


「………………おかしいだろっ」


キュレリアは、俺に向かってグイグイと胸を近付ける。何をどうしたいんだよ!


「ちょっとイタズラが過ぎるようね、お嬢さん」


いつの間にかドルフィーナさんが、キュレリアの前に降り立っていた。


「誰なのあなた? どうやら魔族のようだけど、萌え兵の私に何か文句でもあるのかしら」


「萌え兵? 随分変わった名前ね。あなたがそのまな板の懐に入れた貯金箱、それは必要な物なの。黙って返しなさい」


「ま、ままままま、まな板ですって!? しかもタケル様の前で!! この貧乏魔族がっ!!」


「ふふっ、その貧乏魔族のお金をくすねようとしたのは一体どこのまな板なのかしら」


「はううううっ、ま、また、まな板って……」


流石に容易くキュレリアをあしらったドルフィーナさん。だがプライドを傷つけられたキュレリアがこのまま黙って引き下がるわけがない。


二人の間に目に見えぬ火花が飛び散りまさに一触即発の様相を見せていた。


そんな事をしてる場合じゃ無いんだけどなぁ……




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