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第103話 『オーバーザトップ』

突然俺達の前に現れたホサマンネンさんは、ちっとも状況が飲み込めておらず、穏やかに話を続ける。


「いやあ、お礼なんていりませんから! バルセイム王国を守る大事なお役目をされている皆さんにお弁当を届けるくらい当然の……」


案の定、ホサマンネンさんはニャルロッテに腕を掴まれ後ろ手で締め上げられた。


その衝撃で手に持っていたお弁当は、床を転がった。


「ああっ! お弁当がっ!」


「メル! お弁当の心配してる場合じゃないから」


かわいい少女の姿をしていても魔王候補生だけのことはある、ニャルロッテは、怪力であるはずのホサマンネンさんの腕を更に捻じ上げた。


「ぐああああああっ!」


ホサマンネンさんの顔が苦痛に歪む……



「お弁当がーーーーーーっ!」



そっちかよ!!

アンタもお弁当の心配いいから!


膝をついたホサマンネンさんは、ニャルロッテに後ろ手に腕を掴まれている。魔法攻撃をすればどうしても先にホサマンネンさんにクリーンヒットしてしまうだろう。


どうする?



「アリサ、召喚獣出せるか雷のやつ」


俺の呼びかけにアリサが即座に答えた。

召喚獣ならば物理攻撃も可能だ!


「ライハルトゲルマターク、アダ名はライちゃん」


やれやれ雷のやつでは、気に入らないのだね、アリサさんは……



「よし、ライちゃんを召喚してくれ!」


俺は、アリサに叫んだ!


「もう呼んでいるお兄様」


はやっ!

アリサの横には金色に輝く巨大な召喚獣がそびえ立っていた。鎧をつけたゴーレムといった印象で巨大ロボット風味が心をくすぐる。



「と、とにかくホサマンネンさんを助け出して欲しいんだ」



「わかったお兄様、サンダーエフェクトっ!!」



アリサは、迷いなく召喚獣の雷魔法を放った!

ゴーレム呼んだ意味ないだろっ!



「ぎゃあああああっ!」


ドーム状に拡がった雷が敵を取り囲むようにバチバチと光を放つ。

当然、雷の魔法は、ホサマンネンさんもろともニャルロッテ達を巻き込んで炸裂したのだった……



「ホサマンネンさーん!」



俺の頭の中には、ホサマンネンさんの厄介な思い出がぐるぐると駆け巡った……



「いや、死ぬかと思いましたよ……」


よろよろと立ち上がったホサマンネンの姿に一瞬アリサが驚きの表情を見せた。


「チッ!」


おい、ホサマンネンさん味方だからな!

アリサ!


ま、まあ結果的には、敵を全滅させたけど……

ニャルロッテを始めキリンや他の候補生達は皆その場に倒れていた。


「ホサマンネンさん、あの魔法を食らって良く生きて……いや、無事でしたね?」



「はは、タケル隊長、実は出てくる時、クラッカル様に防御魔法を掛けてもらっていたのですよ」


なるほどクラッカルならあの雷魔法に耐える防御魔法も可能だよな。だったら


「やはりそうだったんですね。俺達もそうだと思って今の魔法を放ったんですよ」


「いやあ、流石はタケル隊長殿! そこまで読んでおられるとは! では、今のは素晴らしい連携でしたな。して此奴らはいったい何者なんですか?」


どうやらホサマンネンさんには、先ほどの人間であれば即死レベル級の攻撃の件、納得してもらったようだ。安堵に胸をなでおろす俺。


「ああ、実は魔王候補生で魔王軍の幹部クラスの奴らなんですよ」


「なんですと! だったら早くトドメをささなければ!」



ホサマンネンさんは、腰に刺した剣をスラリと抜いてニャルロッテに近づいた。


「くっ! 身体が痺れて動けない……」


どうやらニャルロッテには逃げる力もないようだった。味方ごと攻撃魔法を撃ち込むなど想像もしていなかったに違いない。まったく油断していたのだ。


顔を上げたニャルロッテの鼻先にホサマンネンさんの持つ剣が突き付けられた。



「くっ、サッサと殺しな! どうせ失敗した私たちには生きのびる道はないんだからさ! アンタにはわかんないだろうけど私達はこいつらを殺してトップにならないと意味がないんだよ!」



ニャルロッテは、逆ギレで悪態をついた。



「ふん、ならば覚悟するがいい」



ホサマンネンさんの振り上げた剣は、ニャルロッテの顔に振り下ろされた。



ガギッ!



剣先は地面を捉え金属の火花を散らした。

それは、僅かにニャルロッテの髪先をかすめたに過ぎなかった。


「えっ! ど、どうして……」


ニャルロッテは、トドメをささなかったホサマンネンさんの顔を不思議そうな顔で見つめる。



「俺の知っている男は、どんなに努力しても1番にはなれなかった。プライドを捨てて頑張ってもやはり報われなかった。だがその男は決して諦めてなんかいない。どうしてだかわかるか? その男には信じる道を進む覚悟があるからだ! 今の一撃でお前は死んだ。やり直して自分が本当に進むべき道を探すがいい……」


そう言ってホサマンネンさんは剣をおさめた。


「…………チッ、顔に似合わないんだよ……」


最後に再び悪態をついたニャルロッテは、気が抜けたようにそのまま気絶してしまった。



「タケル隊長、申し訳ありません」


トドメをさせなかった不徳を詫びるホサマンネンさん。


「いえ、俺達の倒すべき敵はこいつらじゃないですから……さあ、帰りましょうか」



「タケルっ、モグ、ちょっとモグモグ、待ってよ」



「ええっ! 弁当食べてたのお前ら!」



あれだけ買い食いしたにも関わらずみんなは弁当を食べていた。


「お弁当サンドイッチだったからセーフみたいだよ。お兄ちゃん」


ヒナも俺に嬉しそうな顔を見せる。



その様子に俺とホサマンネンさんは顔を見合わせて呆れ笑いをするのだった……













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