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未来の足音  作者: 桜 風
奇妙な隣人
9/10

春の味に魅了されて


調べた結果だが。

 

la() confiture(コンフィチュール)

フランス語でジャムという意味だ。

 

店の名前の通りジャムをふんだんにつかったスイーツやオリジナルドリンク、手作りジャムの販売とかもしているいわゆる喫茶店。

 

 

アルバイト募集にはキッチン要員とホール要員を求めるキャッチフレーズがかかれている。

 

すっごいオシャレで女の子が好きそうな店だ。

俺はこんなとこでバイトなど……

 

「そーたくーん!!」

 

でた。低気圧女。

 

「ねーねっみた??コンフィチュールのホームページ!!」

 

「今見てますよ。美味しそうですね」

 

「でっしょー♡1度こんなとこでバイトしてみたかったのよ♡」

 

そーっでか。

俺は微塵も興味ない。

 

「でねでねっちょっとこれ食べてみてよ!」

 

低気圧女(つばさ)がだしてきたのは小さなビンに詰まったピンク色の綺麗なジャム。

 

指ですくって口に運ぶ。

 

舌に乗せた瞬間

ふわりと広がる春の香り。

甘すぎず、爽やか。

喉を通ると日本を思わせる後味と香に気づく。

 


 

「桜か。」

 

「よくわかったねー!」

 

春だし

見た目も可愛らしく味も後引く美味しさ。

こんなものまで作るのか…。

 

最近の喫茶店はすごいな…。

 

 

「こんな美味しいジャムがほぼ食べ放題!!ねねっどうどう?働いてみない??」

 

 

いや

食べ放題ではないだろう。

 

でも

興味はある。

 

どんな風に作るかだけでも知りたい…。

 

「…面接うけてみっか…」

 

「ほんと?!やった!」

 

「なんでそんな喜んでんですか。」

 

「えー?だってさ知り合いといた方が楽しいじゃん!」

 

俺はそんなことない。

 

「じゃちゃんと電話するんだよ??」

 

「わかってますよ…てか。ナチュラルに俺の部屋くんのやめてもらっていいですかね。」

 

「いやぁピアノ借りに来たつもりがねぇなんか調べものしてるからさっ」

 

こいつ……。

いつのまに……。

 

「きょーはやっぱクラ吹くわっおじゃましまっしたー」

 

相変わらず台風のようなやつだ。

 

桜のジャムおいてっちゃってるし。

どれだけアホなんだよ…。

 


桜のジャムを見つめながら

隣の部屋から聞こえる音と

春の風に吹かれ、

 

少しだけ心のなかで舞い上がる俺。

それは

 

未来に手を伸ばし始めたからだと

自覚するのはもっと大人になってからだった。

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